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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第二章 グルグル! 混ざりあえ、強欲の灰被り姫!
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運命の分かれ道?

 

「はあっ、はあっ――」


 ファラとの距離を少しでも稼ぐため、私たちは洞穴内部をひた走る。

 リヒターゼンを出てからここまでろくに休んでないし、私でも疲れを隠せなくなってきた!

 アルなんかもっとヤバい。


 遅い私に合わせてペースを落としてくれたと思ってたけど、どんどん落ちていって今じゃゼーゼー言いながら私の後ろを走ってる。


「アル! これ食べて!」


「悪い!」


 こういう時は秘密兵器その4の出番だ。

 いろいろなきのみを砕いてパンと混ぜた【コンバットレーション】。


 減ったHPとスタミナを回復させるほか、お腹にたまる特性でしばらくの間スタミナ減少を抑えてくれる栄養食!


「ぶーーーー!」


 なんだけど、こいつ噛んだとたんに噴き出しやがった!


「こら吐き出すなー!」


「ごめん、苦いし臭くて……お前これに何入れた?」


 軽くむせながらアルが問いかけてくる。

 心なしか苦々しい目を向けながら。


「いろいろ入れたわよー! くり、イモ、道端のブルーベリー、どんぐり、木から落ちた臭いきのみ、あと……」


「……他にないか?」


「ないわよ!」


「食べるしか、ないのか……!」


 なんでパンを見つめながらそんな絞り出すような声出すのよー!

 リアルのパンだってくるみとか入ってるのあるじゃん! プロが作ったわけでもないんだからろくな味しないんだし、ちょっとした違いくらい変わんないでしょ!


 それでもまだあきらめがつかないのかアルはクエルダケマシクエルダケマシ……と祈り始めた。はよ食え!


「そんなことより、この先がどうなってるかってわからない? 一度入ったことあるんでしょ」


「もご……たしか二手に道が分かれてる」


「分かれ道か……アルの時はどっちに行ったの?」


「右。 リザードマン二匹とやりあったのを覚えてる……これがすばしっこいうえにステージも広くてな」


「中ボスエリア、ね……」


 きっと左も同じく中ボスエリアか、それと同じくらいの何かだろうなあとは思う。

 ここで絶対にあっちゃいけないのは行った先のボス戦で苦戦してファラに追いつかれること。


 しょっぱなから攻撃してきたあの女のことだ、傷ついてると知れれば嬉々としてこっちを狙ってくるに決まってる!


「見えてきたぞ! どっちに行く!?」


 ここが運命の分かれ道……とするならすばしっこいリザードマンは却下ね!

 広いステージもふくめて私と相性が悪いもん。


「左! 左に行くわよ、アル!」




『ファラ様―!!』

『うるっせえ!』

『スキルを乱射できるスタイルなんかな? 【放蕩主義】とか』

『<それの条件って一度に50万エン使うとかそんなんじゃなかったか? 多分ベータ組じゃないんだろ? とれんのか?』

『それに最後の直撃でファラ様のHP4分の1くらい減ってたぞ……? こいつこっちに向かってしゃべらないしヤバいぜ……』

『いやあ、ありゃファラが悪い。 のっけからあんなことされりゃあ、いつまた襲撃されるか気が気じゃねえよ』

『あ、やべ米するとこ間違えた』




 流れてくるコメントを流し見しながら、左側の曲がりくねった道を進んでいく。

 やべーやつ扱いされるのはちょっと心外だけど、それ以上に参考になることも多い。


 それだけ私よりいろいろ知っている人がいるんだ、と感心させられる。


「【放蕩主義】なんて、ホント何でもあるのね……」


「VRMMOってのは本人の性格や信条がゲームに現れるようデザインされてるのが多いからな……まあ、ここまでそれを前に出すゲームってのは少ないけど」


「プレイした本人のクセをそのままスキルにしちゃうんだもんね……【臆病者】とか」


「ありゃ冤罪だ! 俺のクリエイトしたじいさんが『生産職はいいぞアルフォンスぅ……』とかくどくど言うから!」


「おじいさんの言葉くらいありがたく受けときなさいよ、錬金術はいいわよ」


「お前を見たらやる気がなくなるわ!」


「どーゆー意味よ!」


 コメントを見ても『せやな』だの『ふつーに不遇だもんな』とか『完全同意』とかこいつら本当に好き勝手言いやがって!


「あんたたち口を開けば不遇不遇って気合いが足りないのよ! どんな時も気合いと頭を利かしてやってけば、どんな職業でもやってけるで (しょうが!)


 ん?

 なんだか最後、急に声が小さくなったような……


「―――――」


 アルもだ。

 なんだか慌てた様子で、あたりを見回してる。

 何よ、もしかしてここにきてバグでも起きたわけじゃないわよね。


 そう思って一歩踏み出すとぞぶり、と明らかに地面じゃない感触が足からしてきた。

 大きくよろめいた私を、アルがつかんで支える。

 曲がりくねった道を抜けたと思ったら、今度は真っ暗闇の部屋。


 足元はなんだか沼みたいにドロドロでやたら歩きにくく、声はやたらと聴きにくい! あとついでにクサい!


「急に何よ、ここ!」


「リーズ、ここやべえぞ! 急いで戻った方が」


「戻る!? 私は前しか向かないって言ってるでしょうが!」


「無理だ! 部屋中から矢印がこっちに伸びてる! ここはきっと―――」


 聞こえるような大声で問答を始めたのがまずかったか。

 もしくは最初から、こうなる仕様だったのか。


「キー!!」


 甲高く長い鳴き声がしたかと思ったら、壁中から一斉におんなじ声が大合唱を始めた!

 そして壁は――いや、コウモリのモンスター【キース】はどんどんはがれていき、こちらに向かって次々ととびかかってきた!


 ――モンスターハウス。

 大量のモンスターが巣くうこの名前を知ったのは、この騒動の後のこと。



モンスターハウスに迷い込んだ二人の運命はいかに!?


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― 新着の感想 ―
[一言] 「ありゃ免罪だ」 ……冤罪の間違いですかね? 読み途中なんで、とりあえず誤字っぽいのだけ報告します。
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