厄介者たちの反省会③~盗賊の恩返し~
「結局のところ私、まだまだ弱いんだねえ……」
と結論づけながら私は『イフオン』へログインした。
このゲームがはじまって6日、いろんなことをしたけどさ。
できるできるって息巻いたところでふつうに抑えつけられちゃう。
以前足りなかったもの、いま必要になったもの、何もかも全部足りていない。
おかげでちゃんと手に入れたモノさえ奪われそうになって、そのたびに助けが入った。
しまいにゃ力任せに暴れて、ダンジョンを破壊した結果は血みどろネーム。
晴れて私も厄介者たちの仲間入りである。
「わあ、あのおねえちゃんゾンビみたいにあるいてるーー!」
「シッ! 見ちゃいけません!」
「ああ、NPCの刺すような視線が痛い……こんなはずじゃなかったのになあ……」
極振りにしたステータスと悪知恵を全力で利かせて、ゲーム世界という箱庭のヒーロー兼、運営を震えあがらせる恐怖の権化になる、なーんてウマい話はアニメや漫画の中にしかないんだねえ……はあ、世知辛い。
「でも、でもよ!」
……だからこそ、今回はかーなーり期待してしかるべきだと奮い立たせる!
何せプレイヤーたちが誰も見たことのない、うわさの伝説をなぞらえるクエスト。
そのクリア第1号に私たちがなってしまうのだ。それに恥じない報酬が待っているに違いない!
「おはようございまーーーーす! マルジンさんいますかーーーー!?」
というわけで今私がいるのはリヒターゼン中央区に位置する【オーエントリフ商会】前!
社会の基本はホウレンソウ! クエスト報告の時間だ――――!!
「……まじ?」
「マジですぞ、わしのような【大商人】の職に就いている者は物の価値をカンペキに見分ける【メルクリウスの瞳】という加護が宿るのです……知りませんでしたかな?」
「…………。」
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急激な脳波の変調を確認。
すみやかにログアウトし、健康状態をチェックしてください。
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はーい。
商会へ元気よく入り、ひきつった笑顔と脂汗を浮かべた人の案内でマルジンさんに通されてから数秒後の光景がこちらになります。
「どうかしましたかな急に顔を青くして? どこか具合でも?」
「いいいいいいえ別に……!」
無ければ作ればいいとのたまった昨日の自分のツケを払うハメになりました!
ぬかった……! そもそも「商会のえらい人がなんで部下に任せずわざわざ馬車引っ張ってよそまで取引に行くのか」って考えたら「それ用のすごいスキルがある」くらい思いつくでしょうよ昨日の私のバカ!
【メルクリウスの瞳】……商売と旅をつかさどる神様の名前が使われてるあたり、意味するところは私の【理解】と同じアイテムの解析なんだろう!
【大商人】なんて明らかに普通と違う職業、多分上位互換のスキルとして存在するのが本当に厄介だ!
もし仮に私の作った贋作が品質の面で……【理解】の及ぶ範囲で本物に似せれてたとしても、私が見れないところのステータスが食い違えば通用しない!
「ははあ……さては先の地下水道崩落で先に進めなくなって、それで依頼をキャンセルしようとここに訪れたのですかな?」
マルジンさんは察しがいいんだか悪いんだか!
「まあそれも仕方ありますまい……騎士団が定期的に様子を見ているとはいえ古いところでしたし、あの崩落騒ぎではブレーメンめも別の場所へ雲隠れしていることでしょうしなあ、災難でしたなあリーズ殿」
優しい……ほんと優しいけど今は逆効果だ。
このままだと誰も彼もが骨折り損で終わる……!
だ、だれかーーー! だれかーーー!!
「こ、コラ! 今商会長は得意先の冒険者どのと対談中だっ!」
「だから今じゃなきゃあダメなんだよっ! その商会長ってのがいるとこに行かせてくれ!」
「……シオン!?」
大人たちの静止を振り切って。不器用なりにも真っすぐに。
私の今しがた上げた心の声を聞いたかのようなタイミングでシオンがこの部屋まで駆け込んできた!
「ここか応接室ってのは!」
「ぎょわぁ何事ですかなぁ!? ってわーーーっ!!!?」
蹴破られた扉にマルジンさんは飛び上がり、ものすごいスピードで私の後ろへ。
相変わらずの反応、本当ビビりよねこの人……というか私は客人のはずでは? 盾にするもんじゃなくない? みんな見てるよ?
まあ彼にとっては、話し合いをしている最中に凶悪犯が血相変えて突っ込んできたように見えてるんだろうから、自分の命が狙われてる! なんてAIが判断しても仕方なくはないか。
「あわわわわわわわ……!」
「こら! マルジンさんビビっちゃってハナシどころじゃなくなったじゃない!」
「わりーわりー! でもすぐにでもここに来なきゃだったんだよ! 受け取れ!」
「え――あいったっ!」
「あっ」
言いながら何かを放り投げてきたシオン。
キャッチに失敗して手のひらサイズのそれを顔面で受け取る羽目に!
おい笑うなクソガキ……! 急に投げつけて反応なんかできるわけないでしょ、スポーツ選手じゃないのよ私は!
「な、ななな――リーズ殿に何たることを! 何をぼさっとしておるか衛兵! すぐその悪ガキを捕まえてくだされ!」
マルジンさんの号令でそばの2人がシオンに手を伸ばすけど、小さいうえにすばしっこさだけはあるシオンの動きは捕らえられない!
結局速すぎるシオンに翻弄された挙句、最後は2人仲良くもつれて倒れてしまった……!
「へへっ、遅すぎだぜ!」
「つかまえろーーーー!」
「んじゃ、それ渡しといてくれよ!」
そのままシオンは何も説明せず、ばびゅーんと来た道を戻っていっちゃった……。
「なんなのよ、もう……」
受け取りそびれて床に転がったもの――どこかで見た宝石細工を拾い上げると……
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【静寂のブローチ】
Lv 28
品質 68
属性 光
カテゴリ 装飾品・加工物
入手方法 彫金、調合で入手
売値 60,000エン
魔物を鎮める力があるというブローチ。
効果そのものは強くないが、装飾品としてのデザインが好評なので、
見栄え目的でつける人が多い。
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「あいつ、いつのまに……」
……あのときか。
履き心地を試したいとかいって急に離れた時。
そういえばなんか最後の方もごもごしてたっけ。
心当たりがあるなら最初からそこに案内すればよかったのに……全くへそまがりなんだから。
本物があるなら話は早い。
マルジンさんに事情を説明してこの騒ぎを収めなきゃ!
3章は次回完結!
21時ごろ更新しますのでお待ちください!
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