示せ、導きの歌とともに⑦
今日は探索パート…ですが最後の最後で回想パートに入ります
迷い込んだ洞窟から移動して現在の村に到着し
放置されていた呪いを受けたとみられる竜の死体が動き出し
一度逃げたものの何やら交渉可能ということで今ファルが
話をしている。
今のところファルが聞き出した何かの情報はこんな感じになっている。
Q、あなたは誰ですか?
水竜のルーグライス・マーメディア・ヒレイブンである。
Q、ここへは何しに来ていたのですか?
戦争を終わらせるために[古めかしい蔑称]を皆殺しにしに来た
そもそも奴らと結ばされた協定が…
(ここから先は相手を口汚く罵る言葉のみだったため割愛)
Q、協定とは?
遠い昔にご先祖様が[蔑称]と結んだ実質的な休戦協定であり
双方の強さを認めたが故のもの、特定時期にしか戦えぬような
形であり[蔑称]どもはそれを利用して罠を張り巡らせるなど
狡猾な手を…(ここからは相手を罵りつつ竜の能力自慢を始めたため割愛)
Q、なんで争ってるの?
[蔑称]らが我らの宝を盗んだからだ。
同じような主張を奴らもしているが
[蔑称]らが先に返さなければ我らも返さぬ…
我らは見たことはないが、歌だったか詩だったかが納められた
1000年以上は安全に保存される箱だかなんだからしいな?
…いや、本当にやばい話しか出てこないのでファルが意図的に
必要な部分だけ切り出しただけでもこれなのである。
あの時出てきたナニカと同様の存在であると確信できるものの
あまりにもコンジキさんたちを貶すのでファルの表情がひどいくらいに
うんざりしてきている。
「はい…はい…あ、わかりました…ちょっと調べてみますので
しばらく待っていただけると…はい」
どうやら一旦終わったようで、ファルがこちらの方へ戻ってくる。
もう話したくなさそうにうんざりした顔をしているが
とりあえず大体の話は聞き終わったようで、
ナニカは疲れたのか眠り出した。
「えーっとですね、とりあえず結晶は触ってもいいけど
先にこちらのお願いを聞いてほしいとのことで」
「…こちらのお願い?」
なんだろうか、と思いながらも
私は次のファルの一言に耳を傾ける。
「死んでるのは理解したし、仇敵が消え去るほどに
時がたったことは理解したらしいです」
「うん」
あんな傲慢な態度だったのに物分かりがいいなと思ったけど
そこを気にしていたら永遠に話が進まないのでそのまま話の続きを待つ。
「でもあいつらが盗んだものは取り返したいから
探してくれないか、だそうです」
◆◆◆◆◆◆◆
「見つからないねぇ」
「そうですねぇ…ヒルデさんも何か感じませんか?」
「むぅ…何も感じない。そもそも持ち逃げされてたら
こっちからじゃ何にもわからないんじゃない?」
ヒルデさんがそんなことを言い出すが
確かに可能性としては考慮できるかもしれないと思い
見つからないのでは、という一抹の不安が頭をよぎる。
「…コンジキさんたちの誰かが生き残ってて
それだけ持ち逃げしてるってことですか?」
「そうなったら探しても無駄じゃないかな、
ある前提で探したほうがいいんじゃない…?」
一抹の希望を消さないようにそう思う事で気力を保とうとする。
感覚的には一週間ちょっとこの場所で暮らしているのだ、
2か月というタイムリミットがあるとはいえ
一般人にいつもと違う状況で一週間過ごした疲労は大きく
精神的に非常にまいってきている。
そもそも箱を探せと言っても
こんな遮蔽物のない場所からどこを探せばいいのか。
過去の記録を見たときのことも思い出して精一杯探しているが
二時間かかって現状何も見つかっていないのが現状である。
「今のところ探したのは村の入り口、コンジキさんの家のあった場所に
祭りのメイン会場、村の集会場…」
「村長さんの家とかは見てないんですか?」
「これから行こうか、でもあそこで見つからなかったら
もう一回ある場所考えてみようか…」
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それから三十分後。
村長の家の跡で竜の宝物を探していると
ファルが何かを見つけたようで箱を上に掲げる。
「これっぽくないですか!?」
「それっぽいね、これを持っていこう…でもこれ本物かな」
ヒルデさんがそう言うと私も不安になるのでやめてほしいものだ。
「…本物との見分け方も教わってたんじゃなかったっけ」
「そうですね…えーと、たしか横のつまみが。あ、ありますね!
これを右に二回、左に二回に押し込んでっと」
ファルがナニカから教わっていた箱の見分け方、
もとい開錠方法を試すとどうやら開けることに成功したようで
箱が空いた音があたりに響く。
「やった!開きました、本物っぽいです!」
「やったぁぁぁぁぁ!!中身は?中身は!?」
大分疲れていたので大声で喜びを表現して
大事な中身を確認する。すると中には紙…
というよりかは数枚の便箋のようなものと、
加えてヒルデさんが使っていたものと
同様の二つの結晶が入っていた。
「本物みたいだ…早く持っていこう」
ようやく話が聞ける…そう思ったが。
その前に中身を見た方がいいのではないだろうか?
そう思い、私は箱の中身に触れようと手を伸ばす。
「…え、ご主人様?」
一つ目に触れた私は、まばゆい光を浴びるとともに
記録の世界に飛び立つのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
さて、誰かがこれを見ているという事は
なんやかんや私と彼女の仲間たちの因縁が笑い話に終わったと
考えられるだろう。
なにせ何もかもが終わるまで開けるなと厳命した箱の中身だ、
私が積み上げた偉業を鑑みて終わっていなければ
箱を誰も開けるわけがない。
私や彼女があれだけ自分勝手に行動したのもあって
改善したかもしれないし、もしかしたら両者共倒れで
誰かのもとにわたり、何も知らない誰かの手に渡っているかもしれない。
…まぁ、とりあえず。
そんな前置きは置いておいて、この記録は因縁なんて関係ない
本当に笑い話程度の話であるからこの魔法に抵抗して話をぶつ切りに
するなんてことはせず聞いていってほしい。
…どうやら、聞いて行ってくれるという事だろうか?
よし、聞いてくれ。もう片方は彼女の記録だが
彼女はかたくなに記録を見せてくれなかった。
非常に悲しい…いや本当にだいぶ悲しいがしかたない。
という事で聞いていってほしい。
村のみんなにも話せず、話す相手もいなかったが故に
溜め込まれた僕の全力全開惚気という奴を…!!
◆◆◆◆◆◆◆
…その話を聞いていることしかできない私はこう思った。
この男…初恋カップルってやつか…!?
こんなに頑張って探していたものが全力の惚気だと思うと
引き締めていた気が完全に霧散し、呆れ顔で話を聞き始めるのだった。
箱
大分古めかしい外見ではあるものの
魔術で中身を完全に保全する高性能な箱。
次回、惚気という名の結晶回想回です
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