厄介者がゆく地下水道④! ボスバトル! 疾風迅雷のWキック!?
シオンから聞いた情報で作戦を組み立てた私たちは、それぞれが得意とする場所で待ち伏せをはかることにした。
なめし革やらを作るのに素材をほぼ使い切って、アイテムを持ち合わせてないのが悔やまれるけど、たらればをどうこう考えてる時間はない!
大丈夫、作戦は絶対に成功する! 私が隠れてる場所は見つかりっこないもんね。
気分はさながら幼稚園児のかくれんぼ。見つかったらいけないけど、さっさと来てほしい!
『Alert! Alert! 侵入者、発見――!』
その時だ。
私たちが通ってきた方からがりがりと音を立てながら、何かが現れた。
そいつの目線の先には自らの縄張りに入って、荒らしまわる侵入者のシオンがいる。
「やっべー! 離れなきゃー!」
ひっどい棒演技に笑いそうになるけど、我慢我慢。
敵の姿を確認次第、シオンにはそこを右に向かって離れるように言ってある。
今の私や、左の曲がり角にいるおぼろちゃんにはわからないけど、パーティに入っているシオンの視界にそいつが現れれば、自然と――
━━━━━━━BOSS━━━━━━━━
悪夢工房 パンドラボックスγ
属性 土
Lv 22
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『コード12-5ノ条件合致、敵生命体1名ヲ排除スル――!』
ビンゴ!
やっぱり出た、ボスと遭遇したことを示すスケスケウインドウ!
それと同時にボスバトルスタート! この地下水道の親玉はシオンをしとめるためにまっすぐそっちに向かっていき、そして……
私の上を通り過ぎた!
「うらーーー!」
その影を見届けた私は、下水の中からざばりと勢いよく起き上がった!
もうお分かりだけど思うけど、私の待ち伏せ場所は下水の中!
スタミナに極振ったおかげで、私は10分くらい息を止めてても窒息でHPを減らすことはないのだ! 振った分だけHPも伸びてるから、実際にはもっと生きてられる!
『背後ヨリ生命反応――』
そんで目の前にはドームみたいないで立ちから子供を握りつぶせそうなくらい巨大なツメのついたアームを生やしてる、なんとも奇妙なフォルムをしたボスモンスターの背中が。
アームを水路の端にある岸に乗せ、その力だけでシャカシャカと動いていた! うん、シオンの言った通り不気味でキモイ!
「二人とも、作戦通りいくわよ! 【エナジーキャノン】!」
というわけで吹っ飛べ!!
パンドラボックスが振り返るより先に私の杖の先から光弾が飛び出し、こいつの横っ面にヒットして爆発!
『強襲! 強襲! 直チニ再度計測! 敵生命体2!』
そんな機械音を鳴らしながら爆風で吹っ飛んだパンドラボックスは、左右に道が伸びるT字路のどん詰まりに着地!
そこめがけてシオンが動きだす!
「いくぜ!」
走りだした途端、地面を削りながら滑走し始めた!
パッシブスキル【スリップランナー】! 発動中止まれなくなる代わりに地面を走るより速く滑る効果を持つ、この事件の発端になったスキルの片割れ!
『標的ヲ確認! 捕縛スル!』
ターゲットが向かってくることを探知したパンドラボックスはアームを伸ばしてシオンを捕まえようと試みる――けど、それが届くかって時もう1つのへんてこスキルが発動し、巨大アームははじかれた!
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スタイル【暴走機関車】発動!
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このスタイルはダッシュしてる最中攻撃判定を作り、当たったモノを問答無用で弾き飛ばす!
これが街の地面という地面を削り、壁という壁を破壊せしめたカラクリ!
スリップランナーと暴走機関車のコンボ!
私もおぼろちゃんもこれには「なんてはた迷惑な!」と頭を抱えたものだ。
途中で止まれないなんてデメリットがあるせいで、ひとたび走れば誰にも止められないまま前にあるものへ特攻するなんていう、文字通りの暴走機関車を体現しちゃってるのだ!
「うまくいってよね……! これで一緒にすっ飛んだら、対処のしようがないもん……」
だからこの作戦で一番気がかりなのは、この後シオンがうまく止まるか。
もし止まらなかったらこのままボスと一緒に壁を突き破って端まで行って、見うしなっちゃうもんね……
この辺について確証がないことをシオンに伝えて、そのうえでシオンはうなずいてくれた。
「そん時はまた体張って止めてくれよな!」なんて言いながら。
『敵生命体攻撃態勢! 速やかに――』
「遅すぎだぜ! そんなんでおれを捕まえようとしてたのかよ!」
アームを戻そうとするパンドラボックスに肉薄したシオンは小さくジャンプし、そのまま――
「ぶちかませ、シオン!」
その顔面を、両足で蹴り飛ばした!
勢いの乗った跳び蹴りをくらわされたパンドラボックスはそのまま角まで突き飛ばされ、壁に直撃した!
この辺の是非はまあいい! どう転んだって、シオンが無事じゃなきゃ意味がないもの。
問題のシオンは蹴り飛ばしたあと……支えなんてないから床にあおむけで不時着していた。
「止まれた……? 止まれた! 止まれたぜ!!」
予想通りとは言え、喜んでるシオンを見てほっと胸をなでおろす。
スリップランナーも暴走機関車も要は地面を走るのがトリガーになるスキルだ。
走っている最中に効果が発生するなら、両足が地面を離れさえすればそこで効果時間は終了する!
そーだ!
もしほかの人がこのスキルに目覚めた時のために、掲示板にでも書いときましょ。
ついでに滑らないようにするためのアイテムを私が売ってるって書けば、うっかりスキルを手に入れちゃった人たちが買い付けに来るかも! いくらふんだくってやろうかしら?
「ははっ見たかよリーズ! 憲兵が手も足も出なかった奴をおれがぶっ飛ばしちまったぜ!」
とっと、いけない!
まだボスバトルは終わってないんだった。
シオンの奴はものの見事にチョーシのってるけどさ、腐ってもボスなんだから……
『ルルルルルルル!!!!』
パンドラボックスはいまだ息災!
ガレキから起き上がり、アームを振り上げてシオンに飛び掛かった!
「わーーーーー!! まだ動けんのかよコイツーーーー!!」
……シオンったら今度は演技ナシで絶叫してるけど、これも予定通りなの忘れてるわよねたぶん。
「おぼろちゃん!」
「はい!」
左の曲がり角で【気配遮断】をしながら隠れていた、おぼろちゃんが返事とともに動き出した。
曲がった先の角から助走をつけて飛び上がり、刀の柄に手をかける居合の構えをとる!
『ルル!? 生命反応、3人目!!?』
その剣先が狙うのはモチロン本体じゃない。おぼろちゃんだって街じゃ厄介者だもん、刀が刃こぼれでもして修理とかたまったもんじゃない。
だから狙うのはシオンを叩き潰さんと大きく振り上げられたアーム!
「――そこです!」
動く相手を背後から斬り続けてきたおぼろちゃんに、それぐらいなんてことはない!
果たして振り上げられた右腕はすれ違いざまに斬り落とされ、水路の中に沈んだ!
そしてコマみたいに回転しながら刀を鞘に戻し、
「【斬波・濡烏】!」
シオンとの間に着地した後すぐさま抜刀!
地を這うように進む黒い斬撃が、支えになっていたもう片方のアームを破壊した!
「シオン、大丈夫?」
パンドラボックスが両方の支えを失ったところで、私はようやく岸にたどり着く。
「おう、ぴんぴんしてるぜ! おぼろもありがとな!」
「これくらいならばお安い御用です!」
さて、と。
あとに残ったのは両腕をもがれたこいつなわけだけども。
「ところでよ、リーズ」
痛い!
いうが早いか、強引に首を傾げさせたシオンはそのまま私に耳打ちする。
ほん。
ほんほん
ほーんほんほん。
「いいわねそれ! 面白そう!」
「だろー?」
「待ってください! 今の一幕で何を!?」
「まあ見てなって、いくぜー!!」
シオンの合図で私たちは一気に飛び出した。
「【トペ・スイシーダ】!」
「【スリップランナー】!」
『両アーム損失! 驚異度ナオモ上昇中! 撤退ヲ――』
迫ってくる私たちに恐れでも抱いたのか、ぴょんぴょんと跳ねながら急いで後退するパンドラボックス!
このまま逃したらまた振り出しに戻りかねない!
「おらーーーーーーーー!」
だけどシオン発案のこのダブルキックは奴が角に届くより先に、その顔面へと的確に突き刺さった!
勢いよく蹴り飛ばされたパンドラボックスは自らの体で崩した壁の方へ吹き飛ばされていき、瓦礫の山を完全に破壊!
その後なおも勢いは止まらずに、その後ろもそのまた後ろの壁も崩れるような音を響かせ、その後完全に沈黙した――。
━━━━━━Congretulation!━━━━━━
ダンジョンボスモンスター『悪夢工房 パンドラボックスγ』の討伐成功!
MVP:リーズ 経験値50%アップ!
ベストダメージ:おぼろ 経験値30%アップ!
ラストアタック:シオン 経験値20%アップ!
EXPを大量に獲得!
リーズはレベル25にアップ!
おぼろはレベル20にアップ!
シオンはレベル18にアップ!
ステータスポイント10を獲得!
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