隠しエリア【郷愁の渓流地】
「すっごーーーい! こんなの見たことない……!」
小高い丘からそれを見下ろす私が出した第一声がそれだ。
渓流から頭をのぞかせる苔むした岩、緩やかに水面を流れていく紅葉、さっきまで進んでいたでっかいススキの海!
おお……? 見やればあっちのでっかい木に何か成ってる。
あれがロックの言ってた回復アイテムかな?
秋色に彩られたその川の名は【郷愁の渓流地】。
この山の自然ありのままを映す、この【リュッケン廃道】の隠しエリア。
ファンタジーらしい感じはしないけど、それでもお見事!
「川があればいいなあって思ってたけれど、これは想定以上だわ……! 休めるところもあるし、穏やかだし、それになにより楽しそう!」
目を閉じればゆっくりと水の流れる音。
波打つような激しさのない、緩やかなそれが流れていく山の絶景だ。
……と思っているとここで1つ疑問が。
「こんないい眺めなのに、街道を作ってた人は何を思って山を迂回したのかしら……?」
モンスターのせいで結局閉じたという設定のあの街道。
どうせならここへ向かうように山道を整備して、このあたりで橋でもかければ最低でも観光名所にはなったはずだ。
立派にお金を稼いでくれただろうに、なんともったいない!
「いた……リーズさん!」
「勝手に飛び出すなよ、どこに何があるかわかんないんだぞ」
「やっと着いたです……ふわぁ……」
そうやって「どうやったら稼げるか」と思考の海に沈みそうだったのだけれど、巨大ススキの海からみんなが出てきたと同時に引き上げられた。
ロック先導の下、見上げんばかりの高さまでキレーに生えそろった巨大ススキをかき分けて進んできたもんだから、みんな少し息が上がってる。
エリンちゃんに至ってはふにゃっとへたり込んじゃった……。
「ああ、ちべたくてつるつるしてるです……ふるくから慣れ親しんだ川辺の感触……」
「わわっ寝そべっちゃだめですよ! 服が汚れちゃいますよ!」
言いながら起こそうとするおぼろちゃんだけど、悲しいかなエリンちゃんは脱力しきってて、てこでも動きそうにない……。
「そうだなあ……アルフォンスとリーズはあの木に成ってるモノをとってきてくれ、俺はテントを立てながらここを見張ってるよ」
「あの、私は」
「おぼろは見張りながら休憩。ここからが本番なんだから、少しでもスタミナ温存しろ」
「……はい、おふたりともご武運を」
少し残念そうにうなずいたおぼろちゃんは、刀を抱えつつその場に座り込んだ。
いや、果物少し取ってくるくらいなんだけどな……。
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【フルフト】
Lv 16
品質 32
属性 土
カテゴリ 果物・植物
入手方法 採取で入手
売値 100エン
東方の街【ジパング】周辺で採取できる果物。
野山の動物たちに非常に好まれており、
これをめぐって争いになることもしばしばあるらしい。
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「柿のクセにずいぶん物騒な……というかなんでこんな川の真ん中に柿が生えてるのかしら」
「そこは気にしたら負けじゃないか? 動物に食われたのが運ばれたのかもだし、そうじゃなくても【フルフト】はこういうところに生えるってことだろ、きっと」
そんなわけで。
私たちが来たのは川を少しだけさかのぼったところ。さっき見渡した時に見えた、枝が大きく広がるように生えている古木のところだ。
あの時見えた通り、木にはなんでか橙色に熟した【フルフト】……柿がたくさんできてたから、アルに木へ上ってもらい投げよこしたものを私がとって集めることに。
高いとこから投げられたものをキャッチなんて普段だったら怪しかったけど、おせっかいなアシストシステムのおかげでアルはノーコン知らず。
手をあげたところに確実に飛んでいくので大した苦労はしなかった。
まあ何個か取りこぼしてアルに文句言われたけど……仕方ないじゃない! 確実に私の手に飛んでくるとしても勢いあったら取りこぼしちゃうって!
「……こんなもんでいいか」
「ええー……どうせならてっぺんまで全部とっちゃいましょうよ」
「あほ! サルじゃないんだぞ、落っこちたらどうすんだ!」
うーん相変わらずのヘタレよねホント。
仕方ない。こんなところで落下死されても困るし、何か別の方法を考えるとしますか。
目的は果たしたしさっさと戻る? 絶対ありえない!
だって何かの素材に使えそうだし、エリンちゃんも使うかもじゃない!
テキストに書かれてる通りなら、動物関連でクエストを出してるロックもいくつか欲しいはずだ。
それに【ジパング】なんて地域、掲示板でも聞いたことない。
まだアップデートされてなくて封鎖されている地域なら、今のうちに余るくらいは手に入れておきたい!
結論、いくつあっても困らないしたくさん必要!
……というわけで。
「お、おい? やめろ急に黙るのは……なんで木にペタペタと?」
「中は詰まってそうね……アルがこうやって登れる以上、枝もそこそこ丈夫だし……うん」
「待て、そのうんはなんだ」
「アルー? 落ちるのがいやだったら早く降りなさいねー!」
「俺の質問に答えろ!」
「答えたら力ずくでも止めるでしょー! 【トペ・スイシーダ】っ!!」
「のわーーっ!!?」
強硬採取っ!!
距離をとってから繰り出した体当たりの衝撃で古木は大きく揺れ、びっしりとついていた柿をふるい落とした!
よーっし! これで一通り落ちたわねえ!
「リーズ! お前……せめて俺がおりるまで――」
後はアルがなんか小言いってるのを華麗に聞き流しながら、採取採取っと!
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素材【フルフト】×44獲得!
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うわ、不吉だ。
「話をきけーーーー!!」
次回の更新は1/28 12時台の更新になります。
しばらく12時台での更新になるのでお付き合いいただければと思います。
申し訳ありません……。




