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目的

「ただいまー」


「あっ、おかえり〜。どこ行ってたの?」


 寮に戻ると、いつものようにソフィアが夕食を作って待っていた。

 時間はかなり遅かったが、2人が来るまで待っていてくれたらしい。


「メリアと街で買い物をしてたんだ」


「ええ、楽しかったわね」


「えー! ずーるーい! 私も行きたかった!」


「はいはい、また今度ね」


 子供のように駄々をこねるソフィアを、うるさそうにしつつも笑顔が見え隠れしているメリアがあしらう。


「話したいこともあるし、飯食べようぜ」


「そうね」


「話したいこと? なになに?」


 帰り道に話した結果、メリアの強い要望でソフィアにも今回の出来事を打ち明けることにした。

 仲間になるなら、まずは隠し事をしたくないとのことだ。


「私の事なんだけどね」


 夕食を3人で囲んで食べながら、メリアは自分に関することを包み隠さずに話す。


「ーーと、いうわけなの」


「メリアさ、私とミツキと過ごした生活も嘘だったってこと?」


「違うわ! 信じてもらえないかもだけど、楽しかったのは本音よ」


「そっか」


 話を聞きながら考え込むように難しい顔をしていたソフィアは、食い気味の言葉を聞くと、いつものような明るい笑顔を浮かべた。


「信じるよ。だってメリアは仲間だもん」


「ソフィア……ありがとう」


「これで一件落着だな」


「あ、ううん。ここからはミツキにも話してないことよ。私の体についてのこと」


「ミツキ、メリアの体に何したの」


「待て、誤解だ」


 冷たい視線を向けてくるソフィアに、慌てて誤解だと首を振る。


「そういえば、戦ってる時にメリアの体がどうとか言ってたな」


「そうなの?」


「そうよ。単刀直入に言えば、私の体には神が宿ってるの」


「また壮大な話だね」


「神と言っても邪神だし、力の一部だけどね」


「待て待て、邪神を体に宿すって、そんなの可能なのか?」


 邪神についてミツキはほとんど知らないが、少なくとも神の力を宿すなど、生身の人間では不可能なはずだ。


「巫流は、この邪神の力を借りるためのもので、私は巫の血筋の中でも特別だったらしいの。その邪神の血を入れられても、拒絶反応がでなかったらしいわ」


「それで力をその身に宿せるんじゃないか、と」


「無理矢理ね。その邪神の力を入れる儀式の時に、邪神の力が暴走したらしくて、突然私とお父さんだけが飛ばされたの」


「元の世界に帰るとか、考えてないのか?」


「戻っても何もないもの。なら、ミツキやソフィアのいるこの世界の方がいいわ」


「話してる時にごめんね。そもそも、本当に神様って存在するの?」


 根本的な疑問を持っていたソフィアが、2人の会話に割って入る。


「間違いなく存在する。断言するぞ」


「へー、やっぱりいるんだね」


「ジュア法国だって神を信仰してるしな」


「確かにそうだね。それでそれで、メリアが宿した邪神の力ってどんなの?」


「言うより見せる方が早いわ」


 と言うと、メリアはおもむろにナイフを自分の左胸に突き刺した。


「おい!?」


「何してるの!?」


 驚く2人だが、メリアは特に痛がる様子もなくナイフを引き抜く。


「見てなさい」


 言われて傷口を見ると血が出ておらず、肉が穴を塞ぐように蠢き、一瞬で傷口を治した。


「私は不老不死なの。まだ日は浅いから影響はないけど、これから何千年経とうと、私は死なないのよ」


「不老不死って、マジか」


「マジよ。本題はここからなんだけど、ミツキ、ソフィア、私が人間に戻るのに協力してほしいの」


 ずっと思っていたことを、頭を下げて頼み込む。

 こんな呪いを解いて人間に戻りたいが、今は方法すらわからない。


「無理なら断ってくれても……」


「いいぞ」


「私もいいよ〜」


「……2人ともノリが軽いけど、本当にいいの? 多分国の外に行くわよ」


「俺は悪魔を探すって目的があってな。国は出るつもりだったし」


「私も魔女について調べたいから、帝国に行きたかったんだ」


「そっか……なら私たち3人で、それぞれの目的を達成しましょう」


「俺からもお願いしようと思ってたからな。こちらこそ頼む」


「うん。2人がいてくれるなら心強いよ!」


 各々目的があり、どれも1人では難しいものばかりだ。

 しかし、仲間がいれば話は違う。


「じゃあ改めて、巫メリアよ。よろしく」


「おう、よろしくな」


「よろしくね! 3人で学園卒業して、一緒にがんばろ!」


 本名を名乗ったメリアを加え、3人は改めて仲間として卒業後も助け合うことを誓った。


 * * *


「目的を決めたのはいいけどさ。ソフィアは俺たちと卒業時期ずれるよな?」


「確かにそうね」


 数日後、学園の授業も終わった昼休みにミツキとメリアは闘技場を借りて模擬戦をしつつ、昨日の話の続きをしていた。


「年齢がそもそも違うけどな」


「私とミツキは偽ってるしね」


「まぁな」


 年齢を偽っていたのはミツキだけではないらしく、メリアも本当は50年ほど生きているのだという。


「防御上手くなってるわね」


「練習の成果だな。そっちこそ、新しい刀はどうだ?」


「いい感じよ」


 今メリアが振っている刀は、1人前になるまで使うなと言われていた刀だそうだ。

 それをもう縛られる必要がなくなったのと、前の刀が折れたこともあって使うことにしたらしい。


「でもなー、ほんとにどうするか」


「飛び級とかないのかしらね」


「それなら心配いらないよっ!」


 模擬戦を続けようとしたところで、ソフィアが授業を終えて帰ってきた。


「やっぱりここにいた」


「授業お疲れ。心配ないってのはどういう意味だ?」


「ふっふっふー。私はちゃんと策を考えてるんだよ。ずばり、戦士団にスカウトされるの!」


「戦士団にスカウト?」


 戦士団とはソレル王国の主戦力で、精鋭揃いと言われる集団だ。

 王都を中心に、他国から国を守るための抑止力として強い力を持っていると聞いた。


「そうだよ。学園ではすごい成績を残した人に、戦士団から直接スカウトが来るの」


「けど、戦士団に入らないといけないなら、自由に行動できないんじゃない?」


「そこも調べてるよ。戦士団なら他国に行ける機会もあって、それなら私たちの目的の調査もできるし、支援も受けられるからお得だよ!」


 かなり調べていたようで、得意げに胸を張ってドヤ顔をしている。


「細かいとこは後で調べないとだけど、もし事実なら一緒に卒業できるわね」


「けど、すごい成績ってなんだ?」


「それは、えっと……他国が攻めてきて、それを撃退する、とか?」


 そこは考えていなかったのか、ドヤ顔がすぐに崩れて視線がさまよっている。


「他国が攻めてくるかぁ。有り得るか?」


「可能性は0じゃないよ!」


「可能性はな」


 このソレル王国と隣接している国は、神を信仰するジュア法国と、魔王が統治する魔国の2国だ。

 ジュア法国は中立で戦争を起こすとは思えず、魔国も現在は力を弱めているため、安易に攻めてくるとは思えない。

 魔国の奥には精霊国家ウナアーダが存在するが、これも距離があるため攻めて来ないだろう。


「まあ、難しいでしょうね」


「うう、やっぱりそうかなぁ」


 ガッカリしてソフィアがうなだれていると、


 ウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!!


 という、爆音のサイレンが響き渡る。


「なんだ!?」


「サイレン……何かあったのかしら」


「これは確か……攻められた時のサイレンだったと思うよ!」


「タイミングがいいな。とにかく行ってみるか」


「そうね」


 幸い、模擬戦のために装備は整えていた。

 何が起こったか確かめるため、3人は城壁に向けて走り出す。

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