三回戦、シードと極振り
三戦目です。明日は四戦目の予定
「はーい!みんな楽しんでるー?運営の大妖精さんだよー!!」
二回戦が終わり、三回戦が始まろうとしていた時
唐突に会場中央から運営さんが出現する。
「みんな!トーナメント表で別会場含めて一つ、
三回戦がないチームがあるよね?気になったんじゃない?」
会場各所から肯定の声が上がり、それに運営さんは
うんうんと頷きつつ、謎の箱を取り出す。
「三回戦で一チーム、くじ引きであたりを引いた人を
シード枠で三回戦突破扱いにしまーす!」
あの箱くじ引きの箱だったんだ…と思いつつも
運営さんが三チームのもとへ行って
順々に箱から紙切れを一枚引いてもらっていき、
結果としてあたりを引いてシード枠となったのはうちのギルドだった。
「やったねえーさん!」
「そうだね、アルルちゃんのおかげだよ」
本当に豪運すぎてびっくりする。
そんなこんなでアルルちゃんたちも観客席に送られ、
近くの席に座る。
「ふー!!ガチャガチャ剣を動かしながら倒すの楽しかったわ!
一回負けちゃったけど…それも勝負よね、とっても楽しい!」
「よかったねアルル。少なくともビキニアーマーよりも
そっちのほうがずっと似合ってるよ」
アルルちゃんは鎧の頭部分を解いて楽しそうに言うと
とても楽しそうで何より、と思う反面
一回戦目の対戦相手が気の毒に思えてしまう。
ふぃろーさんはほんわかとした笑みを浮かべながらアルルちゃんの
お話を聞いている。
それをせすさんが柔らかな笑みを浮かべながら見ていたのは
内緒にしておこう、あれが正妻の余裕という奴か…?
なぜ今出すのかはわからないが。
「よっ、ナイスファイト―」
「ありがとう、とりあえず手札は温存できてるのが幸いだ」
「あぁ。魔導伝承込みでなら多分まだまだ大丈夫だろうな」
グーフィーさんがグヴァンとハイタッチをし、
真剣に次の試合の話を始める。
グヴァンさんはどうやら魔導伝承以外にも奥の手を隠しているようで
今はまだ余裕の表情だ。
「前二人が強すぎて一生出番が来る気がしねぇ…」
「まぁまぁ。戦わないで勝てたらそれはそれでいいじゃねぇか」
「バッチバチに戦えると思った
俺の気持ち返してもらいてぇもんだなぁ!?
クッソ、収まんねぇや!テットウ、狩り行くぞ狩り!」
「まだ試合中だぜライカ」
ライカさんは現状二人しか戦っていない状況に不満があるようで
フラストレーションを発散しに敵を倒しに行こうとしているが
それを冷静に止めている。
シードをとれなかった二組は熾烈な争いを繰り広げており
一戦目にもかかわらず熱い戦いを見せてくれている。
片方は拳や蹴りで戦う格闘家らしき人で、
片方は槍で相手と距離を取りつつ着々と
ダメージを与えていく。しかし相手も負けじとチャンスをしっかりともぎ取り
拳を着実に当て、高威力のスキルで体力を削っていく。
最初は槍使いの優勢にも思えたが、
槍使いがが着実にダメージを与えていくものの
格闘家の攻撃は一発一発の威力が大きく、一撃が与えられていくごとに
槍側以上のダメージとなって積み重なっていく。
そしてついに格闘家の攻撃がHPを削りきった…かに見えたが
槍使いのスキルだったのだろうか、すぐさま何事もなかったかのように
立ち上がり虚を突かれた格闘家は強力なスキルによる一撃を諸に受け
逆にHPをゼロにされ、一戦目は槍使いの勝利となる。
「すごくいい戦いだったね」
「うちのアウトローさは際立ったけどね…」
「…確かにそうなのだけれど、
ああいう戦い方もありなんじゃないかしら」
トピアさんは肯定しているし、理屈はわかる。
しかしいくら強いからと言ってあの惨事を正しいと
思ってはいけないと思うのだ…だって、黒い機械みたいな
鎧で意味わからない剣でガションガションと音を鳴らしながら
ボコボコにする絵面や地面に倒れた相手を踏みつけて
無表情で鈍器を何度も何度も打ち付ける行為を
正当化するのは難しいと思う。
「あ、二人目が来たよ」
二人目は何やら…あれなんだろう、でっかいバット?
いや金棒だろうか、とりあえず鈍器を持った軽装の男が現れる。
試合が始まり、先程と同じように削り合いが始まるかと思われたが…
軽装の男がスキルを載せた一撃で槍使いに一撃を加えると
槍使いはHPを削り切られ、先程のように蘇ることもなく試合が終了する。
「…一瞬で削り切ったの?」
今までとあまりに違う異質な決着に唖然としていると
ライカさんとテットウさんが教えてくれる。
「っぽいな、槍使いのビルドは多分防御が薄くて回避に振ってる
奴だろう、HPも割と少ないし相手のやってることは理解できる。
だがそれを成立させるたぁ相当な奴だ」
「このゲームであんなもんお目にかかれるたぁな…
極振りなんていう超ピーキーなビルドを実戦レベルに
まで落とし込んでやがる。一撃当てれりゃ勝ち、そうじゃなきゃ死…
潔い戦い方してやがるぜ」
極振り。それはステータスの補正をすべて一つのステータスに集約し
それ以外のステータスを一切上げないというステータスの上げ方らしい。
当然防御や回避は装備品頼りになるし、敵によっては一撃で倒されることも
珍しくない。だが、それを超えたロマンがあると…
「つまり、その道のスペシャリストであると」
「…要約するとまぁそういうことだ。あいつは攻撃力極振り、
おそらくはそういうステータスの上げ方だ」
「こりゃ出番あるかもな。俄然燃えてきたぜ…!」
続いて始まった二戦目、三戦目も
相手がしっかりと対策しているにもかかわらず
男は確実に一撃で相手を仕留め、三回戦を勝利する。
第四試合の相手であるトンカチダンマは、相当な強敵らしい…
だがうちの三人はもっと強い!
身近で見てきた私が言うのだから間違いないと信じながら
私は三人の勝利を願うのだった。
このゲームにおける極振り
ステータス強化の偏りは一般的であるものの、極振りはやはり一般的ではない。
防具によるステータスアップも素の値が低ければ焼け石に水であり
ロマン構築の域を出ないものである…が、逆にデメリットを許容すれば
強力な力を得られるので試すプレイヤーは一定数存在する
ブクマ、評価よろしくお願いします!
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