お酒と薬は用法容量を守って。
タイトル通りです、
なんかラブコメ…っぽい何かがあります。
その出来事はご飯を食べ終わり、お風呂にも入って
みんなゆったりとリビングでくつろいでいる時間に起こった。
「あら?これって、お酒かしら」
「あぁそれは確か…
引っ越し祝いでもらったちょっとお高いお酒ですね。
値段もいい感じなのに相当良いものらしいです」
ポトリーさんが手に取ったお酒は
藤川さんから引っ越ししたと言った時に
引っ越し祝いでもらったものだ。
ただ、ちょっと度数が強いようで姉は飲んでいないし
私も未成年なので飲んではいない。
しかし私が成人したら姉と一度飲んでみたいなという
私の希望でキッチンのわかりやすい場所に置きつつも放置されており
それをポトリーさんが見つけたのだ。
「おいしいのね、ふーん…ちょっとだけ飲んでみていいかしら」
「私は大丈夫です、姉さんもいいよね?」
「大丈夫、私あんまり飲めないし」
「姉さんからの許可も得たのでどうぞ。
でも貰った人曰く大分強いお酒らしいので
水割りとか控えめにした方がいいらしいです」
「そうなの?…そんなにお酒飲んだことないし、
そうさせてもらうわね」
グラスを借りてお酒をちょっとだけ注ぎ、
水を注いで割って一口だけ飲むポトリーさん。
「ここ数年お酒飲む機会がなかったのよねー。
クソジジイの借金返済のために嗜好品に手出す暇なかったし…
買ったとしても化粧と服とかくらいね、商談には必要だし」
そうぼやくポトリーさんにふーさんが聞く。
「あ、そういえば借金返済できたのって
色々頑張ったからだそうですけど、どんなことしてたんですか?」
「んーとねぇ…まず電子機器関連は無理だし
生活必需品とかちょっとした便利グッズ売ってる会社に就職して
基本的な資金を集めてぇ…そこから商品開発に携わって…
で、便利グッズ専門の子会社作ることになったときに
部長になって…特許取ったりいろいろして返済してたわぁ」
「へぇ…!凄いですね、今は何の仕事してらっしゃるんですか?」
「今はもうねぇ…借金もないしぃ、特許でお金はあるし…
彼氏も旦那もいるわけじゃないし遊んで暮らそうかなってぇ…
そう思ってるわぁ」
「…大丈夫ですか?舌が回ってないように見えますが…」
一口目を口にしてからまだ二分も経っていないはずだが
ポトリーさんの目はとろんとしており、話し方もなんだか
舌が回りきっていないような印象を覚える。
「あっはっは、面白いわねぇ。大丈夫大丈夫
ビールのんでも…のんだことあったっけ?」
「え、永華。本当に飲ませて大丈夫だったのかな…?」
「…そういえばどのくらいお酒飲めるのか聞いたことなかった?
飲みたいって言ってたから飲めるのかなって思ってたけど…」
「い、いや、きっと大丈夫ですよ。
昔友達と飲んだことあるって聞いたことある気がしますし
そこまで弱いわけ…」
私とふーさんとまーさんは各々の感想を述べながらも
大丈夫だと思い込もうとしたが、ポトリーさんの次の一言で
すべてが崩壊した。
「んーとねぇ…前飲んだ時はぁ…前飲んだ時はぁ…
ともだちににどとのむなっていわれた!」
「「「まずいじゃん!!!??」」」
「でもねー、しゃっきんするまえねぇー
ひとりでのんでもつぐにょひらいじょーぶだったんらもろ。
そろときのきほくないれろれー?」
だめだ、完全に酔いが回っている…
ここまでお酒に弱いとは思いもしなかった。
どうしようと思いつつ水を汲んで来ようと移動しようとした直後に
後ろからポトリーさんに抱き着かれる。
「うみゃ、な、どうしたんですかポトリーさん?」
「むふー、ひぃにおいれー」
急に抱き着かれ、びっくりした私は体勢を崩してしまう。
「あ、ポトリーさん!ちょっとお水飲みましょうお水!」
「んぁ?おろろのひとぉ?キャー!!」
「いやちが、いやそうですけど!
奥間ですよ、お酒のみ―――」
「ぷしゅー!」
いきなりまーさんを不審者だと勘違いしたのか、
ポケットから携帯用のスプレーを取り出してまーさんの顔に吹きかけ
眠らせる。
「まーさん!?」
「ふー、あふららっらわえさんりんろも。
…あるるらっへひりゃっれわれ、ぬいりゃお」
そう言ってスプレーを放り投げてパジャマを脱ぎだし、
下着姿になりだすポトリーさんを私とふーさんは全力で止める。
「ダメですポトリ―さん…!!」
「男の子もいるんだからだめですよ…!」
「むー!あるいろにー!」
そう言って駄々をこねだすポトリーさん。
不機嫌な顔をしていたが唐突に何か思いついた顔をして
私と福音のパジャマををつかみまくり上げる。
「ごへんねー、みんらあまんひれたんらよれー?」
「ぎゃー!!」
「ねねえね姉さん!スプレー!ポトリーさんに吹いてお願い!!」
「わ、わかった!」
「むぅぅぅぅ…!みんらぁらんれぇ…!?」
◆◆◆◆◆◆◆
なんとかスプレーを使ってポトリーさんを眠らせた後、
一度目覚めさせた後手を尽くして酔いを抑える薬を飲ませて
布団にかつぎこみ再び眠らせた。
「おーさん、大丈夫…?」
「大丈夫です…スプレーの効果でまだまだ眠いですが
夜更かししてる中の眠気くらいで済んでます」
そう答えるまーさんはうつらうつらしながら
眠気も限界そうだ…よし。
「…まぁそろそろいい感じの時間だし寝てもいいと思う。
お布団用意するから待っててね、まーさん」
「あ、それなら大丈夫だよー。ポトリーさんのと一緒に
みんなのも敷いちゃったからもう寝ちゃおうか?
私はちょっと絵本書いてから寝ようと思うから
もうちょっと起きてるけど」
そう言ってそのまま姉は作業部屋へ向かってしまった。
渡りに船とはこのことだろう、
姉が布団を敷いてくれていたことに
感謝の心と愛が溢れ出して来る。
「そうしよっか…おーさん、えーさん。おやすみー」
「おやすみふーさん。さて、わたしたちも…ふぇ?」
ふーさんが布団の敷いてある部屋にむかい、まーさんの
手を引いて向かおうとするが。
だらりと私の手をつかむ力が抜け、
振りむいた私の体にまーさんの体が倒れこんでくる。
「あぇ、だ、大丈夫まーさん!?」
「………すぅ」
まーさんの眠気は思ったより大きかったようで
どうやら寝てしまったようだ。
しかし、倒れこむのが私の体の上でよかった、
床は冷たいし固いのでぶつけていたら相当痛かっただろうし…
その結果意図せず膝枕のような形になっており
少しはずかしさを感じながらも、すぐに移動させてあげようと
頭を持ち上げて移動させようと思ったが。
「むぐっ…ね、寝返り…?」
持ち上げた瞬間にまーさんが寝返りを打ち
持っていた手ごと体が回転した結果、
私のお腹を枕にする形に悪化した。
「早く抜けて運ばなきゃ…」
早く布団で眠らせてあげようと
ゆっくりお腹をずらしていき、頭を打つことなく
地面につけることに成功する。
「よし、ここから持ち上げて…」
まーさんは男子にしては華奢な体をしているので
私でも簡単に持ち上げることができ、
部屋までお姫様抱っこで運んでいこうと立ち上がり
一歩、二歩と部屋に向かっていく。
「んゆ…?」
「ひゃっ…!?」
動いた衝撃でちょっと目が覚めたのか
手を動かして起き上がろうとして私の胸を触る。
だがすぐに意識を失ったようで手から力が抜けだらんと下に落ちる。
…ま、まあ仕方ないだろう、寝ぼけているようだし。
速足で部屋に向かい、頑張ってドアを開いて
敷いた布団にふーさんを寝かせて布団をかけ
その場を離れようと振り返って立ち上がろうとすると、
肩をつかまれてまーさんに抱き寄せられる。
「え…」
肩をつかまれるとは思っていなかった私は
まーさんに背を向ける形で倒れ、抱き枕のように抱き着かれる。
華奢な体からは想像できないほど力強く抱き着かれており、
容易に振りほどけない上、腕の上から抱き着かれているため
自由に動くことが出来なくなってしまった。
かろうじて足は動かせるが、ばたばたと音がするだけで
抜け出す助けには一切ならない。
「すぅ…」
「ふぃっ…!?」
どう脱出しようかと考えている中で、首筋に寝息がかかり、
くすぐったさから思わず変な声が出てしまった。
というかさっきから変な声しか出していないなと思いつつも
起きているであろう福音の存在を思い出し助けを求める。
「(ふーさん!助けてー!!)」
「ん…?すぴー、すぴー、zzz…」
「んう…、すぅ…すぅ…」
「ひぇぁ!みゅっ…みぃぃぃ!?」
ぐっすりと眠りについて寝息が一定のリズムで
首筋に吹き付けられはじめてくすぐったさから
声を出すと同時に少し力が弱まり、片手だけ抜け出すことに成功する。
だが片手だけであり、寝ているにもかかわらず
力強く抱き着かれているため完全に脱出することはできないが
首筋を口元から離して寝息を回避することができた。
「むぅ…」
「え、あちょっとひゃっ…!?」
しかし、不機嫌な感じの声が聞こえたと思ったら
さらに力を入れてしっかりと抱きつかれてしまう。
しかも手の位置が変わり、ちょっと上の方に行った結果
私の胸を鷲掴みにしている形になってしまっている。
それに加えて…
「すぅ…すぅ…すぅ…」
「ひっ!ぃうっ、ひゅぅぅ!?」
再び首元に寝息がかかる形になり妙な声が出てしまう。
くぅぅ…ふーさん呑気に寝ちゃって…!
疲れた頭とくすぐったさに胸を鷲掴みにされている恥ずかしさ、
寝てしまったふーさんに対する見当違いの憤りがが
頂点に達した私は起こさないように、という配慮をかなぐり捨てて
足の指でまーさんのふとももをつねり、痛みで力が弱まったところを
脱出する。
「ふー…ふー…」
災難だった…抜け出して少し乱れた服を直して
部屋を出て自分の部屋に向かう。
「…まーさんのえっち」
明日の朝、起きたら少しまーさんに意地悪してやろう。
そのくらい許されるのではないだろうか?
少し赤くなった私の頬を首筋に寝息をかけられて
くすぐったからだと理由をつけて、私は自分の部屋の戸を閉めるのだった。
ふーさん(寝たふり)
「抱け―っ!抱け―っ!(まーさんが寝ていることに気づいていない)
翌朝理由も言わずまーさんに向けてヘンタイとささやく
永華の姿があったとかなかったとか。
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