新クランメンバー
「ソルティさん、こんにちはー」
「クライマー君!こんにちは!」
お馴染みの素材屋さんで、ポーションなどを売り、布や魔石などを購入する。
小麦粉と塩、砂糖に関しては定期購入する契約を結んだ。
「ふふ、この材料たちがあの美味しいパンになると考えると楽しみだ」
「…あ、そういえばクラン立ち上げたんです。パン屋は来週頭に開店で名前は〚黄金の雲〛ベーカリー。商品は―――」
「うえ!?なんかさらっと凄い言葉が聞こえたけど!?え、クラン立ち上げたの!?メンバーは!?」
「私一人ですよ。セルたちがいるから他のメンバーを集めるつもりはないですし。」
「うへええ、あの、さ、もし、よかったらだんだけど、クランメンバーに入れてもらえないか、なーなんて」
「え!?」
ぎょっとセルと顔を合わせてソルティさんを見ると慌てて説明される。
「いや、あの、勿論ただでって訳じゃないよ!?ほら、俺、他の街の素材仲間とつながりがあるから、欲しい物とか情報とか色々渡せると思うんだ。ただ、その…戦闘も出来ないから、自白剤とか飲まされたら君たちの事を話しちゃう不安があって……ごめんね」
「……もしかして、誰かに言い寄られたんですか!?怪我は!?」
「ううん、怪我はないんだけど…次までに情報を探っておけって脅されて、でないとその、嫌がらせをするって…」
覇気がなくうつむくソルティさん。
なんてことだ。ソルティさんが私のせいで脅されていたなんて。今の私は家を追い出された子供だ。その私を探るって、いったい誰が?何のために?焦る気持ちを抑えてそっと聞く。
「…誰に脅されたんですか?」
「えっと、クライマー君の元兄貴だとかなんとか…名前は言ってなかったけど金髪の貴族服を着てたよ」
あんのくそぉぉおおっ
直に思い浮かんだあほ面に思わず叫びそうになった。
犯人はまさかのウッド家長男。追い出しておいて、今更何の用なんだ。アレは常識がないから何をしてくるかわからないぞ…
「……ソルティさん、〚黄金の雲〛の契約内容は活動の秘匿と命令厳守としてるんですけど、犯罪に手を出さないくらいで、今後も特に何かを強制するつもりもありません。それでもよければ、安全の為に〚黄金の雲〛に入ってください」
「いいの、かい?本当に?」
「ええ、ソルティさんにはお世話になってますから。それに元とはいえ兄貴が失礼しました。」
「いやいやいや、だって君を追い出したとこの家でしょ!?クライマー君が謝る必要ないよ!」
逆に励まされてしまった。ここまできて身内と関わることになるとはちょっと予想外。ていうか、まだこの街にいたのか。さっさと当主の仕事に没頭されて灰なってしまえばいいものを。
ムカムカしていると、セルに肩を叩かれた。
「お早めに登録したほうが良いかと思われます。」
「あー、うん。その方がいいね。ソルティさん、この後早速登録しにいきませんか?先送りにしたら何かしてくるかもわかりませんし」
「え!?いいのかい!?行こう!」
「決まりですね。まずは冒険者ギルドに登録しに行きましょう」
幸い今日は予約してるお客さんもいないそうなので、お店を閉め、ソルティさんと冒険者ギルドに向かう。
先ほどのお姉さんに契約書を出してもらって私とソルティの署名をし、提出。これではれてクランメンバーだ。
「これからよろしくお願いしますね、クランマスター」
「なんだか、こそばゆいですね。今まで通りクライマーでお願いします。ソルティさん」
「えーークランマスターってカッコよくない?」
「じゃあ 素材調達リーダー、って呼びますね」
「うわあ こそばゆいっ クライマー君勘弁してっそういえば、クランのカラーとかあるの?」
「うーん、白とか?どうです?清潔に見えますしパンの売れ行きも伸びそう」
「ふはっ売れ行きっ気にするところそこなんだね。」
ツボってしまったのかゲラゲラと笑うソルティさん。笑顔が戻ってよかったと思ったところでギルドマスターと遭遇した。
「あん?早速新規メンバーか?」
「ええ、ちょっと諸事情で」
「……事件か?」
こういう場合、言った方が良いのだろうか?いや、でも外傷を負わされたわけでもないから取り締まってもらう事も出来ないし…。悩んでいるとひょいと抱き上げられ肩に乗せられる。
「ええ!?ちょ、ギルド長!?」
「坊主は悩みすぎだ。奥で聞いてやるから大人なおいちゃんに話してみろ。お前らもついて来い。おーい客室使うから誰も通すなよー」
「了解です~」
そのまま客室にドナドナされソファーに降ろされた。隣にソルティさんが腰かけ、後ろにセルが立っている。向かいのソファにはギルド長が話さなきゃ解放しないぞって顔をしてたので大人しく白状することにした。
「実は―――」
事のあらましを話すとギルド長は頭を抱えて「またあいつか。」と呟いた。
またって何。え、そんなやらかしてるの?あいつ。
「あー実は他にもお前について探るように脅されたって人間がいてな?特に殴られたとかじゃなく、貴族の権力でお店をたちゆかなくするぞーとか、で注意しか出来てなかったんだ。」
「ほかにも、脅された方がいるんですか…元家族としてなんか、すみません」
「いや、お前さんが謝る事じゃない。あいつの問題だ。相談してくれた人たちには警備をつけているから、あいつはソルティさん?だったかに行ったんだろうなあ。しかし、法律で認められているとはいえ、14歳で家から出されるとか災難だったな。ちゃんと飯――は食ってるか。あのパン美味しかったなあ」
ギルド長話飛び飛びだな。おい。
「おっとすまん。まあなんだ。ソルティさんには冒険者ギルドで護衛を付けるから安心してもらって構わない。犯罪を犯したら貴族だろうが何だろうがとっ捕まるからな。」
「ソルティさん良かったですね」
「ありがとうございます!!とても心強いですっ」
その後護衛に就く人と顔合わせを終えて冒険者ギルドを後にした。ソルティさんも顔が明るくなって何よりだ。心配事も無くなった所でお店まで見送ってまた明日、とお別れした。
なんだか色々とあって疲れたけど、その分やる事も決まってきたな。来週にパン屋が開店するからそれまでに制服を作らないといけない。白Yシャツに黒の長ズボンと黒の腰エプロンでびしっとした物にしたい。アンリたち警護の服装は、動きやすい騎士風の軍服なんてどうだろうか。私服にスカートとかワンピースもプレゼントしたい。布素材はソルティさんの所で購入済みなので家に帰ればすぐ仕立てられる。あとは――――クスリとセルが笑った。
「マスター、ここで百面相をしていらっしゃるのは大変可愛らしいですが、屋敷に戻ってから、お茶を飲みつつ考えるのはいかがですか?」
「……そうだね。皆にお土産買って帰ろうか」
そんな百面相してたかなあ?と頬を手でもんでいるとまた笑われてしまった。恥ずかしい。私も考えると周りが見えなくなるタイプのようだ。気を付けよう。
食材をさくっとかって、お酒も購入した。川沿いでまた水晶蟹をテイムしたり、綺麗な石を持ち帰ったりと寄り道しまくった。
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