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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第二章 グルグル! 混ざりあえ、強欲の灰被り姫!
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呉越同舟ボスバトル③! 逆襲の火龍!

 

 アルがやってきたのは長いような短いような、そんな死闘が終わって、私たちが一息ついたころだった。


「はっ、ぜっ……ようやくついた……」


「遅いですわよ【従者】アルフォンス! 淑女を守れない護衛がいますか!」


 もはやフラフラなアルに追い打ちをかけるようにファラは叱り飛ばす。


「ンなこと言うなよ……ここにきてからずっと走ってばっかで、そろそろ死んじまうよ……」


 熱に浮かされたようにしゃべりだすアルのHPゲージを見てみれば、ろくに戦っていないのにもう残り僅か。

【焦熱】を防ぐリキッドウェアの効果が切れてなお、一刻も早く駆け付けようときてくれたんだ。


「だいたい淑女なんてタマかお前たち……」


 それはうれしいけども。

 女の子に対してそんな言い草をしやがるので、HPに影響が出ない程度にドゥクシと小突いてやった。まったく、生きるも死ぬも私に握られてるの分かってないでしょ。

 ……そうだ!

 そういう奴にはお仕置きだ。


「【凍結結晶】が今もうろくに残ってないのよねー、ちょーど一人分しかないのよ」


「い!?」


「これは制作者の私に使っちゃおうかなー! せっかくボスも倒して勝利のファンファーレも待つばかりなのにぃ、そんなとこで離脱しちゃうのはかわいそうよねぇーー!」


「待った待った、俺が悪かったよ! リーズさんは偉大なる錬金術士で天使です!」


「よろしい! ではしかと受け取るように!」


 ふふん。アイテム持ちに逆らうとこうなるのよ!

 アルを言い負かして気分がいい私は、アイテムボックスからお望みの物を出してあげる。


「……さてお二方!」


 そんな時、やり取りをじっと静観していたファラが口を開いた。

 張りのある声に私たちはそろって向き直る。


「うすら寒い茶番はここまでにいたしましょう? この火山攻略レースの勝者を決めなければ!」


 ……まあそうだよね。

 イグニールの登場で仕方なく共闘したけど、このままレースの結果をうやむやにできないもん……でも――


「……でもどうするんだ?」


 ヒールボトルを飲みながら、アルが口を開いた。


「俺の見た限りお前ら二人同時に社に突っ込んだんだけど、勝敗の確認できなくないか?」


「おーっほっほ! それならば見てくださっている視聴者に聞けばよいことですわ」


「いやそれ、アルの動画も含めてあんたサイドの人間ばっかりじゃん! 最後の最後でズルする気?」


「……ではどのように決めますの? ほかにこの事態を終わらせるに足る案はありまして?」


 それを言われてしまうと悩ましい。

 ファラが痺れを切らして作り出した大砲によって、とんだ珍事が起こってしまったものだ。

 審判代わりの映像も、視聴者も当てにならないこの状況を、もし打破できる答えが出せるなら――

 しかし、考えあぐねていたその時だ。

 またも地面が大きく揺れだした!


「なんですの!?」


「アル、まさか――」


「【折れし龍の逆鱗(げきりん)】……!? やべぇ、全員離れろ!!」


 アルの絶叫とともに、私たちはフィールドの端に逃れる。

 すると私たちがいた場所の岩盤を貫き――!


「ジャアアアアアアア!!!!」


 マグマとともにイグニールが飛び出してきたのだ!

 赤黒いウロコは更に赤く脈打って、全身をどろりと本物のマグマが覆う! 本当に全身マグマと化した灼熱の龍!

 さんざんブリッツを当てたのになんて執念深い! 確かに龍ってしぶとい生き物だけどさ!


「イグニール……! いい加減しつこいですわよ!?」


 さすがにこれにはファラも驚いている。

 けれどすぐに本を開いて臨戦態勢を取り、呪文を唱えだした。

 アルも、私もそれに続く!


「【アクアスライサー】!」


「【ブレイドインパルス】!」


「【ブリッツ】!」


「シャアアーー!」


 けれどイグニールは長い体をくねらせてそれらを巧みにかわし、私たちとはてんで違う方向へ突っ込み、破壊して地面に入っていった!?


「へ? なん――」


「こっちに来るぞ!」


 考える暇もない。

 地面を揺らしてしばし。その後また私の下の地面を割って頭を突き出した!


「のわっ!」


「アクア――くっ!」


 でてきたところをファラが狙うけど――すぐさま離れた。

 そこからすぐに地面が割れ、しっぽが飛び出した! 【危険予知】であれがわかったのか!


「なんですのさっきから!? これでは魔法が使えませんわ!」


 イグニールは次に全身を持ち上げ、そのまましっぽから頭までにある地面をえぐり取る!

 まるでヤケを起こしたように暴れ狂う巨体で、フィールドが削られ続ける!

 そして、削られたところから徐々にマグマが押し寄せてきて……って、そんなことを延々繰り返したら!


「大変、このままだとフィールドがマグマに沈んじゃう!」


 これが狙いか!

 これほどの巨体と力、それにこのマグマに囲まれたフィールドなら確かにそういう判断に至るAIがあっても不思議じゃない……じゃないけど!


「ふざけてますの!? まともに勝てないなら、何もかも壊せば勝者ナシ! ってことですわよね!?」


「シャアアアアアーーー!!」


 気持ちを代弁してくれたファラをつぶさんとイグニールのしっぽが迫る!

 当然、当たればただじゃすまされないしファラは逃れようとするんだけど、足元の悪さでたたらを踏んでしまった!


「剣よ()()示せ! 【ノクターンエッジ】!」


 迫るしっぽに大きく伸びたアルの突きがあたり、わずかにそれた!

 その隙にファラはまだ安全な地面に飛び移る!


「お返しですわ! 【ヴァッサーブルーム】!」


 そして振り向きざまに激流を呼び出して、勢いそのままに切りかかるけど、イグニールはさっさと上空に避難!

 そこから今度はアルに飛び掛かった!


「なっ――私と戦いなさーい!」


 あれほど私に執着していたのに、一切こっちに目もくれず攻撃したプレイヤーばっかり狙ってる!

 ターゲット集中が効いてない……! なんで!?


「こいつ……もしかしなくても【トランス】か!?」


「ですわね! なんてタチの悪い……さっきのスキルがスイッチですわね!」


 アルとファラのやり取りが意味するところは理解できた! 伊達にいろいろ調べてないからね!

 今のイグニールは暴走状態! ただ自分に危害を与えたものにのみ反応して、蹂躙するっていう迷惑極まりない状態!


「ファラ、なんか対策はしてないのか!」


「ここまでしぶといという話は聞いてませんわ! ボスに関しては、火炎弾と火炎放射を使い分けることしかわかっておりませなんだ!」


「くっそ、時間がないってのに!」


 イグニールがのたうつたびにフィールドはどんどん壊れて行き、マグマの浸食もまた進んでいく。

 お互い【危険予知】でイグニールの攻撃をかわしているけど、それもいつまでもつかわからない。逃げ場のない足場にわたってしまったら最後、その巨体をかわすすべはないんだもの。

 私は攻撃してないから今は安全だけど、このままあの二人がなぶり殺しになっていく様を見たくない。

 でもどうしたらいい。

 残ってるアイテムはツボとパンのみ。 どっちも役に立たない。

 今注意がそれてて作戦を考える絶好の機会なのに、私じゃそれを活かせない――いや!


 いかせ、死んでもいかせ! 逃げるな! 悲観するな! ためらうな!

 考えろ、視野を広くして探すんだ、落ちてないものなんてないんだから!


「【簡易調合】……そうだ! アル、ファラ! もう少し時間を稼いで!」


「はあ……次はどんなトンチキが始まるのやら」


「確かにあれは目が離せませんわね……!」


「おいおい見てたら死ぬぞ!?」


「比喩ですわよっ!」


 なんか呆れたような声がするけど無視!

 私だってこんなところで……!



「【二の解・分解】! ゲヌークの汚染水をツボと産業廃棄物に!」



 ――調合するなんて思いもしない!!



次回、ボス戦終了――そして?


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