蛮族といえども心は秋模様です
1/30追記。
後半の展開を変更。
「リーズさん……! ああ、よかった」
キャンプ場にありそうな、深緑色の三角テントへ戻った私たちを迎えに来たのは、なんでかほっと胸をなでおろすおぼろちゃんだった。
どうしたのかとたずねてみれば、
「いえ……ハデに木が揺れたのが見えたので何か起きたんじゃないかって」
「ああ、それは――」
「このバカが木に体当たりして揺らしたんだよ……おかげでひどい目に遭った」
説明しようとした私の言葉をアルが遮る。
確かにあってるのだけど、半ばうんざりとしたこの言い草にはちょっとムッとくる。
そもそもアルが上の方まで行かないからそうしたのに!
「それで柿は取れたのか?」
「ええ、お土産にできるくらいばっちりね」
テントの前で見張っていたロックも駆けつけたところで、ひとまず成果物の発表。
アイテムボックスの画面を操作して、取れた柿をロックに見せてやった。
「すごいな、根こそぎとったのか」
「ふふーん、まあねえ」
そうそう、私が聞きたかったのはその言葉!
ナイスよロック、おかげで心のもやもやが晴れていくのを感じるわ!
持ってないものを素直に羨む声って、なんでこう、聞いててすがすがしくなるんでしょうね……人類の業だわ、業。
「渾身のドヤ顔してるところ悪いんだけど、ちょっと相談に乗ってくれないか? いくつか譲って欲しいんだけど……」
「いいわよー? お金次第だけど」
「……ゆずるのワードだけで金のハナシ始めるのどうかと思うんだが」
外野はうっさい。
お金は何ものよりも重いのよ。
私が取ったのがほとんどなんだから好きに使ったっていいでしょう?
「それより早くエリンさんたちに食べさせて、本題に移りましょう?」
……おっといけない。
これを取ったのはあくまで2人の復帰なんだって忘れそうになってたわ。
「そうね、じゃあ早速切っちゃいましょ! おぼろちゃん、頼めるかしら?」
「へ?」
「え?」
「は?」
……なによ、みんなして声出して。
私何かおかしなこと言ったかしら?
「リアルじゃあるまいしそのまま食っても大丈夫だろ、何言ってんだ」
……何とんでもないことサラッと言ってるんだこいつは?
「そっちこそなに言ってんのよ、普通果物は切り分けないと食べられないでしょ?」
瞬間、3人からなんだかなんとも言えないような目を向けられだした。
えっ、もしかして……果物って皮ごと食べられるの?
……いや、知らなかったのよ。
果物ってデザートに出てくる時にはもう切り分けてあったから、皮とかヘタごと食べちゃいけないものなんだな、って小さい頃からずっと思ってたの。
「……今、こいつがなんでこんなワガママなのか納得できたような気がする」
「こらこらリアルの詮索はNGだぞ……とりあえず中に入ろうぜ」
おいちょっと温かい目をしながらテントの中に入るな。
「あの、リーズさん……今度果物持ってきますね? 大丈夫ですよ、これから慣れればいいんです……リンゴとかナシとかなら皮ごと食べてもマズくなったりしないですから」
おぼろちゃんもそういったのち、2人に続いてテントの中へ。
……そして自分がどれだけ世間知らずだったか気づいた私は、ロックの説明中ずっと真っ赤になった顔を上げられないまま、体育座りでいじけるのだった……。
*
【ヘイケクラブ】というモンスターがいる。
大きさにして私の腰くらいまであるカニのモンスターだ。
ロックが指定したこいつらのレベルは32。
……あのイグニールより高いのはおかしいと思うのだけれど、ボスとそこいらのモンスターは格的な意味で全然違うとのことなので、深くは考えないでおく。
それでこのモンスターの特徴なのだけれど、子分として一回りくらい小さい、20レベルくらいの【クラブローラー】を4匹引き連れて出現することにある。
指示を出すリーダーのカニとともに5体1組で戦うモンスター……蟹の団体とはよくできたシャレだこと。
【郷愁の渓流地】の至る所にこんなのが住み着いていて、川の中に入ったとたん出てきて襲い掛かるのだ。
安全地帯は出入り口のススキ畑付近となんでだか知らないけどあの柿の木につながる道のみ。
それも川から出るまでほぼ際限なく湧くそうで、初めてロックが来た時にモンスタートレインしてみたところ、数えるのもおっくうなレベルの数になって圧殺されたとか。
このエリアを街道の一部にしなかった理由も、こいつらがいるからと思えば納得する。
川に入るたびにこんなのが湧いてくるんじゃ、橋の工事なんかできやしないもの。
総じてレベリングにはうってつけの敵。
えんえん湧いて出るし、危なくなった時用の安全地帯もあるから心置きなくレベリングに精を出せるのだ。
「うわあああああああああん!!」
このように!!
雷の大砲が割って入ったカニごとヘイケクラブ……蟹を雑に消し飛ばす。
いくらレベル差があろうとここまで育った私の魔法は耐えきれない。
だから撃った。撃ちまくった!
「もう戦い方なんてしらないいいいいいいい!!」
撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃ちまくり、視界の中に現れたリーダーを片っ端から狩って狩って狩って狩って狩って狩って狩って狩り尽くす!
「リーズさん! リーズさんってば――」
「ダメだ、今は離れた方がいい」
「何もかも吹き飛ばしてやるうううううううううう!!」
「うおうっ!? おい、あぶねーじゃねーか!」
知るかばかー!
今の私はスナイパーもとい砲撃手、というか大砲そのものだ! 爆風の被害まで考えてられるか!
それに蟹たちは攻撃されない限り【強欲】持ちの私に注意を向け続けるし、悲しいかな正面にしか手出しできない!
そうなるとおのずと範囲は絞られる。
私の周り、かつすぐに手出しができる場所――それさえわかれば後は杖を向けて、魔法を当て続けるだけ!!
「くらええええええ!!」
だって誰も言ってくれなかったんだもん!
果物は皮をむかなくても食べられるなんて誰も教えてくれなかったもん!
当たり前のように家政婦さんが皮剥いてスジとってさ、夕ご飯の後にたくさん並べてくれるんだもん!
うまれてこの方ずっとそうだったから、食べられないって思っても仕方ないじゃん、ねえ!?
ここ数日ずっと上下し続ける私の心を晴らすべく、大盤振る舞いだ!
女心は秋模様……蟹ども、あんたたちは私の気分のせいで死ぬのよ!!
「――そろそろ頃合いか」
「へ? うわっ!?」
瞬間、正面から何かに抱え上げられそのまま肩に担ぎあげられた。
そして担ぎ上げてきた声の主、ロックはそのまま周りのみんなに向かって合図を出す。
「いったん下がるぞ! ロストしたらパァだ、近くの奴と一緒に、蟹を避けながら岸まで下がれ」
「ちょ、ちょっと!? 私まだやれるわよ!」
ロックの返事はため息ひとつからの「お前には後で話がある」だけだった。
そしてその後は有無も言わせず、私は岸まで担ぎ上げられてしまったのである。
「ちょっとーーーー! 私まだ物足りないんだけどーーーーー!?」
━━━━━━RESULT━━━━━━
EXPを56208獲得!
リーズのレベルが30にアップ!
ステータスポイント25を獲得!
条件「【スーサイド】発動中、減少HPが累計5000を超える」達成! 【遮二無二】を獲得!
条件「雷属性魔法を累計1000回唱える」達成! 【百雷】が【千雷】に変化した!
リーズの中で新たなる力が目覚めた!
錬金術【三の解・尸解】習得!
新たなスタイルを獲得した!
スタイル【三解の錬金術士】獲得!
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次回から作者がこの作品でやりたかったことが始まります。
新たなスキルを得た彼女の活躍にご期待ください。
1/31追記
次回更新は1/31〜2/1の更新になります。
申し訳ございません……




