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日本男児、総育メン計画。  作者: りんまる
因果の道理
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1



「おい、司。よく聞くんだ!」


「え…?!」


結婚式当日に父の田舎で住職をしている伯父さんに新郎控え室で呼び止められる。


「スミレさんの事は本当に愛しておるのか?」


「…何言ってるのおじさん?」


「だから愛しておるのか?!!」


「お、おお…。だから結婚するんだけど…。」


いきなりの質問で俺はただビックリして目をパチクリさせていたけど、袴をバッチリと身にまとった伯父さんは至って真剣な目つきで僕に聞いてくる。


しばらく時が止まってお互い見つめあっていたら、伯父さんの目が尋常じゃなく鋭くて、俺の額には汗が滲んできた。


ドンッ


と手に持っていた杖で伯父さんが床を鳴らした。


「それならば、子育てをしっかりと手伝うように。以上!」


そう言って満足したのかドスドスと廊下へ出て行ってしまった。


「…?!」


何がなんやら訳がわからなくて、呆然としていると


「そろそろお時間でございます。」


そう式場の係りの人が俺を呼びににきてくれた。


気を取り直してタキシードのジャケットを羽織りチャペルへ向かった。



厳かな雰囲気の中、牧師さんの立つ前でスミレを待った。


賛美歌が流れ始める。


ガチャ。


赤絨毯の奥の扉が開くと一気に光が入ってきて、少しだけ眩んだ目には2つのシルエットが見えた。


すぐに目が慣れて、白のウエディングドレスを纏った僕の可愛いお嫁さんとお義父さんが一歩ずつこちらに進んでくる。


彼女の表情はベールで隠れて見えないのが残念だ。


ゆっくりゆっくりとこちらに向かって来るにつれ、俺の緊張は高まっていた。


ゴクリと生唾を飲む。


ついに2人が俺の近くまで来て、俺は前に向き直り左脇を少しだけ広げた。


するとスミレがお義父さんの腕から離れて、俺の腕を掴んだ。


俺はただ真っ直ぐ前を見て、スミレを一歩一歩リードして歩いた。


正直緊張して変な歩き方になっていたかもしれない。


(練習した通り、練習した通り…)


何度も心の中でそう呟きながら、なんとか牧師の前までたどり着き胸をなでおろした。


「何時如何なる時も新郎、神田司はここにいる上野スミレを妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


「はい、誓います!」


俺は力強く言った。


「何時如何なる時も新婦、上野スミレはここにいる神田司を夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


「はい誓います。」


横からスミレの声が聞こえた。


「それでは誓いのキスを。」


俺の緊張は最高潮に達していた。


ぎこちなく横を向くと、スミレが少ししゃがんで下を向いて頭を差し出している。


若干震える手でベールをめくる。


スミレがゆっくりと顔を上げる…………


…!!!!!!!!!!!!!


顔を上げるとスミレじゃない…


さっき控え室で僕に説教をした伯父さんだ。


「ひぃ…!!」


とっさに後ろに仰け反って危うく倒れるところだったが、なんとか耐えた。


伯父さんがゆっくりと口を開く。


「だから子育ては手伝えって言ったのに…。」




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





ガバッ


起きると俺はベットの上にいた。


「ハァハァ…なんだ…夢か。」


ベットサイドの時計に目をやる。


7:50


それと同時に部屋の引き戸が開いた。


「神田さん、おはようございます。」


看護師が入って来る。


「どうかしましたか?」


「いや…ちょっと悪い夢を見て。」


「そうですか…なんだか顔色が悪いみたい。

朝食お持ちしたのですが食べられますか?」


「あ…そしたら冷たいお茶を頂けますか?」


「はい、じゃあ急いで取って来ます!」


看護師は朝食のトレイをベットサイドに置いて部屋を出て行った。


「ふぅ…。」


この夢にうなされるのは何度目だろう。


ついこの間も同じ夢を見たばかりだ…。


一体全体何で伯父さんが俺の元嫁に変わっちまうんだ。


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