爆砕と蛮雷、そして三の解⑥~60秒、私は【生きている】・後~
これ、なんだと思う?
インスタの続き。
「それそれそれそれー☆ むきみになーれっ☆」
「──ホント面白いくらい吹っ飛ばすよな!」
のこり20秒☆
たくさんでてきたカニをけしてるところにロックがとびこんできた☆
ためらわないよねやっぱり☆☆
とゆーわけでここからせいだいにあばれちらし……た程度で勝てるわけないでしょ落ち着け私!
アドレナリンにのまれるな!
「そーよ、プロに食らいつこうっていうんだからこのくらいしなきゃでしょー!」
……正直な話、この川に飛び込んだ時点でほとんど私の勝ちだ。
移動する限り無限に湧くカニと私の弾幕が道をさえぎるから、1分じゃ心もとない。
ここまですたこら逃げてきたのに何もツッコんでこないあたり、ロックが想像していた正解はこれなんだろう。
バトルは正面からぶつかり合うだけじゃない、周りをよく見て自分に適した勝ち筋や場を探し出せって。
「火の玉ストレーーーーーーート!」
「電撃じゃねーか!」
「気にすっるなーーー!!」
「ちいっ!」
けど、それじゃだめよ。
逃げるが勝ちなんて私が私を許さないもの。
そうだとも。
ここまでは私が勝てるようにするための場作り。
そしてここからは私が勝つための正念場だ!
「……【イグナイト】オン!」
対するロックはさっきまで使ってた【火翔】じゃなく、地下水道で見たことある加速スキル。
数歩分だけ移動速度を跳ね上げるものだ。
空路じゃないのは撃ち落とされるのをきらった?
確かにカニの群れから抜け出すには速さを上げるしかない……しかない、けど。
「ん、んん?」
踏み込んだその足でロックがやったのは加速じゃなくステップ。
横跳びでいたずらにカニを増やし、その中心で腕を振り上げて──私を「言ったよな?」って感じで一瞥して。
「新鮮な川の幸だ、受け取れ!」
退避!!
【火翔】の風に巻き上げられたカニたちが、私のいたところに降り注ぐ!
「引導の追加発注だ!」
カニの直送攻撃は別にいい。
問題はこれ幸いと川をさかのぼってくる運び屋さん。
やっぱり負け濃厚くらいじゃ諦めないよね。
相手はプロ以前にエンターテイナー、勝つチャンスがある限り最後の1秒まで勝ちを取りに来る。
だったら、私のプランに変更はない。
強欲に狙おうじゃん、大勝利!
「【第三の解・尸解】オン!」
「──!?」
ぐんぐんと目の前まで向かってくるロックに握れるだけの【凍結結晶】を投げつける。
新スキルのお披露目だ。
「ここで……!」
こればっかりはプロ様でもどうしようもないでしょ。
1番の瞬間に未知の危険──コンマ数秒じゃアイテム強化のスキルまでは分かっても正解まで頭は回せない!
かわす、離れる、あえて突っ切る……反射的にできうる行動で、ロックが勝ちをとれる答えはもうわかる!
陽光を反射させながら【凍結結晶】が空をきる。
無造作にまいたことでできた、ほんの少しの隙間をかいくぐったロックは、1発を入れるために拳を固めていた。
「50秒……おしかったな、これで終わりだ!」
「ぜったいやだ! だってこんなところじゃ何も満足できないもの!」
【第三の解・尸解】。
なぜ錬金術のスキルに転生めいた東洋思想が使われてるのか?
この疑問は説明まで見てようやく納得がいった。
この世界のモノはほとんど何でも素材になる。
草であったり、モンスターの肉であったり、虫であったり。そんなのが職人たちの手で武器や薬へ変貌する。
たいていの場合はすりつぶしたり溶かしたりしてるはずなんだけど、錬金術に限ってはそのままだ。
草も動物も釜へドボン。混ぜればもの言わぬアイテムの出来上がり。
じゃあ魂は?
そのまま使われた素材たちの魂はどこいった?
「【汝、起動セヨ】!!」
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【第三の解・尸解】
ジョブスキル。
プレイヤーが使用するアイテムに【生きている】状態(一定時間自動で動き、指定した対象へ効果を発動する状態)を付与する。
取得条件:錬金術士でレベルが30以上になる。
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その答えを導き出すのが第三の解なんだ。
アイテムに宿った素材たちの魂を呼び出す、なんともマジカルな方程式!
「──ぐっ!?」
突如曲がった【凍結結晶】に横面をたたかれ、凍結していくロック。
舞台は川で全身ずぶぬれ……広がっていく氷はとどまることなく、彼の腕を凍らせる。
「追尾、か……!」
「さあどうだかね、イジワルなあんたには教えてやんない!」
「──ちっ、【紅「どっせい!」
離脱なんてさせるか!
右腕を振り上げたスキを見逃さず、【シンデレラパウダー】を頭にかぶって仕上げ。
アイテムボックスに残ってる【凍結結晶】、これを全部取り出し真上に投げ上げる!
「【尸解】オン…… 【汝、起動セヨ】!」
いくら私がノーコンでもアイテムが勝手に動けば命中率100%……飛べないヤツらに逃げ場はない!!
「おちろーーーーー!!!」
意思のこもった結晶はあられのように差別なく降り注ぐ。
動けないロックに。群がるカニたちに。そしてその足をうずめる川に。
当たれば凍る凍結結晶。
1つ1つの力はささやかなものだけど、それが100個ともなれば。
「あははっ、秋の渓流が冬景色だねえ」
ぺたりと座り込んだ私の前に、何もかも氷漬けになった景色が広がっていた──。
次回も気長に待っていただければ嬉しいです。




