プレゼントフォー・ユー
予告通り幼馴染回です。
体調は安定してきました、
なんとか連続投稿続けられそうです。
クリスマスまであと二日。僕、金田奥間は学校帰りに
幼馴染の福音と一緒に近所の小物屋さんを訪れている。
「このちっちゃい猫の置物とかいいんじゃない?」
「そうなのかなぁ…僕はこっちの
マグカップがいい気がするんだけど」
「あーそれはやめといたほうがいいと思う」
「その心は」
「多分既に永華が来てお姉さんと自分用に買ってる、
ここ自体永華のお気に入りのお店だし」
クリスマスには永華のお姉さんの家でパーティを開き
その中でプレゼント交換をする予定で、既に二つほど
店を回っているのだが…なかなかいいものもがない。
福音とお姉さんへのプレゼントはしっかり決まったのだが…
永華の分のプレゼントに長々と悩んでしまっている。
「それを送るくらいならこっちのほうがいい気がするなぁ~?」
「え、何それ?」
「…私もわかんない、咄嗟に隣の奴と間違えて
手に取ったけど何だろうこれ」
福音が手に持っているのは何やら妙なトーテムポールのような、
それでいて近代的な加工がされている前衛的な芸術作品と思えるような
意味の分からない物体が握られていた。
「あーそれはね、なんか店長が仕入れに行ったときに
おまけでもらったものらしいよ。幸運を呼ぶだかなんだかーって
二か月前に妙な宗教にはまったらしいお得意さんにもらったらくて」
何度か顔を合わせて顔見知り程度には仲を深めた店員さんが教えてくれる。
「え、大丈夫なんですかそれ」
「いやー、それがさー。店長その辺の道になんでか詳しくてね?
その宗教団体について詳しく調べ上げて別に問題ないって判断したけど
その人の奥さんが大層ご立腹だったらしくて。
旦那さんが妙なもんに金使ったーって怒った結果
その人はその宗教信仰するのやめちゃったらしいよ」
「はえー、こんな妙なのが神様なの?」
「いんや、なんだか風水関連の派生だかなんだかで
それを家の特定個所に置いとけば厄を払えるだかなんだか。
値段もなんか数百円らしいから店長、最初はマルチ商法を疑ったらしいよ」
「店員さんやっぱ詳しいねぇ」
「はっはっは、店長の話が面白くなけりゃ
俺はこんな店でバイトしてねぇわ!」
「こんな店で悪かったなぁ?」
そんな話をしていると店のバックスペースから店長さんが出てくる。
新規の仕入れ先を探しに積極的に外で活動しているためか、
なかなかいい体をしている御年62歳のナイスガイである。
「いいや、こんな面白えとこ他にないでしょう店長!
俺はそれが気に入ってここでバイトしてんですよ?」
「お前はいつも勢いでごまかそうとするな…まあ世辞だとしても
ありがたく受け取っとくよ。…お、そうだ。そろそろ
二丁目の原田さんとの約束の時間だな、店番頼んだぜ!!」
「店長!梱包用の箱忘れないでくださいよー!」
「あ!すまねえ、失敬失敬。あんがとよ!」
そう言って店員さんから箱を受け取り、
二丁目の原田さんのもとへ向かい外出していった。
「いつも元気ですねぇ」
「本当本当。元気すぎてやばいねー」
「この前の町内マラソンでも2位だったらしいねぇ…
とんでもないよ店長のバイタリティ」
「え、逆に誰が一位とったの?
ここ数年トップ独走だったんじゃなかったっけ」
ここ数年負けなしだった店長さんの記録を破った人間がいるというのは
とてつもない偉業だ。なんせ店長さんに勝利するために
毎年のように徒党が組まれ、それを象牙にもかけない店長さんが
走りきるといった展開がここ数年マラソン大会の定番だったためだ。
「永華ちゃんのお兄さんだよ、ここ数年は予定が合わなくて
参加できなかったらしいけど今年は何とかなって
数年前の雪辱を晴らしたとか」
「あのハイスぺシスコンお兄さんがかぁ」
そんなこんなで時間は過ぎていき、
あれでもないこれでもないと店員さんと福音と一緒に悩みに悩み
ついに答えに到達する。
「うんうん、それなら問題ないんじゃないかな」
「少年もいいセンスしてるねぇ」
「まぁ、気に入ってくれるかはわかりませんがね…」
永華の好みの範疇ではあるだろうが
本人に聞いていない以上わからないし、喜んでもらえるといいな。
そう思いながら選んだプレゼントを購入して梱包してもらい、
店を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆
「さーて、頑張れよー少年」
手を振って両手に抱えるほどではないものの、
片手で抱えるには少し重いプレゼントを持って
少年…金田くんだったかな?と幼馴染の福音さんは
帰路に就くのを見守る。
「いやー、にしても真剣に悩んでたねぇ。
さてはて誰に送るのやら…あ、それは聞いてたんだったな」
確かもう一人の幼馴染に送るものだったか。
あれだけ熱意をもって選ぶということは想い人だろうか?
まぁそんな大事なものをここで選んでくれるとは有り難いものだな、
そうここで働く一員として思う。
…と、そんな感傷を抱く暇もなく
店内に暑苦しい怒号が響き渡る。
「おい紡希ぃ!あの二人の青春の一ページになれたみてぇな
カッコつけた気持ちわりぃ表情やめて荷物運ぶの手伝え!」
「分かってますよ店長!でも見送るくらい許してくれませんかねぇ!?」
カッコつけてるわけじゃなくリアルでもあんなのあるんだなと
驚きと美しいものを見たという余韻に浸っていただけなのに…
この店長とかいう筋肉ダルマはそれを見てあろうことか罵倒してくるとは
なんと失礼なのか。
「ダメだダメだ!こちとらここまで荷物載せて運転してきて疲れてんだわ、
さして動いてねぇんだから手伝え!」
「その筋肉は飾りかよ!?疲れてるっつっても去年
あんた孫娘追いかけてハーフマラソン走ったのに翌日どころか
その晩に筋トレしてたらしいじゃねえか!!嘘つけ嘘を!」
このジジイのスペックは健常な二十代の大人の10倍ぐらいある説があるので
マジで俺みたいな一般人スペックに比べたら桁外れのはずなのだ、
何度もこの身にそのオーバースペックな肉体から繰り出される
強力な一撃を食らった俺だからわかる。
「はぁー!?お前バイトのくせによく言うじゃねえか!
てめぇいくら華ちゃんの幼馴染だからって調子に乗んじゃねえ、
容赦なくクビにしてやっかんなぁ!?」
「はー!その孫娘の対応に困って助けを求めたのは誰でしたっけねー?
あそこで俺が助けてなければ店長やばかったんじゃないですかぁ~?」
このジジイは孫娘にゲロ甘で、いつもウザ絡みしては
不機嫌になる一歩手前まで絡んでしまい、
つい先日も俺が仲裁したばかりである。
痛いところを突かれたといった表情を浮かべてしばらく黙る
店長だったが、いきなり顔を上げたと思ったら
神妙な顔を浮かべて口を開く。
「…そうだな。いい、わかった全面的に納得してやるからはよ運べ」
「あり?今日はやけに素直ですね」
さらなる舌戦を繰り広げることを想定していたのが
今回はやけに引くのが早い、何かあるのだろうか?
「うっさいわ、ワシもあの二人に青春感じたし
結局お前と同類だと思ったからいいんじゃよ」
「え、店長もそういうところある――――」
まぁ気まぐれでそういうこともあるか、と結論付けようとした次の瞬間。
「はいこれでワシ大人の余裕見せましたー
はい喧嘩続けようとした小僧格下ー」
大人げない耄碌ジジイの罵倒が飛んできた。
一瞬見直したと思ったらこれだ…!
「ジジィてめぇ!!!こっちが納得しそうになった瞬間によぉ!!」
「あー小僧に暴力振るわれる―、
小僧が年寄りに暴力振るおうとしてます怖いー」
畜生、このじじいとは絶対分かり合えない…!
何度目かもわからないそんな思いを心の中でたぎらせるのだった。
空野紡希
ふぃろーさんのリアル。
一応普通に力は強いが比較対象が人外のため
誇ってはいない。クソ超絶鈍感であり、
毎年誘われるクリスマスの一件では
「毎年お金使わせて申し訳ねぇ…」がメインとして
ちょっと日頃の話を聞いてくれない悩みも絡んで
オフ会に参加した。作者は許そう、しかし
華さんが許すかな!!
爺さん
色々あって息子にあとを任せて隠居した。
悠々自適に小物屋を営んでおり、将来の孫娘の結婚相手を
日々しっかりと見定めている。人脈が広く
詐欺や怪しい宗教の類を非常に嫌っており
見つけ次第全力をもって叩き潰しにかかる。
この世界における詐欺
インターネットを利用する詐欺は某社の台頭を機に
完全消滅した。
しかし場の雰囲気や友人関係を利用する
マルチ商法をメインとして根強く生き残っており
根絶しきれてはいない。
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