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収穫

「おかえりなさい。大丈夫でしたか?」


 目を覚ますと、先程までの砂浜はなくなっており、祭壇の真ん中までクロードが様子を見に来ていた。


「大丈夫。平和だったわよ」


「それはなによりです。収穫はありましたか?」


「あった……と思うけど、確認するわ」


 カルナは不老不死の力をなくしたと言っていたが、本当かどうかまだ信じられない。

 確認のために、メリアは刀を引き抜くと、自分の腕を薄く切ってみる。


「痛っ!?」


 痛みを感じたのは何年ぶりだろうか。

 最後に自分の血を見たのは、いったいいつの事だったか。

 切り口から流れる赤い血を見て、メリアの頬を涙が流れる。


「メリアさん!? すぐに止血を!」


 あまりの痛みに泣いているのかと思ったクロードが慌てるが、止血の必要もなく、傷口からすぐに血は止まった。

 回復力を高くした、というのも確認できた。


「ごめん、心配させたわね。けど、これで確信が持てたわ。私はカルナと話したのね」


「カルナ……それが邪神の名前ですか?」


「そうよ。私をずっと見守ってくれてた、相棒……みたいな感じかしら」


 本当は母親のように感じていたのだが、そう表現するのは躊躇われたため、相棒という言い方に変えておく。


「良好な関係が築けたのですね。では、変わったことを教えてもらえますか?」


「ええ、いいわよ」


 メリアは自分が不老不死ではなくなったこと、新たに権能を得たこと、それらをクロードに説明した。


「権能ですか。魔法でないのなら、ソレーユやミツキ様の方が詳しそうですが、その前に私と模擬戦で使い方を最低限練習しましょう」


「クロードが相手してくれるの?」


「気持ちはわかりますが、これでも枢機卿。それなりの実力は持っていますよ」


 魔国との戦争時も、クロードは指揮官として指示を出していた。

 そんな相手に白兵戦を仕掛けるのか、と思ったが、クロードはそんな考えを察したようにそう言う。


「だったら、遠慮なく実験させてもらうわよ!」


「気の済むまで付き合いますよ」


 2人は早速祭壇から出ると、模擬戦を始めた。


 * * *


「ねえねえ、スールの魔法もっと教えて!」


「ええ、構いませんとも」


 教皇であるスールの元へ連れてこられたソフィアは、最初こそ緊張していたものの、すぐに元の子供のような立ち振る舞いへと戻った。

 他人が見れば、教皇相手にそんな態度をとるなど、と避難を受けるかもしれない。

 しかし、スール本人はまるで孫を見るかのような温かい目で、ソフィアと話している。


「私の魔法は炎魔法ですが、これを結界のようにして法国へと張り巡らせています。このお陰で、侵入者にも素早く対応できるのです」


「法国全部を包む結界って……あれ、スールは人間なんだよね?」


「もちろんです。ですから、魔女であるソフィアさんならば、私よりもずっと上手い魔法の使い方ができるでしょう」


 魔女である身分は既に明かしており、その上でスールが直々にソフィアを鍛えてくれるらしい。

 今は座学の時間で、ソフィアが自分の魔法に対する考えを、もっと広く持つようにしようとの考えあっての事だ。


「私にそんなのできるのかなぁ」


「いいですか。魔法は想像力です。ソフィアさんならば魔女として魔力も多く、幼さゆえに想像力も豊かでしょう。それを活かせば、私などあっという間に追い越せますよ」


「ほんとにほんとだね! 信じるからね!」


「頑張るのはソフィアさんですけれどね。では、実戦といきましょうか」


「実戦……スールと戦うの?」


「まさか。私に戦闘能力はありませんから。ですから、ここにいるジュア法国の兵士、100人を相手取ってもらいます」


「100人!?」


 スールが合図を送ると、近くで待機していた法国の兵士が一斉に現れる。

 100人ともなれば、今いる部屋には入りきれそうにない。


「無理だよ! 多すぎるもん!」


「ソフィアさんの魔法は対集団、それも防御に向いています。攻撃にももちろん使えますが、今回は防御を徹底的に鍛えましょう」


「でもでも、100人は死んじゃうよ」


「最終的にはもっと増やしますよ。それに、ミツキ様達を守りたいのでしょう?」


 最初に話していた時、ソフィアは魔国幹部などの実力者を相手にした時、役に立てなかったと悲しげだった。

 そんな思いをさせないためにも、ソフィアにはミツキ達の中で最も防御力を高めさせ、誰だろうと守れる盾として、役割を確立させなければならない。


「ミツキ、メリア……うん、そうだよ! 私は皆を守れるようになる!」


「その意気です」


 スールの激励が聞いたようで、途端にやる気を出す。


「では移動して、早速始めていきましょうか。死にそうになったら止めますね」


「う、やっぱり少し手加減はしてね?」


 物騒な言葉に少し怖がりながら、ソフィアの鍛錬がスタートした。

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