リーズヴァルトさんの腕試し②
ようやく戻ってくることができました、
今後の更新予定については後書きに載せてあるので
どうぞ久しぶりの更新を楽しんでいただけると幸いです。
駆け出したミソラに向けて地面を操作して槍状の岩…
じゃない、あれは植物の根?のようなものをミソラにむけて
十本以上乱射する。
「よっ、ほっ、〈白虎の加護〉、〈秘志硬拳〉!」
ミソラは避けながらもスキルを発動し、しっかりと
リーズヴァルトさんのもとへ近づいていく。
『先程の小娘よりかはマシのようじゃのう、だが!』
「アヤさん!ミソラの左前、範囲狭めでも固さ重視の
防御魔法だそうです!」
「注文多いですねぇ、ですがまぁ了解しました!
その条件なら…【ピンポイントホワイト】!」
アヤさんが魔法を宣言したと同時に攻撃が殺到するが
左前の方向に真っ白い色付きガラスのような壁が出現し
その壁はリーズヴァルトさんの攻撃を一瞬受けとめ、
受け止めたその隙にファルは回避を間に合わせ、一撃目と同時に
放たれていた二発目には耐えきれず砕け散り
ミソラの元いた場所に攻撃が殺到する。
「うっっっっっわ!殺意たっか、殺す気ですかねぇ!?」
『元よりその程度で死ぬような有象無象ではなかろう?』
「うぎぎぎ…!鼻につくぅ…!」
「お気になさらず、今は集中してください!」
「…もちろんですともアヤさん、
あのトカゲに一泡も二泡も吹かせてやりますよ!!」
静かな怒りを感じさせながらも
一段加速してリーズヴァルトさんの足元まで到達し、
ここで確実に痛手を負わせるといわんばかりに拳を振りかぶる。
「その鎧、欠片も残さずぶっ壊す!〈轟雷裂虎〉!!」
『カカカ、その意気やよし!
しかしはてさてその激情で我が鎧は越えられるかな?』
ミソラの一撃はそのままリーズヴァルトさんの足に当たるものの
鉱鎧を砕ききるには至らず、腕にヒビが入った程度で留まった上で
傷ついていない腕をミソラに向けて叩きつけつつ根で追撃を図る。
「あぐっ、さっきファルにやった奴!でも…それはもう分かってる!」
ミソラは殴った拳を地面に叩きつけて砕き、
根の軌道を四方八方に散らして殴っていないもう片方の手で
自分の体を押し出してこちらに戻ってくる。
『おぉ、片手だけとはいえ鎧が壊れるとは久方ぶりじゃのう!
誇れるぞ?儂の鎧を一部とはいえ砕くとは』
「うぐぐぐやっぱりいったい!!!
ご主人に全力じゃなきゃ効かないとか言っておきながら
全力出してもまだ痛いじゃないですかぁ!!」
『全力ならば効くだけで痛くないとは言っておらんわ、
むしろ硬さで手を痛める程度で済んでおるのは強さの証じゃぞ?』
「うにぃぃぃ!ご主人こいつきらい!きらいです!」
ふーふーと殴った手を庇って息を吹きかけるミソラ。
その間も根からの攻撃は止まず、ミソラだけでなく
私たちの方まで攻撃が飛んでくる。
「…もう我慢できねぇ!行くぜ行くぜ行くぜ!!!」
そんな状況の中、センジョウさんは突然前に出て
リーズヴァルトさんへ向かって突撃を始める。
「片腕破壊チャレンジだぁ!!!〈瞬歩〉、〈見敵必殺〉、
〈岩穿〉!!」
『うぐっ…根の壁を抜けてくるか!貴様も素晴らしいなぁ!』
その一撃は見事ミソラの攻撃を食らっていないもう片方の前足にヒビを
いれ、リーズヴァルトさんの体勢を大きく崩すことに成功する。
「成功ォ!でも腕いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
が、その代償は大きく勢いよく出ていったために
回避が難しい体勢になった上、手の激痛ですぐに行動できない。
そんな状況のセンジョウさんに対し、容赦なくリーズヴァルトさんは
根の追撃を行う。
『貴様も残しておくと後で面倒そうじゃし、潰しておきたいが…』
「【グリーンキャッチャー】!あーもう無茶しないでくださいセンジョウさん、
昔から変わりませんねぇあなた!少しは戦闘狂が治ったことを期待したんですが!」
リーズヴァルトさんの攻撃が当たるよりも先に
緑色の虫取り網のような魔法でセンジョウさんを回収し、小言を述べる。
…どうやら道中の会話も含めて察するに、
SRO以前から交友関係があったのだろうか?
そんな感じがするものの、深く考えてもわかることではないので
後で聞こうと思いながらも状況の打破に頭を回し始める。
「あんたもいるしフジカさんもいる、こんな無茶しまくれる状況で
楽しまねぇなんて損だぜ!!ぁ縄に殴った手がいてええええぇっっっっ!!」
「頑張って耐えて下さいよこのバトルジャンキーが!
私だって回避し続けなきゃいけない状況で無理するほうが悪いんですから!」
『やはり、やはりな!多彩だのう魔術師…良い、良いぞ!』
前腕は砕けているから、機動力は相当削がれているだろう。
だが未だ根の操作及びそれに付随する地形の変化は相当に厄介だ。
しかしファルとミソラのどちらかと心獣混身したとしても
近接戦である以上今の状況の焼き増しだ。つまるところグリムとの
心獣混身での魔法による戦闘に変更するのが有力な手だろうか?
しかしリーズヴァルトさん相手に魔法が効くかは半ば賭けに近い、
打撃での攻撃で前腕を破壊しているものの完全破壊には至っておらず
魔法を当てたとて有効とは限らな―――――
「褒めていただき光栄ですねぇ!できれば手加減とかいただけませんかぁ!!?」
『手を抜いたら貴様らが勝つだろう、意地でも抜かんぞ!』
「だってよアヤさん!最高だなぁ!」
「あんたはもう黙っててくれ!!」
「ご主人様!混身しましょう混身!そしたらミソラなんか
目じゃないスピードで勝てますよ!」
「魔法そんなに効きそうな気がしないけどやるのご主人様ー!?」
「もうダメだぁぁぁ!!みんな生き埋めにされちゃうんだぁぁぁぁ!!」
「ご主人!そろそろ私も体力限界と腕の近いんですけどー!
あとどのくらいで助けてもらえますかねー!!」
「ごめん、みんなちょっとうるさい!
グリムはもうちょっとだけ考えさせて!
ミソラはほんとごめん、もうちょっとだけ耐えて!」
すごくうるさい、というか状況が混乱しすぎじゃない!?
考えていたのはたかが数秒の間なのにリーズヴァルトさんの攻勢は勢いを増し、
対応しなくてはいけない事態がさらに増加する。
これ以上考えても状況は悪化するだけ…
ええい、こうなったら一か八かで魔法が通じると信じて
グリムと心獣混身しよう!
「グリム、やるよ!」
「はいよー、仰せのままにー!」
「【心獣混身:グリム】!!」
数瞬の内に変身を完了させ、魔法で飛行しつつ
全力全開で魔法を使い始める。
「混身完了、『時縛りの茨』、『アイシクルエッジ』、『フレイミングニードル』!」
放たれた魔法はリーズヴァルトさんを的確に捉え、
ほぼすべて命中したのを目視で確認する。
『ぐぉ…!貴様、それは―――!』
…グリムとの混身は、ミソラやファルと同時期だったために
使う前は私の苦手な遠距離戦を場合によってはグリム以上の
効率でこなせるのではないかと思っていたが。
実際に使ってみた結果は、「威力の高い魔法を連射できるものの
ひたすらに燃費が悪い」といったものだった。
まずメリットだけ説明すると、魔法での攻撃がグリム単体のときの倍か
それ以上の威力が出る。その上グリムと私の魔法を組み合わせて使えるため
使える魔法の選択肢が著しく増え、有利に事を運べる状況を増やすことが
出来るといったところだ。
が、半面デメリットも著しく大きい。
まず、他二人の混身に比べて攻撃に対して防御が貧弱なため
魔法で防御するといった手間が増える。その上、魔法の威力が上がっている分
さらにMP消費も大きくなり、前述の防御に関しても消費するため
一回使うだけで他二人の混身に比べたら桁違いの消費となる。
そのため、これを使う場合は短期決戦かつ
押し切れると確信した状況のみに限定していきたかったのだが…
今回はもう仕方ない、消耗についても許容するしかないだろう。
そして、リーズヴァルトさんに使うか迷っていた理由としては
先ほど述べた通り有効打となるかどうかわからないといった点だ。
以前ヒルデさんの指示でグリムが戦わされた魔法に強い敵がいたことや
その際に言っていた魔法を無効化できる相手もいるということを加味して
魔法が有効打になるかは賭けだった上、すぐに解除したとしても
消耗したMPが即座に回復するわけでもないので使って勝てなければ
そのまま負けに直結する可能性が高い。
そうなる前に火力で押し切る、押し切れなければ負けである。
そのために今の私に求められているのは速攻で大火力を叩きつけ
勝利すること。今の攻撃でどの魔法が効くか分かれば御の字、
分からなければ単純に前回試した際に一番凄かった魔法を使おうと
決意しながら、私はリーズヴァルトさんを見据える。
『心獣混身…それも魔導伝承との合わせ技か!
それにこの魔法の威力…流石は黒竜の妻の依り代だのう!!』
「うるさーい!私とファルの恨み、倍以上にして返してやる!!」
魔法を当てた部分を見てみると
腕のヒビは先程より明らかに大きくなり、魔法による攻撃は確実な
ダメージとして形となっている。
一番効いているのはフレイミングニードル、
次点でアイシクルエッジだろうか?
…であるならば、あの三つを使えば倒せるだろう。
「【殺意】、『氷睡の茨』、『サイクロンチャージ』…
これでおしまい、『白熱劫火』!!」
殺意で威力を強化した後ろ足と胴体をのあたりを氷睡の茨で拘束し
サイクロンチャージで加速しつつ最後の一撃である白熱劫火の威力を
更に上昇させて叩き込む。これで決まらなければ私の負けだ…!
『ぐ、ぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
リーズヴァルトさんは根や地面を壁として受け止めようとするが、
魔法の威力を受け止めきれずに即座に崩れていき、ついには直撃した。
リーズヴァルトさんの体が炎に包まれ、巻き付いた茨も巻き込んで
大きな炎となる。…思った以上に火力が高い、
あれこれやっといてあれだけどこれ本当に大丈夫!?
『あ、まず』
リーズヴァルトさんのそんな呟きを最後に
大爆発が起こって激しい爆風が吹き荒れ、
私も含めた全員が壁に叩きつけられる。
これ、本当に大丈夫ですかね!!?!?
今後の更新予定ですが、
ひとまず今週は火、水、木のいつも通りの更新ペースで
行いたいと思います。理由としては久しぶりの執筆で
連続投稿できる文章量が書けていないためです、
こんなに書けなかったか私…?
(週末に何とかして来週には連続詫び投稿できるよう頑張ります)
今後も本作をよろしくお願いいたします。




