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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第三章 ビュンビュン! 神風盗賊ブレーメン!?
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厄介者がゆく地下水道③! 3人寄って厄介な知恵?

 

「ちっくしょー! あのおっさんの言ってた【秘密の隠れ家】どこだってんだよー!」


 ぼさぼさでところどころハネている栗毛に、黄色の目。

 体の大半が下水の中に飲み込まれてるから服は真っ黒いフードがついていることくらいしか判断できない。

 背丈はせいぜい傍らで刀を向けるおぼろちゃんと同じくらいのハズ。


「……いくつか聞きたいことがあります」


 そんな少年、シオンに語り掛けるおぼろちゃんの声は重い。

 まあ仕方ない。壁をぶち抜いてきたことといい、その奥から続いている何かをひきずったような直線といい、いったいどこからそんな馬力が出るのかわからないけど、この子が街を荒らしまわったブレーメンその人なのは間違いない。


「なんだよ! まさかおれを追ってるやつらの仲間か!?」


 シオンは目を開きながら私たちを見て、声を荒げる。

 そうよ、おぼろちゃんの言う通り。

 こいつから、聞かなきゃいけないことが山ほどある――


「誰の仲間かはわかりかねますが、商人の方に頼まれたのです。ブレーメンなる盗賊から盗まれた【静寂のブローチ】をとり返してほしい、と」


「はん、だとしたらはずれだぜ! なんたってここにはおれ以外いねーからな! おれが盗んでねーんだから、ブローチを盗んだ奴は別のトコにいるはずだぜ!」


 言いながらシオンはざぶりと大きく音を立てて立ち上がる。

 急いでここから立ち去りたい、とでもいうようにだ。


「待ちなさい! 聞きたいことがあるからまだ――」


「うるせーばばあ! 今それどころじゃねえんだよ! 急がねえとアイツに追いつかれちまう! その前に秘密の隠れ家って場所に行ってやり過ごさねーといけねーんだ!」


 ぶちん☆


 ほう。

 ほう。

 ほうほう。

 ばばあ。

 まだ15のうら若きオトメにたいし、ばばあ。

 ……いいどきょうだなクソガキ。


「【トペ・スイシーダ】あああ!!」


 背を向けたところに私は渾身のクロスチョップが決まり、クソガキはまたも下水にダイブした!

 そこから私はクソガキの胸ぐらをつかんで持ち上げ……なんで筋力ないのにつかみあげれるんだって? 気合いと根性!!


「げほっ……! 何すんだこの……」


「なんで私を見てばばあといったか今すぐ直ちに答えろおらー! さもないと電気浴びせまくって――」


「リーズさん違います!」


「――はっ!」


 ……こほん。

 いけないいけない。私ったら我を忘れそうだったわ。

 こんなことでいちいちかんしゃく起こしてたらおぼろちゃんにさえ蛮族とか言われちゃう。

 私はあくまでおねーさん。お転婆でドジっ子だけど物事に必死になれる素敵なおねーさんだから。


「……まだ聞きたいことがたくさんあるの。 まずはそれを確認してから処遇を決めるわ」


 とりあえず頭のよさそうな動きをしなきゃ。

 一呼吸おいてから、目の前のクソガキ……シオンに語り掛ける。

 モチ、つかんだままの胸ぐらを下ろしてね。


「処遇ってなんだよ!? おれはただ道を走ってただけだぞ!」


「走ってただけでこんな跡がつくわけないでしょう」


「知らねーよ! 好きに走ってたら変なスキルとスタイルを覚えて、走ったら滑るようになっちまって止まんなくなったんだよ! そんでいろんなモンにあたっちまって……追いかけられて……」


 シオンの声はしゃべり続けるにつれてどんどん小さくなる。

 知らない、っていうのは多分間違いない。

 このせっかちそうなタチからして、多分説明も読まずに出てきたスキルを使ったのだろう。

 私もそういうところあるし。

 おぼろちゃんのいった通り、ふつうなら道が削れるのも、壁に穴が開くのもありえないことだけど、このゲームは私のをはじめ変なスキルばっかりだから、もしかしたらこういうこともあるのかもしれない。


「そんでいろいろあってここに逃げ込んだら、やべーのと出くわしておれを追ってきた連中全員そいつに追いはらわれちまったんだ! 1人や2人じゃ歯が立たねーし、あんたらも逃げた方がいいぜ!」


 なるほど。

 そいつから逃げ回っているせいで地下水道がこんなにボロボロなのか。

 街中をボロボロにするようなスキルたちが今こうして身を守るのに役に立つなんて、皮肉なもんだわ。


「もしかしてこれがウワサの魔を寄せるって話でしょうか……?」


 こっちまで歩いてきたおぼろちゃんはつぶやくように聞いてくる。

 ウワサ通りなら今もこの子を探し回ってるはずだし、そいつを倒して安全を確保しないことにはブローチのありかまで話が進みそうにないわね。

 こいつを連れてとっとと離脱? 絶対あり得ない!

 ここまで深入りしたんだから、私たちは全部を解き明かす義務ってもんがあるしね!

 よし、決めた!


「そんじゃあおれは――」


「シオン! できうる限りでいいから、あなたのステータスとそいつのことを教えて!」


 その場を後にしようとしたシオンの方をつかんで止めさせる。


「はあ!? なんで!」


「1人や2人じゃ倒せないっていうなら、私とあなたとおぼろちゃん、3人だったら勝てるんじゃない?」


「アホか! 1人や2人ってのはコトバのアヤってやつで、3人でどうにもなるかよ!」


 確かに。

 シオンに向かっていった追手が何人いたかは知らないけど、まとめて追い返しちゃってるわけだし気休めにしかならない。

 けどさ!


「そのやべー奴が襲ってくるってわかってるんなら、知恵を出し合えば何とかなるかもしれないじゃない! 3人寄らば……ええと」


「文殊の知恵ですか?」


「そうそれ! ナイスおぼろちゃん頭イイ!」


「い、いえそんなことは」ってわたわた否定してるのもかわいい!

 アシストえらいぞーって頭なでてあげたいけど、今は我慢!


「……とまあこんな感じにみんなでフォローし合えるような作戦を立ててやっちゃいましょうよ!」


「だけどよ……おれレベルも低いし、足並みそろうかわかんねーし、走ってばっかで戦ったこともロクにねーんだ……あんたみたいに自信満々にはなれねーよ……」


 シオンは言いながらうつむいてしまった。

 ええい、こいつもさっきのおぼろちゃんみたいなこと言いよってからに!

 なんだ!? 最近の子はナイーブなのか!?

 あたしがこのくらいの頃は……勉強ばっかやってたなそういや……堅っ苦しいテーブルマナーだの、言葉遣いだの。

 何やっても文句言われるのが嫌で仕方なくて、仕事で疲れてるってのにパパやママに泣いて甘えてたっけ。

 そんで教えられたことを覚えられたかっていうとそんなことなくて、毎日の復習で前にやったこと聞かれたら、あってるかどうか自信が全然なかった。

 今なんで自信あるんだろって考えるとあの頃、なかったものが今ここにあるからかな?


「自信なんて誰も持ってないわよ? 何にしろ未知の相手だもん」


「じゃあ、どうしてそんな不安がなさそうなんだ? おれは厄介者だぜ? 走るだけでいろんなモンぶっ壊して、人だって跳ね飛ばしちまうんだ! ぶっ壊してもぶっ壊しても足が止まらなくて、ショージキこえーよ! 今もそれのせいで、立てた作戦もぶっ壊しちまわねーかって思ってるのに」


「そんなもの、ここに3人いるからよ! 頼れる人がいるってだけで、怖いって感情も分けて減らせるし、アイデアも何倍も出るんだから! だからさシオン……あなたも一緒に来てくれない? 私のためじゃなくていい、あなたのために!」


 ……我ながらちょっとクサいか?

 まあいいや! 情報がある前提の討伐なわけだし、いてもらわないと困る!

 シオンは呆けた顔で私を見てるけど……これ、私の話聞いてなかったとかないわよね?

 もしそうだったらハズいわよ!?


「……おれは――」


 良かった、ちゃんと反応してくれた。

 うつむき加減だった顔を持ち上げて、こっちを見上げながら明るく言うのだ。


「おれはジョーダン抜きではえーぞ、遅すぎたらおいてくぜ? ついてこれっか?」


「ふふん、どんな時だってそばにいてやるわ! むしろあんたがついてきなさい!」


 にひひと笑いながら繰り出された挑発みたいな言葉に、私も負けじと切り返してやる。

 うん、いい顔だ! やっぱ小さい子はこうじゃないとね!

 んじゃあ早速作戦会議――と思ったら、


「私もいますからね! 忘れないでいただきたく!」


 と後ろからぽすっともたれかかってきた。

 忘れてないっておぼろちゃん。

 3人寄らば文殊の知恵だもんね! 文殊って言葉よくわかんないけど!


「よーし、『地下のやべーやつ討伐作戦』開始よー!」


 えいえい、の声に合わせて私たちはいっせいに拳を上げた!


「おーーーーー!!」


次回、ボス攻略!

シオンを追い回す敵とは!?


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