姉、引っ越すってよ(未遂)
かなり早めの投稿です。
普段とはかなり違う感じの出来となっております…
体調が安定しませんが明日も投稿する予定なので
見に来ていただければ幸いです。
(梅雨で死にかけている人間の一言)
私、藤野蒼羽は家を出る決断をした。
理由は最近の妹の永華の不調には私が影響しているであろうことだ。
毎日のように甘えてくれるしお菓子とか作って甘えさせてくれるから
気になっていなかったが、私の世話と自分の世話を両立させるためには
かなりの労力が必要のはずだ。
最近体調不良も続いているようだし、
私が帰ってくるまでそんなことはなかったという話も聞いたから
私が体調不良の原因であることは疑いようもないことだろう。
だから私は永華と離れた方が永華のためになる。
母さんにも父さんにも話は通したし、金銭面に関しても
絵本作家としての収入を貯蓄していたものを使えば何とかなるだろう。
後は引っ越す場所を探すだけだったのだが…
これが何とも難航した。金銭に糸目をつけているわけじゃないのだが
中々良い場所が見つからない。
条件としては永華が気軽に来れない場所で、
ちょっと静かな場所を探しているのだが…何ともうまくいかないものだ。
探している間に永華に何度か転居先のリストを覗かれたものの、
最初に「絵本を書く専用の部屋を借りようかなと思ってるんだ」
と言って以来言及してこなかった。
そして探し続けたある日、ついにいいところが見つかった。
私は書類に目を通し終わり、業者の方に連絡する。
「ご契約頂きありがとうございます、契約の書類等を後日送付しますので
よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
そんなこんなで、私の転居計画は一週間ちょっとで次の段階へと移行した。
次は家具の類を探す段階だが、これに関しては新居を見るついでに
息抜きがてら見ていたのですぐに終わった。
その次の日、書類が届いたので必要事項を記入して送り返す。
一週間後、新居の契約が完了して家具の類も一応購入して
Skypostで新居に届くようにした。
諸々の手続き等の処理が終わり、
慣れない会話にくたくたになった私はすぐにぐっすりと眠りについてしまった。
◆◆◆◆◆◆◆
朝。目が覚めると私は永華に馬乗りされていた。
「!?!?!?!?」
混乱して振りほどこうとするが、とてつもなく強い力で押さえつけられ
抵抗できない。そんな中、永華は笑顔で挨拶してくれる。
「あ、おはようございます姉さん」
「え、永華?どうしたの?」
寝起きで回り切らない頭をフルスロットルで動かし、
永華に聞く。永華は笑顔で、しかし目は一切笑っていない
表現しづらい表情を浮かべながら言う。
「ねぇ、姉さん。私から離れようとしてないですか?
絵本専用の仕事部屋なんて嘘までついて」
バレている。まるで私の思考が完全に読み切られているような
感覚に陥りながら、永華は続ける。
「ねぇ、姉さん。私は悪いことしてないですよ?
姉さんが大好きで、大好きで。姉さんのために料理するのも苦じゃないし、
姉さんと一緒に過ごすのも苦痛じゃないです」
「っ違うよ!永華っ、そんなことじゃ」
永華を嫌うはずがない、そう言う前に永華は言う。
「分かってます、姉さんは私の体を気遣ってくれたんですよね?
姉さんが私を嫌いになるはずないですもん。
…体調不良に関しては徹頭徹尾私の落ち度です、
姉さんが気にすることじゃありません」
ダメだ、話を聞いていない。
なのに永華の話は的を射ていて、そのちぐはぐさに混乱してしまう。
「姉さん、私は姉さんが大好きです。
引っ越しなんてやめてください、
引っ越し先は私に言った通り仕事部屋にして
今まで通り一緒に暮らしましょう」
「永華…」
トピアさんが言っていたことが現実になってしまったようだ。
もっと真剣に話を聞いておけばよかったなんて思いもあるが、
実際に起こってしまった以上そんな思考も意味がないだろう。
「答えてください姉さん。でないと私、何するか分かりませんよ」
「え…何するの…?」
監禁でもされるのだろうか?
いや本の読みすぎか。でも何をするんだろう…?
「一か月間添い寝してもらいます」
「え?」
驚きで目をぱちぱちして呆けた顔を浮かべてしまう。
え?添い寝?
「今回の出来事については私の体調不良が原因で、
姉さんに非がない上、引っ越しの件に関しても納得の行動です。
…でも、それでも引っ越すのなら毎晩寝る度にこの家のベッドで
私と添い寝する生活が待っていると思ってください」
それはそれでホラーな気がするが…
「それでもダメならもうあんなこともこんなこともやっちゃいます」
そう言いながら何やら手遊びを始める永華。
あれってつまり…いやまぁ邪推だろう、永華がそんなことするわけ…
「…うん。わかったよ、ごめんね永華。引っ越すのはやめるよ」
私の体から降りて脱力する永華。
うん、引っ越しをしない事での体調も精神への負担が不安ではあるが…
永華が笑顔でいた方がずっといいと思った。
今は、愛しい妹のわがままを聞いてあげるのも悪くないと。
そう思いながら、私は永華を抱きしめて頭を優しく撫でるのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
「ふー、危ない危ない…」
通学路を歩いて学校に向かいながら私は愚痴るように零す。
姉が物件を探し始めた時点で姉のやることには察しがついていたので
ある程度泳がせておいて最後に行動を起こそうということにしていた。
体調を心配してくれるのはありがたいのだが、
姉は私の隣にいてくれた方が安心するというのが私の思い。
確かに最近体調不良が重なったが、姉が帰ってきただけで体調を崩していたら
私の体は相当に弱いことになってしまう。
「ややや、登校時間が合うなんて久しぶりだねえーさん!おはよー!」
後ろから福音が元気よく挨拶してくれたので
それに対して、私はにこやかに笑って返す。
「おはよう、ふーさん」
ああ、こんな毎日がずっと続けばいいのにと。
私はそれが現実であり続けて欲しいと心から願うのだった。
割と投稿するのを迷った回ですが、
でも奴ならこれくらいするかなっていうのも書かなきゃいけない
と思ったので投稿しました。
お姉ちゃんの思ってる5000倍くらい主人公からの愛は重い。
次回、主人公の過去編(予定)
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