第1話 ごめんなさい
俺の名前はアキオ。プロ野球選手を夢見る小学生だ。勉強は苦手でスポーツも駄目だけど、とにかく頑張って学校に通っている。唯一の自慢は風邪を引かないことぐらいかな。毎日毎日新しい発見の連続で楽しい生活を送っているよ。今日なんか目玉が飛び出すぐらいのサプライズがあって興奮しまくったよ。
朝は珍しく寝坊しちゃってランドセル片手に慌てて家を飛び出したんだ。それからいつもの通学路を全速力で走っていたら、反対側から人影が現れた。俺は止まろとしたんだけど、間に合わずにその人とぶつかってしまった。顔と顔がごっつんこして尻もち着いて道端に座っちゃった。
「ごめんなさい」
謝りながらその人が無事かどうか確認すると、まず最初にスカートが目線に入ったよ。白いパンツが丸見えでビックリしたな。でもそれより驚いたのは、彼女が食パンを咥えていた事実だね。だって彼女、首から下は人間なのに、顔はエイリアンそのものなんだよ。映画で見たことある顔してたから思わず俺は指差して呟いたんだ。
「宇宙人だ!」
そう言ったら彼女は急に美少女の顔になって、何事もなかったかのように走り去って行った。頭をぶつけたから変な物が見えてしまったのかな。
「こうしちゃいられない」
学校に遅れると大変だ先生に怒られちゃう。俺は気を取り直して学校に向かった。授業の開始には何とか間に合って、自席で一息ついていると、担任の先生が現れたんだ。先生の後ろには、さっきの彼女が居た。むこうも俺の存在に気が付いたみたいで目が合ってしまう。
「新しい転校生を紹介する。彼女の名前はナツミだ。どうやら遠い異国から遥々来てくれたらしい。見ての通りかなりの美人なので、男子達はくれぐれも興奮し過ぎる事が無いように」
先生の声がいつもよりイケボだ。もしかしたら先生も、彼女の洗練された仕草と容姿に惹かれちゃったのかな。20代の若い教員だし、女性経験が少なそうな雰囲気してるから多分そうだよね。
「先生も興奮したらダメですよ!」
「貴様ッ! あまりにも無礼だぞ!」
周囲からドッと笑い声が沸く中、不適切な発言をした俺は先生にシバかれて暫く廊下に立っていた。これぐらいは日常茶飯事だから問題ない。それよりも驚くべきなのは、彼女がクラスメートの一員になった事だ。エイリアンみたいな顔してたのは気のせいだと思いたい。あんなに可愛い女の子が実は地球外生命体だったという落ちは勘弁願うよ。
「いつまで廊下に立っているんだ! さっさと自分の席に戻りたまえ!」
あれこれ考えてる内に一時間目が始まった。俺は急いで教室に戻ったんだけど……あれ、おかしいな。隣の席に転校生が座ってるぞ。隣に美人がいたら授業に集中できないよ!
結局俺は授業中、終始茹でダコみたいに顔が赤くなってた。この調子だと学校が終わるまで体がもたないよね。だから俺は思いきって彼女に話しかけたんだ。打ち解けるためにね。