表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/37

すてきなマイホームと体温


石を加工できるようになったのなら、石を主に使った部屋を作れば室内で料理ができるじゃないか。

雨が降ったら外で料理は出来ない。ヘスカティアは雨が降る日もあるらしいので早めに作っておくべきだ。


上流にある大きな石を片っ端から加工して持って帰ることにした。

きちんと鑑定すると、建築に使いやすい〚石灰岩〛〚花崗岩〛〚安山岩〛などと分類できた。

蓄積されてできた石よりも。火山をもとにできる石が多いので、ここヘスカティアは火属性のアイテムが多いのだろう。ダンジョンも火の魔石がとれるようだし。


建築は建築士であるセルの方が断然詳しいと思うので、石材を渡してキッチン制作も丸投げする。

その分私は料理や調合など他で頑張ることにしよう。


お風呂は薪風呂を作るのはどうだろう?

毎日は木がなくなりそうで入れないけど、あって損はない。


まて、その前にトイレだ。

トイレどうしよう。


今までは街で下水道に流れていたけれど、ここは上流なので川に流したら洗濯している街の人に怒られる。流せないなら溜めておくしかない。

バイオトイレならにおわないし肥料も手に入るけど、どこで微生物を手に入れればいいんだ!

このままでは野でしなければいけない。そのまま放置だなんて衛生面でも絶望的だ。


よし、セルに相談しよう。

整地場所に戻るとすでに家の骨組みができていた。

すごい。あ、感心してる場合じゃなかった。セルがひと段落したところで声をかける。


「セル!トイレの良い案ないかな?このままだとぼっとん式になっちゃうから」

「トイレですか?でしたら、毒消草と薬草でバイオ薬をおつくりになるのはどうでしょうか?すぐ肥料になりますよ。」


バイオトイレあったんかい。


「流石セル。何でも知ってるね。トイレはバイオ薬で解決だ。あ、この石材使ってトイレとキッチンの増設お願いできる?」

「分かりました!肥料は外から取り出せるようにしておきますね。キッチンはトイレの反対側でよいですか?」


トイレ、リビング、キッチンと位置取り完璧だ。


「うん、それでお願い。あとお風呂の良い案ない?湯船につかりたいんだけど」

「お風呂については私は平民だったのでわからないですね。……マスターは貴族の方なのですか?」

「ううん、元貴族。今はただのクライマーだよ。」

「そうだったのですね。購入して頂いたときから聡明な方だとは思っておりましたが貴族の方だったとは……」


面と向かって聡明と褒められると照れる。


「いずれ実家なんてけちょんけちょんなくらい裕福な生活をさせてあげるからそのつもりでね。バイオ薬は完成したら木材のそばに置いておくからよろしく」

「はい。私もマスターのそばにいても恥じないように頑張ります」


元実家はあのちょろそうな兄が継いだら騙されてあっという間に没落しそう。

そう考えると奴隷として売られず家を出れてよかった。


バイオ薬を作るためにアイテムバックに入れておいた毒消草の植木鉢から何枚か葉をむしりとる。

自動調合すると、茶色く丸い球が完成した。これが便などを分解するのは何とも不思議だ。

木材の近くの石の上においておく。ついでに購入しておいたガラス板もおいておいた。セルならうまく使ってくれるだろう。


建築は、玄関のほかに勝手口を作ってくれるようなので、まずは家の裏手側に薬草園を作ろうと思う。

雑草を抜いてスコップで土を掘り返し、アイテムバックにある薬草と毒消草の株を植えていく。結構重労働だ。


薬草6株と毒消草4株を植え終わったので、大工加速で簡易的に柵を作り囲ったら完成だ。

中々良い出来ではないだろうか?


森の中にはララの実がなる小さな木があったが、スコップで掘り起こすのは非効率だ。

シャベルがあればよいのだが、

道具や雑貨も自動スキルがあるんじゃないか?


ハンマー片手に、石工加速で石を鋭く削る。その石を彫刻刀のように利用して、木材を地道に掘っていく。

やがて、いびつだが木のスコップができた。柔らかい土もなんなくほれる。

ヘロヘロになりながら、スキルを確認する。


〚自動工具作成〛

瞬時にアイテム工具作成できるスキル。道具不必要。


「おおっ」


今回のスキルは道具が不必要なようだ。道具を作るために道具が必要だったら堂々巡りか。

スキルで自動と加速に分かれるのは何か条件が違うだろうが、全然わからない。


自動工具作成で石のくわを作る。薬草園の隣に野菜農園を作るためだ。

手元にある野菜で増やすことができるのはジャガイモのみだが芽を出してやるために、2週間地表で放置しなければいけないので今すぐに植えることはできない。

それに、ジャガイモは連作障害を持っており、同じ場所で何度も栽培すると栄養が偏ったり、作物をダメに病害虫が出てしまう。

それを避けるために一度ジャガイモを植えた畑では2年間別の野菜を植えるなどして間隔を開けなければいけなかったはずだ。


なので、しばらくは作った畑にバイオトイレからの肥料をまいて栄養満点の土を作るのがベストだ。



ただし、それはここがファンタジー世界じゃなかったらの話だ。


バイオ薬とかあったから、絶対じゃがいもとかたくさん作れる方法があるはずだ。

家の方面に振り向くと、屋根ができていた。

短時間で鬼のように早く建築が進むのは見ていて楽しい。


「セル。ちょっといい?」

「はい。なんですか?」

「野菜農園を作ろうと思ってるんだけど、連作障害のじゃがいもとか何度も植えられる方法知ってない?」

「すみません、植物については詳しくなくて……。農民の職業を持っている方なら知っているかもしれないです」

「農民の職業か、ありがとう。」


連作障害の解決法はセルでも知っていなかった。

毎度野菜を買うのもありだが、どうせならこの広い土地を活かしたい。

この街で売っていない野菜を仕入れられれば高値で売れるだろう。

次の奴隷は農民に決まりだ。


うーん、ますますダンジョンから離れていくな。

今度購入するときは、一気に数人奴隷の数を増やしてみるのもありかも。

ポーションはやまもり作れるしね。


大工加速で大きい樽を作り、川から組んできた水を貯めておく。農園用の水だ。

空いたバケツに水を入れ何往復かすると、いっぱいになった。アイテムバックのおかげで水がたくさん入っていても重くないので便利だ。

巨大な樽に並々とあるお水を少量撒いてふたを閉める。

裏の畑はひとまずこれでいいだろう。


ラベンダーを植える位置だが、綺麗な薄紫な色をしているので玄関前がいいだろう。

テイムしたモンスターはラベンダーの香りを嫌がらないようなので安心だ。


次に家具を作りたいが、泥だらけの体では汚してしまう。


「川に水浴びしてくる!」

「お気をつけて」


セルに見送られ、家前の川で服を洗う。


冷たい水が心地よい。


服のヨゴレをごしごしとこすり落とした後、近場の適当な枝に引っ掛けた。

風もあるので服はそのうち乾くだろう。


川に戻って腰のあたりまでつかり、体の泥も落としていく。

しゃがんで水中で頭も大胆にあらう。


丸ごしのすっぽんぽんだが、セルの森林セコムと水晶蟹のおかげで危険はない。

今世は男だけど前世は女だったが、男のセルに見られても別に恥ずかしさもない。

今世は女の人を恋愛対象として見れるだろうか?うーん。一目ぼれしたらその時考えよう。


川に反射して移るのは金髪で緑の瞳をした今世の自分の顔。

それなりに整っているのではないだろうか?


笑顔を作ってみる。

うん。子供愛好家とかいたらひどい目にあいそうだ、と思わず半目になった。

何をしてるんだと思わずため息をつき、川から出ると笑顔のセルがバスタオルを広げて待っていた。

いつの間に。


「……見てた?」

「はい。笑顔すてきでした。」


ぐっなんてことだ。顔を作っているところを見られてたとか恥ずかしい。

赤くなっているであろう顔を覆ってうなる私をセルがバスタオルで優しく優しく拭いてくれる。

大切にしようとしてくれてるのがこそばゆい。


「……ありがと」

「どんなマスターもすてきですよ。ただ、マスターのこのお姿は大変魅力的ですのでどうか私が周りを警戒しているときだけにしてくださいね」

「……うん、そうする」


少し困ったように微笑んでいわれたけど、要するにセルから見ても私はそっち系の危険な大人にドナドナされる危険大、という認識ってことじゃないか。

これからは安易に外で肌をさらすのはやめよう。そして早急にお風呂を室内に設けるべきだ。


「家が完成しましたので中でお着換えください」


ある程度拭い終わるとセルにそう背をおされた。

家がどんなふうに完成したのかワクワクだ!

枝に引っ掛けておいた服はセルが回収してくれたので、バスタオルをまとって家に向かう。


すぐに全貌が見えた。立派な木造建築だ。


壁には木目の整ったものから使ったのかとても美しい。

屋根は寄棟で作られており、どの横の角度から見てもバランスが良くてすてきだ。

外装だけでこれだけ素晴らしいのだから、内装はいったいどうなっているのだろう。

セルが白樺の扉を笑顔で開けてくれる。


1歩踏みこむと、玄関と床の高さが明確に変わっている。

靴を脱ぐ仕様は日本人の私にうれしい作りだ。


セルは、どんな家にしようかと話し合った内容をきちんと覚えてくれていたようだ。

靴を脱いで、家に上がる。玄関を入ってすぐに家の中が丸見えにならないよう工夫されている。

気遣いができるセル流石だ。


「すごいよセル!部屋、見ていい?」

「もちろんです。この家はマスターの家ですから」


玄関から入り、左手に大きな一部屋とお手洗い。右手が台所に勝手口。という構造のようだ。


セルに促され左手から見ていく。

大きな部屋は渡しておいた大きなガラス窓が使われており、太陽の光をふんだんに取り込んでいる。

昼間は明かりが必要ないくらいにとても明るい。

この広さならシングルベッドを2つ、棚、テーブルと色々置いても狭く感じない。最高だ。


次に追加でお願いしたトイレと台所だ。

トイレは洋式だった。ただ見慣れない装置がトイレの背にくっついている


「セル、これは?」

「はい。このレバーを引きますとタンクにためてある水が流れます。紙と水を流しても肥料として貯まるのでご安心ください」

「スゴイ……水洗トイレだ」


マスターは水洗トイレの方が喜ばれると思いまして…照れくさそうにするセル。


わたしのために考えて良いものを作ってくれるだなんてうれしすぎる!

感極まってセルに抱き着いた。


「セルありがとう!とてもうれしいよ!」

「喜んでもらえて光栄です。が、あの。お風邪をひかれたら大変なので先にお着換えを……」


やばい。うれしさのあまり裸だったのを忘れてくっついてしまった。

どこの変態だ。ぶわっと顔が熱くなる。絶対真っ赤だこれ。

こ、子供だから許してくれっ


大部屋に戻り、顔に集まった熱をふりはらうように素早く着替える。

着替えてる最中もセルが微笑ましい顔で追い打ちをかけてくる。


「そこまで喜んでもらえるとは良かったです」

「ウン。カッキテキナ、トイレヲ アリガトウ」


思わず片言になったのは致し方あるまい。



「よし、次はキッチンだ」

「はい」


気を取り直して台所に向かう。

渡した石が床、壁、かまどとふんだんに使われており、火事の心配はなさそうだ。

かまどの横には薪が置いてあり、補充も楽に行える。

勝手口をあけると裏手に出た。薬草園も見える。


「すごい使いやすそうだ。ありがとう」

「いえ、喜んでもらえて何よりです。明日どこか増築しますか?」

「そうだね、水はけがよいお風呂場と作業部屋がほしいかな。あ、セルも水浴びしてくるといいよ。さっぱりして気持ちがいい。これ着替えね」

「ありがとうございます。服も選択してきますね」

「うん。何かあったらすぐ戻ってくるんだよ」

「はい」


セルも美人さんだから変な人に目をつけられたら絶対あぶない。

今日は仕方がないとして明日には室内で水浴びを済ませられるようにしよう。


セルが水浴びをしている間に家具を作ってしまう事にする。

外の木材をアイテムバックに入れ、大きな部屋で作業を開始した。

スキル、大工加速でベッドの枠組みを作り、部屋の両端に設置する。

スキル自動裁縫で綿と布を加工し、敷布団と掛け布団、枕ができた。

残った布はカーテンとラグ、予備の服にした。


洋服などを入れるタンスと、机、椅子二つをそれぞれ作成設置した。

一気に生活感あふれる部屋となった。


トイレットペーパーは材料が木材のおかげで、大工加速で作ることができたので一安心だ。


次に、木を加工してスプーン、棚、桶、食器をつくりおいていく。

購入したフライパン、食器、調味料セット、森で入手した野菜をしまっていく。

ウサギ肉も手を加えない限り腐らないので常温でよいとか最高だ。


今日の夜ご飯は街で買ってきた黒パンとふかした芋があるので、ウサギ肉とニンジンでスープを作る予定だ。


竈の中に薪を積み上げ、火打石で火をつける。

小さな火に何度か息を吹きけるとすぐに大きな火となった。後は定期的に薪を足せばよいだろう。

鍋に水を入れ、竈の上に置く。鍋の水が沸騰するまでの間に野菜を切ってしまうとする。


大きな桶に水を入れ、野菜の泥を落とす。

自動工具スキルで石の包丁、まな板を作ったところでセルが返ってきた。


「おかえり」

「ただいまもどりました」


振り返っておかえりというとうれしそうに答えが返ってきた。

ポーションで回復した時も思ったが、ヨゴレや泥もきれいに落ちたセルはすごく美人さんだった。

それこそ、メイン通りの高級奴隷なんてへじゃないくらいに。


ますます変な人に捕まらないか心配だ。


「どうかされました?」


心配が顔に出ていたのかセルが質問してくる。

隠す必要もないので素直に答えるとしよう。


「セルが美人だから変な人に誘拐されそうで心配」

「ふふ、私はマスターのものですから絶対離れません。それに腕っぷしもなかなかですよ?」


こちらを安心させるように力こぶしを作るセル。

確かにセルの力は強い。むしろ木を一撃でけり倒せるのだから相手の生死を心配すべきか。


「何を手伝ったらよろしいですか?」

「そうだね、お肉をカットしてくれる?スープに入れるから」

「かしこまりました」


作ったまな板と石包丁を渡して棚にあるウサギ肉を1つカットしてもらう。


「もしや、この石包丁なども作られたのですか?」

「うん。石工加速というスキルだよ。石をハンマーである程度削ったら手に入ったからセルも入手する?」

「スキル石工加速は石工ジョブを持っていないと入手できないので残念ながら私には使用できません。」


ジョブに縛られるこの世界ではそうだろう。

でも私はチートスキルを持っているからね!


「私は習得条件を満たした人の職業を自由に変えることができるんだ。内緒だよ?」

「え……?」


セルはこれでもかと目を見開き驚いている。

話を聞いただけでは納得がしないだろう。試しにジョブを変えて見せよう。


「セルは今料理をしたことがあるよね」

「……はい」

「なら条件を満たしてるから、ジョブを一時的に料理人にするよ。ステータスカードを確認して」


スキル職業再振り分けを使用して、セルの職業を料理人にする



〚奴隷:セル〛

 上位精霊 24歳 男

 料理人Lv.1  

スキル

 大工加速


「……本当に料理人に代わっている。それに種族が……上位精霊……すごい」


「ちゃんとかわってるでしょ?料理が終わったら建築士にもどしておくからね。今後ダンジョンに潜る時は戦闘職を目指してもらうよ」

「はい!精一杯頑張ります!」


レアジョブに誰しもあこがれるだろう。絶対的な強者としてモンスターと戦うのだ。セルの気持ちよくわかるよ。


「私は素晴らしいマスターの下にこれて幸せです。」

「うん。私も優秀なセルを手にできて幸せだよ。」


セルは涙声で料理に戻った。

セルの手さばきは、手慣れており料理ができるというのは本当のようだ。

私は泥を落とした野菜の皮をむいて、お肉を切り終わっていたセルに渡す。


土で汚れた水に水の魔石を使ってみることにする。

桶に水の魔石を落とすとそこから広がるようにして水がきれいになった。

これがあればわざわざ水を汲み直す必要もないようだ。一つは台所用に置いておこう。


「マスターは水の魔石をお持ちなのですね!」


セルに尊敬した瞳で見つめられる。


「うん?誰でも持ってるものじゃないの?」

「精霊族は魔石の数でカーストが決まっていましたので」

「なるほど」


魔石を手に入れるために破産する貴族がいたぐらいです。と笑っていうセル。

どこの貴族でも地位のために破産する人はいるようだ。

気をつけよう。


沸騰した鍋にやさいとお肉を入れ煮込む。

味付けは塩コショウだが素材の味を生かしてるってことで良しとする。


黒パンとお芋も温め直すし、制作したお盆に料理をまとめて乗せた。

結構な重量なので力持ちのセルに運んでもらおう。


「セル、これ部屋のテーブルに運んでくれる?」

「はい」


私が扉を開け、セルが通る。


「すでに家具も作られていたのですね。流石です。マスター」

「家を作れるセルに比べたら大したことないよ。さあ食べようこっちはセルの分ね。座って」

「ありがとうございます」


昼間に命令した時よりか随分と素直に座ってくれた。

私に譲る気がないとわかったのだろう。


「いただきます」

「イタダキマス?」


セルは意味を解っていなかったようだが、手を合わせるのをマネする。


「今のは食材の命に感謝を伝える意味の挨拶だ。食べ終わったら、ごちそうさまでした、という。目立つから外ではやらなくていい。心の中で思えばいいさ」

「素晴らしいお考えですね。……いただきます」


命を頂くことを感謝することは好印象だったようだ。

満足に食事を与えてもらえる奴隷は少ないのだろう。

今後、もっと豊かになっていくであろう食事を食べたときのセルの表情が楽しみだ。


黒パンをスープに浸し咀嚼する。固いパンもいくらか柔らかくなる。

セルには木でできたフォークとスプーンを渡したが、私は木で作った箸で食べる。

セルの視線を感じた。やはりこの世界では箸は珍しいのだろうか?


「これは箸という。見たことない?」


新しく箸を作ってセルに渡す。


「初めて見ました。難しいです」


悪戦苦闘するセルに持ち方を教える。


「なれてしまえば簡単だよ、頑張って」

「はい。マスターのように上品に食べれるように頑張ります」


子供が大人の期待に応えようと必死になっているようで心温まる。

実際に私は子供で、セルは大人だが。


食事を終えるころにはセルの箸使いはかなり上達していた。

手先が器用なのだろう。


「片付けはお任せください」

「ありがとう」


セルが後片付けを行ってくれるようなので、その間にあるものを作ることにした。


「戻りました」


太陽が沈みかけたころ洗い物を終えたセルが戻ってきた。


「セルこちらに来てしゃがんで」


セルは指示どおりに目の前に来て跪いた。

光の魔石に銀の裁縫糸で編み込んだ紐を首に通す。


「プレゼント」

「これは……」


セルが魔石に触れると淡く光がともった。


「光の魔石だ。この辺りは街みたいに明るくないからね。使って。」

「ですがっこのような高価なものをっ」

「私とおそろい」


私の首にもかかっているのをセルに見せる。

暗い中作業することがあったら手元が空いている方が良いだろうと首にかけるタイプにした。


「精霊種族にとって魔石はカーストを表すのだろう?なら一つぐらい持っていないとね」

「ありがとう、ございます。大切にします」


奴隷となっても種族の習慣的憧れは変わらないのだろう。

プレゼンとも喜んでもらったようなので良かった。


「さあ寝ようか。明日も忙しくなるよ」

「はい」


光の魔石を服の中にしまい、布団にもぐる。うん、ふかふかだ。

一気に眠けが来る。が、セルが目の前から動かない。


「?セルのベッドはむこうだよ?」

「いえ、ここまでよくしてもらってさらにベッドだなんて……あの」


ああ眠い。セルがなんか言ってる。

めんどくさくなってきた。

布団をめくって腕を引く。


「入って」

「でもっ」

「めいれい」

「……っはい」


命令というとセルはぎこちなく布団に入った。


落ちそうなぐらいぎりぎりにいるのでぐいっと引き寄せる。

ついでに子供体温で温めてやろう。とっととねたまえ


セルあったかい。暫くぶりに人温かさを感じる。




「……おやすみなさいませ」



お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ