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迷い

「炎武《飛炎(ひえん)・刃》!」


 炎の斬撃を飛ばしながら、地面を蹴って白へと接近する。

 鎧が溶けないようにするため、大きく炎の斬撃を避けなければならない白は、次の動作が少し遅れ、後手に回ってしまう。


「オルァッ!」


「重い、な」


 すくい上げるように振られた大剣を受け流そうとするが、あまりの攻撃の重さに完璧に受け流せず、反撃できない。

 対してミツキは攻めに重点を置き、とにかく攻撃を途絶えないように連撃を繰り出す。

 振られる度に炎が散るその光景は、荒々しくもどこか美しい。


「無理矢理やるべきか……」


 このままでは攻撃に移れないため、白は大剣を紙一重で避けながら一歩踏み出し、胸の中心に向けて突きを放つ。

 メリアとソフィアには目視も難しいそれを、ミツキは大剣の柄で上へ弾いた。


「遅いんだよ!」


「今のを防ぐか」


 弾かれた力に逆らわず、大きく後退した白はどうしたものかと考える。

 攻撃は荒いが力と技術がそれを補って余りあり、防御もしっかりと心得ている。

 だが、何よりも厄介なのは、


「直感、か」


「読み合いは苦手でな。それに、俺はこのやり方が1番強い」


「反射速度が、人間離れしている。良い剣士だ」


「お前に褒められても嬉しくねぇんだよ」


 攻めあぐねているのは白だけではなく、ミツキも同様だった。


(やってみてわかったけど、技術ならヘル姉さんに劣らないな。ほんとに強い)


 直感に任せた攻撃重視のこの戦闘スタイルは、天界で最もヘルミーネに通用していたのだが、それでも崩しきれない。

 不用意に攻撃しても、相手の目を慣らせて体力を消耗するだけのため、迂闊には動けない。

 結果として、2人はジリジリと間合いを計りながら睨み合うことになる。


 * * *


「ここまで来れば大丈夫かな」


「悪いわね、ソフィアも左腕を怪我してるのに」


「大丈夫っ。頑張れば動かせるから」


 ミツキと白から十分距離をとった場所で、2人は戦闘の様子を見ていた。


「すごいね、ミツキ」


「ええ。悔しいけど、私との模擬戦は欠片も実力を出てないんだってわかるわ」


「でもあれって、メリアを傷つけたから怒って強くなってるんだよ」


「そうかしら?」


「きっとそうだよ」


 今は足でまといにならないことしかできないため、やることも無くそんな話をしていると、遠くから人が走ってくる。


「え、人?」


「ソフィア、下がって」


 刀を握り瞬時に臨戦態勢に入ったメリアから少し離れた場所で、その男は停止する。


「おいおいおい、マジかよ。あいつアランさんを抑えてんのか」


「あんたは、ヨハンだったわね」


「ん、ああ、ミツキの仲間か」


 ミツキと白の戦闘状況を見て目を丸くしたヨハンは、近くにいたメリアたちに向き合う。


「ソフィア、やれる?」


「もちろんだよ」


「やめとけ、お前らが戦っても俺には勝てないっての」


 刀と短剣をそれぞれ構えるが、ヨハンは呆れたように言うだけで戦おうとしない。


「あんたは敵で、私たちはミツキの邪魔をさせたくない。勝つ負けるは関係ないのよ、巫流……」


「あっそ。なら後悔すんなよ」


「えっ」


 メリアが技を放つより先に、ヨハンに一瞬で接近され、蹴り飛ばされた。


「弾け!」


「無駄だっての」


「っ!?」


 ソフィアも杭を放つが、容易く避けられ同じように蹴り飛ばされる。


「ん? おかしな感覚だな」


 蹴った瞬間になにかに弾かれるようにして威力を減少させられた。

 気になって蹴り飛ばした方向を見ると、


「巫流《流渦突》!」


「おっと」


 動けなくなるような威力で蹴ったというのに、起き上がって攻撃までしてきたメリアに驚く。

 ただ、その技は鋭さを失っており避けるのは簡単だ。


「巫流」


「させえねえっての」


「弾いて!」


「っと、囮か!」


 ガキィンッ!

 と重い音を立てて、ガードしたナイフを弾き飛ばされ、思わず後ろへ下がる。

 メリアに気をとられ、防御姿勢が不安定だった。


「骨を折るぐらいでは蹴ったんだけどな」


「折れたわよ。治ったけど」


「うう、痛いよぉ」


 再生を使い体力をさらに消耗したメリアと、怪我していた左腕を蹴られ骨にヒビが入ってしまい、魔力も残り少ないソフィア。

 どちらも戦えるような状態ではないはずだが、衰えることのない気迫を前に、ヨハンは疑問を抱かずにはいられなかった。


「なんでお前らは戦う? 俺には勝てねぇってわかったろ」


「ええ、万全の状態でも勝てるか怪しいわ。でも、ミツキが戦ってるのに私たちだけ楽はできないのよ」


「うん。ミツキの邪魔はさせないよっ」


「ミツキ、ミツキって、あいつモテてるんだなぁ」


 今も尚白との睨み合いをしているミツキの姿を見て、ヨハンはその場に座り込んだ。


「座るの?」


「なんのつもり」


「俺はな、疑問だったんだよ。ミツキとも結構話したんだが……悪いやつには思えねぇんだよ」


「当然よ。善人なんだから」


「それなんだが……お前ら、本当にウナアーダを攻め滅ぼす気なのか?」


「ウナアーダを、攻め滅ぼす?」


「そんなの初耳よ。噂も聞いたことないわ」


「けどな、俺は王国が法国と手を組んで、ウナアーダと魔国を滅ぼそうとしてるって聞いたぞ。西大陸の統一を目指してるってな」


「ソフィア、本当?」


「ううん、聞いたことないよ。むしろ、王国はウナアーダと友好関係を築きたいって聞いてたよ」


「そうよね。あんたはそんな情報どこで聞いたわけ?」


「うちの王女様に言われたんだよ。直属の命令でな。疑う余地もなかったんだが……事情が変わった」


 やはり、自分の勘は正しそうだと半ば確信したヨハンは、立ち上がって足に風を纏う。


「お前らの乗ってた馬車はどこにある?」


「教えるわけないでしょ」


「そうだよ。武器を取る気なんでしょ」


 メリアたちの乗っていた馬車には、調べるためにヨハンの双剣が乗せられている。

 その場所を教えるなど、ありえないのだが、


「頼む。アランさんを止めるにはあれが必要なんだ」


「……私たちやミツキに攻撃しないって誓えるの?」


「メリア?」


「色の騎士の誇りに誓う」


「…………あっちに街があるわ。その近くで待ってくれてるはずよ」


 悩みこんでいたメリアだったが、やがて口を開くと馬車の場所を教える。


「そうか、助かった。韋駄天」


 それを聞いてあっという間にいなくなったヨハンの背中を見ながら、ソフィアはメリアに詰め寄る。


「なんで教えたの!」


「あいつ、悪い人間に見えた?」


「え、それは……見えなかったけど」


「私もよ。むしろ、ミツキと同じような気配を感じたわ。自分の正義を信じる、正しい心」


「でもでも」


「私たちがまだ動けるのが、その証拠よ」


「うっ、確かに」


 ヨハンの実力であれば、手持ちのナイフで2人の首を斬ることなど造作もなかったはずだ。

 それをしないというのは、ヨハンにも迷いがあったからだろう。


「もし誓いを破るようなら、その時は私が死んでも殺すわ」


「ダメだよ。メリアは生きないと」


「ジョークよ。私死なないし」


 そうしてソフィアを納得させていると、遠くで火柱が上がり熱風がここまで届く。


「わわっ!?」


「熱っ、ミツキの炎なの?」


 睨み合いが終わったのだろう。

 2人は様子を見るために、ミツキと白の戦っている場所に目を向けた。

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