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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第三章 ビュンビュン! 神風盗賊ブレーメン!?
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【飛閃】マリー (後編)

 

「えっへへ~つっかまえたあ」


 魔法も杖をふるう隙間もない密着状態まで差し込まれ、結果私は開けた腕でなすすべなく抱え込まれてしまう……!

 どう見てもさっきのシオン並……こんなに加速できるスキルなんてあるのか!


「足、狙ってたでしょ」


「!? なんで……」


「へっへー、マリーさん大当たりー……私みたいなつよつよさんはよっく見てるんだよ、相手の目線とかしぐさとか。相手はナマの人間だもん、次の動きがそれでわかったらめっけもんでしょ?」


 ばたばたと暴れるけど、マリーは「うーんこの狂犬ぐあい」と苦笑するばかりで全然力が緩んでくれない……! くっそー!


「そうカリカリしちゃだーめ……短期は損気だよー? 特に君みたいなぽっとできた特異点ちゃんはすーぐ誰かに、悪意のあるPKとかに狙われちゃうんだから」


「……!」


「あれ、もしかして心当たりアリ?」


 悪意のあるプレイヤー。

 狙う、悪意のある。

 その一言で私はアイツらを思い出した。

 昼間私を襲ってきたあの大剣使いとその仲間たち。それに……それに!


「いや」


 今度はおぼろちゃんがとられるのか?


「リーズ、さん……?」


 また何かをとられるのか?

 あのそばに誰もいない……何もない道を歩くだけの毎日に戻るのか?


「いや、いや……!! これ以上私からものを奪うな!!」


 奪われる、取られる!

 背中におぞ気が走って、頭の中で言葉と情景がぐるぐるとめぐりだす!

 アイツらが押し入ってきた時の事! 思い出のある別荘を次々と売り払われた時の事! 知らない人が悪いことやって、全部パパが責任を取らされて! 健康ドックの結果を自慢するくらいだったパパやおしゃれさんなママが見るたび見るたびやつれてって! お付きの人も友達のメイドさんも誰も彼もいなくなって!


「私のものは私のものだ! アイテムも居場所もお金も友達も、人から奪った物じゃない正当に手に入れたモノなのになんでみんなそうやって私を狙うのよ!」


 取り戻したいだけなのよ、確かに私の物だった何もかもを!

 最後の手紙をパパのポケットに忍ばせたあの日、私の過去は完全になくなった! まだ持っていたものをほぼ全部なげうって人生のレールから飛び降りた!

 何もかもないところから何もかもを取り返すには、新しく手に入れたモノでそこまでつながる道を作るしかない!

 文字通りの底辺から身一つで道をつなげながら、酸いも甘いも全部燃料にしてその上を死ぬ気で走るしかないんだ!

 なのに――!


「そりゃあアレだよ……あなたの事情なんか知ったこっちゃないもん、みんな」


 ……なんで気の毒そうな顔でそんなこと言うのよ!!

 アンタたちがそうやって道をふさいじゃうから、私はいつまでたっても道を進めやしないのに!!


「知ったこっちゃないなら邪魔しないでよ! 私は返してほしいだけなの、何もかも全部、直ちに……わひゃ!? わひゃひゃひゃはははは!!?」


「はいすとーっぷ、えーんどこちょこちょー!」


 急に脇の下に何かがうごめく感覚!

 いつの間にやらおぼろちゃんを下ろしていたマリーは私をくすぐりだした!?


「ちょっ、まっ……ひゃひゃひゃはははひゃは!?」


「そーかいそーかいかわいそうにー……おーよちよちよちよちー……ヨシ!」


 よくない!


「いきなりなにすんの!」


「いやーごめんごめん。ちょっとあおっただけのつもりがトラウマまで刺激しちゃったかな……でも取り乱しすぎ、安全装置に引っかかったら目も当てらんないことになるよ?」


「……えっ」


 指摘されてから見上げれば、黄色のウインドウが私の前に浮かんでいた。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 急激な身体の変調を確認。

 すみやかにログアウトし、健康状態をチェックしてください。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 身体や心理状態の異常を知らせる警告文……こんな時にまで出てくるのか!

 なんておせっかいな……あやうくおぼろちゃんもシオンも置き去りに強制ログアウトするところだったじゃない!

 手で振り払ったらマンガのイヤな想像みたいに消えないかなこれ、消えないか! うん!


「まーまー、暴れないでいったん落ち着こうぜ? そんで願わくば……私のハナシを聞いてほしい」


「……へ?」


 なかなか消えてくれないウィンドウに悪戦苦闘していると、真っすぐと私を見据えてマリーが口を開いた。

 これまでのおちゃらけた雰囲気とは一変、まんじりとも動かないその目がこれから話すことの重さを物語ってるようで、見つめられてる私もちょっと緊張してくる。

 私を落ち着けたうえで、そんな雰囲気で聞いてほしいハナシって何だろう……? 十中八九さっきのやり取りのことよね?

 ってまって私……余計なこといろいろ言ってなかった!?

 あっヤバい! これさっきのセリフのことを根掘り葉掘り聞かれるヤツだ!


「いや、あの私はただ……!」


「君たちはカモだ」





 ……誰が鳥類だ!



VRヘッドギアに内蔵されてる安全装置には段階があり、大まかに


Lv1 心拍数の上昇

Lv2 脳波の変調

Lv3 発汗など身体への影響を併発

Lv4 一定時間以上の恐慌状態もしくは脳波の異常

Lv5 上記から持病の発作などを確認


となってます。

システムによる強制ログアウトはLv4から。

今回のリーズはLv3です。

つまり今の彼女は汗だくだったり……


いつぞやの過労死でもログアウトさせられましたが、あの時は空腹のままログインを続けていたのでLv4という扱いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] にょ、尿意は……(※謎のこだわり
[良い点] 更新お疲れ様です [一言] 最後のツッコミ大好き 世間知らず感が前面に出てますよね VR系に緊急ログアウトを入れる人は多いですけど、この作品みたいに裏設定まで練り込んでるのが表に出てくる…
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