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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第一章 ドキドキ! 無限の伝説へReadyGo!
5/87

【スーサイド】オン! これが私の戦いよ!


「はいやー!」


 さて、と。

 馬のいななきと時折振るわれる鞭の音を聞きながら、私は腕を組んで考え込んでいた。


「む~……」


 ここは城下町につながる街道を走る、馬車の中。

 あの後マルジンさんに護衛として馬車に乗せてもらい、一緒に城下町を目指すことにした。


 ここまで来たら報酬をできる範囲で釣り上げたいのと、ちょっと考えなければならないことができたから、そのための時間稼ぎ。


「ステータス」


 ウインドウを開いて自分のステータス、HPの欄を見た。


「いやあ、これはかなり……」


 最初130あったHPは今や半分以下の42。

 戦闘1回、しかも魔法1回で倒せるレベルのゴブリンでこれはマズいわよね……

 原因はわかりきってる。

 スタミナに振り切って防御や魔力に一切割り振らなかったからだ。


 錬金術のアイテムでそこを補うといったって素材がいるし、素材を集めるためにはフィールドに出なければならない。

 フィールドやダンジョンには当然モンスターが出るし、ゴブリンなんかより強い敵はたくさんいる。

 もしモンスターに出くわせば、魔力も敏捷もない私は簡単に倒されちゃう。


「今ここでどっちかに割り振れば……」


 もらえたステータスポイントはたったの5。されど5だ。

 今すぐには無理でも、このあたりで少しずつ集めていければ多少はましになるかもしれない。


 でも私がしたいのは一刻も早く借金を返すこと

 だから停滞は許されない。少しでもブレーキを踏むとその分だけ完全返済は彼方へ遠のく。

 なるべくβ勢よりも早く遠くにいってレア素材を集め、錬金術で形にして売りさばく。そのためのスタミナ極振りだ。


 それで失った分の埋め合わせをするには……えっと、20レベル分!?


「無理じゃん!」


 確かこのゲーム、レベル差があるほどもらえる経験値減っていって、5くらい差が出たら完全に無くなっちゃうんでしょ!?

 累計しても取れるポイント25ぽっちなんて、どこ入れても変わんないじゃん!


「あーーっ頭が痛くなる!」


「お嬢さん? 何か困りごとですかな?」


 声を聞いたマルジンさんが、幕の外からこっちをうかがいながら話しかけてくる。

 開いたところから赤光が入り込む。


「もうこっちの世界じゃ夕方なんだ……」


「太陽と月の位置は4時間ごとに変わりますからなあ……夜には着きますから、それまでゆっくりしてくだされ。 それと」


 一呼吸おいて、マルジンさんは言葉を続ける。


「困ったときは、まず広く範囲を見るべしですぞ。 もしかしたら、関係なさそうなところに答えはあるかもしれませんからなあ」


「広く……わかった!」


 幕がもとに戻るのを見てから、私はウインドウに向き合う。

 とにかくこれは最優先!

 遠くに行ったって、何の成果も得られませんでしたじゃ話になんないもん!


 ステータスだけじゃない。

 スキルやアイテムも見て……ってそういえば【スーサイド】も【ブリッツ】もとってから全然見てないわね……1回見ておこっか。

 そして、ウインドウを開いた瞬間。


「あったああああああああああああああ!!」


「でーーたーーーーーーーーーーーーー!!!!」


「ヒヒンっ!?」


 同時に響き渡った悲鳴。そして馬がびくっと立ち止まり、異常がわかった私は、ほろ馬車から【ヒールボトル】と杖を持って前方に飛び出した。


「今の悲鳴何!?」


「だっ、ダメじゃお嬢さん!」


 マルジンさんが制しようとするけど馬車の先を見る。

 見るけど……なんだあれ?


「ヒ……ヒヒ!」


 ツボがくるくる回ってる……と思ったら紫色の小人がその中からにやりとしながら顔を出して。

 ツボからジェット噴射みたいになんか出してこっちに突っ込んできた!


「イーヒヒヒヒ!」


「レアモンスターのマジックポットじゃ! ツボから魔力を噴射して高速移動する魔物で、強さはゴブリンの比じゃあありませんぞ!」


「レアモンスターって?」


「え、特殊なアイテムをドロップするのですが……って今は逃げるが勝ちですぞ!」


「強いけど倒せばレアアイテムが出るのね、ありがと! 薬借りるね!」


「え、やる気満々ですかなーー!? やめた方がいいですぞー! 正気の沙汰じゃない自殺行為ですぞー! あとどさくさ紛れに商品を使わないでくだされーー!」


「商品はツケといて!」


 そうだね。まさしく死にたがりの所業。

 だけど今はこれを試したくて仕方ない!


「出でよ電撃! ブリッツ!」


 一息に薬を飲みほした私は魔法を発動させ、迫るマジックポットに杖を向ける!


「だからその程度の魔法では……!」


 電撃の矢はマジックポットのツボに命中……したけど突進が止まらない! 


「ダメです! 悲しいですがお嬢さん程度の魔力、初期魔法の一発や二発ではたいして効きませぬ!」


「ヒーーッヒッヒ!」


 割と失礼だな!

 いいですよわかってましたよ!

 次、特攻してくる敵をどうするか!

 私は敏捷に振ってないから攻撃を見た瞬間に逃げるくらいじゃないと間に合わない!

 だからここはHPで受ける……!


「【スーサイド】、オン!」


 だけどそれは、ただただ食らうってわけじゃあないけどね!


「ブリッツ! ブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツーーー!!」


「な、なななんとーー!? クールタイムを無視して連続詠唱ですと!?」


「ヒーー!?」


 これにはマルジンさんも、マジックポットも驚愕!

 クールタイムってのがさっぱりだけど、私でもこのスキル本当に頭おかしいってわかるもんね!




 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【スーサイド】

 ユーズスキル。

 発動中、魔法およびスキル使用時のMP消費をHP消費に切り替え、クールタイムを減少させる。


 取得条件:一回の戦闘でHPが半分以下になるまで相手から通常ダメージ、スキルダメージを受け、更に自傷ダメージを受ける。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 レベル20まであげてようやく100ポイントボーナスなのにHPをめっちゃめちゃに削るスキル!


 正直このスキルを使おうって輩はまぬけか異常者!


 でも悲しいことに私がそれだ! わざわざスタミナに極振ったまぬけにして、このスキルを最大限使いこなせる資格を得てしまった異常者!


「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃーー!!」


 けど私は一向にかまわない! なんとも思わない!

 今のこの姿を見て笑われようと!

 この先これのせいで何べん泥水をすする羽目になろうと!


 私の夢がかなうんだったら! 私は―――!!


「私は、死にたがり(スーサイド)になってやるーーーー!!!」


「ヒギャアーーッ!」


 絶叫とともに繰り出した電撃が、弾幕を浴びて弱り切っていたマジックポットに直撃。

 小人はそのまま掻き消え、後にはツボだけが残された……!

 って、ことは?




 ━━━━━━YOU WIN!━━━━━━


 モンスターの討伐成功!

 レベル差ボーナス+20%!

 レアモンスター討伐ボーナス+30%!

 ノーダメージボーナス+50%!


 EXPを2500獲得!


 レベルが13にアップ!

 ステータスポイント55を獲得!


 条件「ソロバトルでダメージを受けずに勝利する」達成! 【風読み】を獲得!

 条件「1回の戦闘で雷属性魔法を10回以上唱える」達成! 【十雷】を獲得!


 リーズの中で新たなる力が目覚めた!


 錬金術【一の解・理解】習得!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 勝利を告げるウインドウが見えた瞬間、私は確信した。

 いける! これならどこへでも……未踏の地だって、私は戦える!


「やった、やった、やったよーーー! あとは……れんきんじゅつで……」


 あれ、なんだろう?

 なんか頭が重くてぐわんとする。スタミナ十分で疲れてなんかないのに、ダメだ、全然力が入らない。

 そしてそのヨレた勢いでしりもちをついてしまった。


「お嬢さん! ご無事ですかな!」


「マルジンさん……」


「スーサイドで魔法を撃ち続けたせいでしょうな……いやはや、ここまでパワフルなお嬢さんは見たことがありません。 立てますかな」


「ふへ……すみませーん、たてませーん」


「やれやれ仕方ありません、失礼ながらお運びいたしますので、馬車の中で少しお休みなされ。 城下町のリヒターゼンまでもう少しですぞ」


 正直、どんな返事をしたか覚えてない。

 けどマルジンさんの着てる服を改めてみると、なんか胸のあたりにきらきら光る何かがあって、


「そざい!」


「わあっ……こりゃ! やめっ、やめんか!!」


 ちょっとした取り合いをしたのだけは覚えてる。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 装備【C・クリスタル】獲得!


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「勝手にとるんじゃありません! 人のものをとったらドロボウですぞー!」



やべーやつ、黄昏に目覚める……(((;゜Д゜))))))


次回は掲示板回!


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[良い点] VR物らしい展開。 [一言] TwitterのRTから。 面白かったです。
[良い点] バイタリティに満ち溢れる可愛い女の子が主人公で余は満足じゃ(皇帝) いやはや、テンポと文章がいいですね。さくさく読んで、物語を吸収できます。視点人物の個性溢れるチャキチャキした一人称も心地…
[良い点] スタミナ極ぶりは笑いました。三食もやしで頑張る貧乏少女……。明るくて素敵です。 [一言] 連載頑張ってください。続きも楽しいに読もうと思います。
2021/01/28 20:44 退会済み
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