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閑話:風邪①

投稿しなおしました。

バックアップ残っててよかった…

詫び投稿1話目です

二話目は明日を予定しています

今日は月曜日。

学校なのだが…

いつもより登校するのが遅くなってしまった。

そこに、心配そうな顔でまーさんが

私に尋ねる。


「えっと…大丈夫です?」


「だいじょうぶ」


「大丈夫そうではなさそうですね」


今朝からこんな感じだ。

著しく体がだるいが、だるい以外の体調不良が存在しないため

こうして学校に来たはいいものの…やはりだるい。

授業開始前ではあるものの頭が上に上がらない。

授業…受けられるだろうか?


「何かあったんですか?」


「うーん…」


大して思いつかないというのが現状だ。

しいて言うなら…


「SROかなぁ」


「えっ、何してたんですか?」


「…レース?」


「…?レースなんてありましたっけ」


昨日やったことと言えばそのくらいだ。

まーさんに昨日の一件を説明する。


「えーと…とりあえず授業を受けられないようだったら

 保健室行きますか?その状態で受けるより

 しばらくしっかり休んでから受けた方がいいかもしれませんよ」


そうかもしれない。

私はまーさんに肩を借りて保健室に行った。


◆◆◆◆◆◆◆


結果として。

私は一時間目の授業を欠席し、

その後保健室の先生に風邪の診断を下され

家に帰ることになった。


「うぇ゛ぇぇ…」


どうやら最近、最初は倦怠感だけだが時間が経つと

発熱と喉の痛みを引き起こすタイプの風邪が流行っているらしく。

お医者様には絶対安静を固く誓ってほしいと言われ、

私はこうして家で寝込んでいる。

風邪をひいてしまった理由を考えてみると、

最近忙しかったのが思い浮かんだ。

故に少しばかりではあるが、

健康管理を怠っていた節はある。

そのツケという奴だろう、以前引いた風邪よりも症状もひどいし。


「…ね゛よ」


そうだ、寝るのが一番なのだ。

幸い、寝付けないほど体調が良くないわけではないので

私はすぐに眠りにつくことができた。


◆◆◆◆◆◆◆


「うん、分かった」


『頼んだわよ~、言い方が悪いかもしれないけど

 今暇なのは蒼羽だけだから』


「もちろんだよ。永華ちゃんにはいつもお世話になってるし、

 私も頑張るよ」


『気合は十分ね、それじゃ頑張ってねー』


母さんからの急な電話。

どうやら永華が風邪をひいたらしく

看病を頼まれた。


それからしばらくして。

永華を迎えに行き、一緒に病院へ連れ添って

診断してもらって一緒に帰ってきた。


そして安静にできるように飲み物を枕元に置き、

色々な用意を整えて静かに部屋を出る。


「これでいい…かな?」


どうも永華は相当体調が悪かったらしく

私の存在に気づいていなかった。

早く良くなればいいな…と思いつつ

私はおかゆを作り始める。

初めてなのでうまく作れるのか不安だが…


「鍋に水とご飯を入れて、お米をほぐして加熱…」


大体の料理はレシピ通りに作れば成立するのである。

何とか苦戦しながらも、おかゆが完成する。


「これだけじゃちょっとつまらないかな…」


そう思った私は、なんとなくでもう一種類おかゆを作り始めた。

大丈夫、失敗すれば私が食べればいい。

そんなこんなで調理を再開した。


◆◆◆◆◆◆◆


「…なんだ?」


大学での講義を終えて、俺は家に帰ってきた。

だが、キッチンの方から何やら嗅いだ覚えのない匂いがする。


「不審者…はないか、ポトリーはあり得るが」


そもそもウチに入り込んで無事でいられる不審者など存在しない。

つまり不審な行動をとれるのは知り合いの中の人物に限られる。

ポトリーの奴はその点ちょっと怪しいが…

少しばかり警戒して忍び足でキッチンへ向かう。


キッチンへ向かうドアをゆっくりと開ける。

そして、俺の目に映ったものは。


「…ば、かな」


キッチンでおかゆを作っている姉さんの姿だった。

恐怖のあまり俺は意識を失いかける。

そしてその答えを全力で拒絶するための証拠を集め始める。


まずおかゆを作っている理由。

おそらくは永華だ、体調を崩したのかもしれない。

今朝は少し体調が悪そうだったし、

今日は父さんも母さんも帰りが遅いから、

看病を頼まれるのは自然な流れだろう。


しかし…姉さんは料理が下手(・・・・・・・・・)だった(・・・)はずだ。

幼少期にとんでもない物を食べさせられた記憶があり、

まともなものができる気がしない。


「あれ?帰って来てたんだ。おかえりなさい」


「あ、あぁ。ただいま。姉さんは何で料理してるんだ?」


「んーとね、永華ちゃんが熱出しちゃって。

 看病を頼まれてちょっとおかゆ作って食べてもらおうかなって。

 永華ちゃんお昼食べられてないし」


推測は当たっていた。


「えー…と、ちょっと実物を見せてもらっても構わないか」


「んー?いいけど」


そう言って俺は鍋の中をのぞく。

鍋の中を覗くと…


「…ちなみにこれ、何を混ぜたんだ?」


「えーと、かつおベースのだしと、ちょっとだけ大葉をちぎって混ぜた

 感じの奴?」


「隣の小皿は?」


「梅干しを潰してペーストにした奴」


…普通だ。

おかしな匂いだと思ったが、よくよく考えたら嗅ぎなれない匂いを

不快な匂いだと勘違いした可能性がある。


「姉さん…料理出来たんだね」


「あはは…確かに旅に出る前は下手だったけど

 旅に出て自炊するようになってから少しはできるようになったよ」


…よくよく考えてみたら以前食べさせられた物も

分量や調味料を間違えた程度で、美味しくなかったが

別に危険、というほどでもなかったかもしれない。

気にすることではなかったか…?


「うん…じゃあ、頑張って」


「うん、永樹もお疲れ様。あとちょっとだけ申し訳ないけど

 永華の様子を見に行ってもらえる?寝た後におかゆ作り始めたから

 様子が変わってたら怖いから」


「分かった」


そう言って、俺はキッチンを後にし

永華の部屋の前まで行く。

ノックを五回して一応断りを入れる


「永華、入るぞ?」


ドアを開くと、そこには寝ている永華がいた。

確かに具合が悪そうだが、少し落ち着いたのか

ぐっすり眠っている。

大丈夫そうで安心した。


その次の瞬間、永華の仕掛けた俺撃退装置が作動し

俺は部屋から追い出された。


◆◆◆◆◆◆◆


「うむにゅ…」


目が覚めた。体を起こそうとするが

少し重い気がして途中でやめる。

そういえば風邪を引いたんだったか。

しかし、寝る前よりはだるさが軽くなっている。


「今は何時かな…」


そう思い、体を起こして時計を確認する。

午後3時。さっき寝たのが11時くらいだから

丸々4時間寝ていたことになる。


「あっ、起きてたんだ。体は大丈夫?」


「姉さん?」


少しばかり風邪の症状が吹き飛んだような感覚がするが

きっと気のせ…いや、きっと姉セラピーの効果だろう。

間違いない。


「おかゆ作ったんだけど…食べられそう?」


「大丈夫。寝たおかげかだいぶ楽になった」


姉のおかゆ。

何杯でも食べられそうな響きだが、

体調的に難しそうなのが少し不満だ。


「ふー、ふー。はい、どうぞ」


「!!?!?!?」


これは、もしや俗に言うあーんという奴だろうか。

最高である。しかも姉によるふーふー付きだ。

たまらない。


「いただきます…」


私は最高の感動を噛みしめながら

姉のあーんを受け入れる。

…おいしい。風邪だからというのもあるかもしれないが

いつもの料理の倍はおいしく感じる。


「おいしい…」


「よかった~、ちょっと不安だったけど

 うまくいっててよかったよ」


こんな幸せ、あっていいのだろうか。

そんな幸せを感じながら私は食事を続けるのだった。

お兄ちゃん撃退装置

お兄ちゃんだけを察知して撃退する装置。

不審者用は別に用意されており、

ポトリーさんから以前譲り受けた。


ブクマ、評価よろしくお願いします!

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