6話
宣言通りなんとか5日に間に合いました!
なんとビックリ!13名+殺人ゴーレムで100人ほどの敵兵が守る遺跡を陥落させ、荷物と拠点を手に入れる事に成功した。
次の目標は敵本陣にある物資の山の放火か、洞窟に逃げ込み囲まれかけてるエルフ達の救出のどちらかだが、俺はエルフ達の救出を選択した。その理由は単純に戦力の強化だ。エルフは思った以上に強かった。相手が普通の人間で、こちらが万全の状態なら10倍以上の兵力差を覆せると俺は確信した。
だが所詮10倍。相手は1万の軍勢。流石に100倍の兵力差を覆すのは不可能であり、いっぺんに攻め混まれたら勝ち目は無い。では、どうするか?というと答えは“負けない„だ。
『勝つ必要は無い。ただ耐えて、今は引き分けに持ち込めればそれで良い』
狙うは引き分け。勝ちではない。しっかりと事前に強固な防衛線を構築し、敵の物資を放火して1日か2日を耐えきれば良いのだ。
「次の作戦は洞窟のエルフ達の救出だ」
「了解しました。%@§¥#$」
レナが皆へ指示を出すと俺達は洞窟へ向かった。
*
洞窟に着くと、そこには既に入り口を多数の兵士によって包囲され、洞窟内から散発的に弓や魔法を放って攻撃するエルフ達が目に入った。
「この人数差は厳しいんじゃないか?」
「はい...これはかなり厳しいです」
ロケット花火や火炎瓶を使えば敵が怯んだ隙にエルフ達を逃がせるかもしれないが、そうすると放火作戦の方で警備が厳重になったり、注意を反らす事が困難になる。全員で火炎瓶持って突撃すればなんとかなるだろうが、それでは正面戦闘と変わりなく、捕まったり殺されたりと多大な犠牲を払う羽目になる。
『放火作戦を先にやるか?』
先に物資を燃やしてしまえば手札を知られようと火炎瓶は十分な効果を発揮するだろうし、ロケット花火も威力を知らない相手からすれば十分恐怖を感じるだろう。
「先に放火作戦をやるぞ。仲間達には半日だけで良いから耐えろ、って伝えてくれ」
「半日...はい、畏まりました。%@§¥#$!!」
そう言うとレナは大声で俺の言った事を洞窟に居るエルフ達へ伝え、向こうからも返事が届く。
「なんだって?」
「了解した、だそうです。それよりも...」
「ああ...逃げるぞぉ!!」
「%@§¥#$!!」
完全に位置がバレてしまい、走ってくる追い掛けてくる敵から俺達は逃げ出した。
*
敵の追跡を振り切り、遺跡から荷物を持ち出した俺達は敵の哨戒網を潜り抜け、その先の敵本陣付近へと到着した。
『警備は...厳重っちゃ厳重だけど』
敵は洞窟の方に少なからず人員を割いている。とはいえ数えるのも面倒くさくなる程の数千程度には兵士が見受けられる。普通に出たら即捕まる。
「火炎瓶準備よしっ、ロケット花火もOK」
俺は手に1本、バッグに1本の1Lの空き瓶をガソリンで満たした特別製火炎瓶を装備し、エルフ達にも火炎瓶を持たせ、地面には真上と敵陣へ向けたロケット花火の準備を完了する。
これから俺は2人のエルフを護衛として連れ、現在地から敵陣の反対側へ向かう。自分達の背後でロケット花火を打ち上げては意味が無いからな。
「レナ。こっちは頼んだぞ?ロケット花火を打ち上げたら、ちょっとだけ姿を見せて敵の誘導。そして火炎瓶を物資に当たらなくても良いから投げつけ、逃走だ」
「はい、お任せください。%@§¥#$」
レナがエルフ語で何かを言うと護衛のエルフが頷き、俺を先導して反対側への案内をしてくれる。
そして反対側へ到着すると、暫くしてピュンピュンとロケット花火が打ち上がり爆発。追加でエルフ達の放つ魔法が飛び、火の付いてない火炎瓶を物資に向かって大雑把に投げつけ、敵を引き連れて逃げていく。
「よし...援護頼むぞ~」
俺は手に持つ火炎瓶の布にライターで火を付け、敵陣中央にある物資の山へ向けて走る。
「「%$@¥#§!!」」
お前何者だ!とでも言ってるのだろう、俺に気付いた敵兵は背後から飛んできた矢に眉間を射られ、即死する。エルフの援護、これは心強い限りだ。
物資まであと少し。続々と額に矢を生やして倒れる敵兵を尻目に俺は走り続け、とうとう敵の物資を狙える距離まで肉薄し、火炎瓶を投擲する。
「行っけぇ~!!」
投げられた火炎瓶は上手く物資へ直撃し、割れ、中のガソリンに引火して爆発、炎上。その炎は最初にエルフ達が投げていった散らばるガソリンにも引火し、辺りは正に火の海と化した。
もう水をかけた程度では消せないだろう。
「おらっ!おまけだ!」
バッグからもう1本の火炎瓶を引き抜き、火を付け今度はテントが密集している辺りに投げてやる。
これでテントの大半が燃える事に期待し、とっとと撤退してくれるように祈り、俺は走って逃げた。
*
放火作戦は大成功と言っていい成果を得た。こちらの被害は全く無く、敵の物資は焼け落ち、テント群の火災はかなり広がり、もはや敵の拠点はただの空き地と化していた。これでは軍を維持できないだろうし、向こうは短期決戦か少なくとも人員を削減し、次の補給を急がなくてはならない。
『まだ終わりじゃない。次だ...』
次は洞窟のエルフ達の救出だ。これにはこちらの被害も覚悟しなければならず、最悪作戦が失敗し、今居る12人のエルフが討たれ、包囲に穴すら開けられずに全てのエルフが捕まるか殺されるかもしれない。もうこれは賭けだ...。
『まぁ、とりあえず準備だな』
ロケット花火はまだかなり残してはいるが、もう火炎瓶の材料が全く無い。補給しに地球に戻っても良いが、買いに行ってる間に状況が変わる恐れもある。ロケット花火だけで強行するのも手だが...。
『あった方が良いよな~』
ガソリンが燃えたら火柱が立つ。それが広範囲となれば通ることも消すこともできず、敵の包囲網を崩す事が可能になる。被害を減らすなら買ってきた方が良いだろう。
「レナ、俺は1度帰って火炎瓶の材料を調達してくる。早くても2時間はかかると思うけど、その間こっちは任せるぞ?」
「はい、了解しました。お任せください」
そう言うと俺は地球へ戻り、大急ぎでホームセンターとガソリンスタンドを周り、火炎瓶の材料を集め、即座に帰宅する。
そして俺は汗だくのまま遺跡に戻る。
「んっ、おう...待たせたな...」
ゲートの前にはレナを含む5名のエルフが待機しており、そこで地図を広げて作戦会議をしていた。
「司馬様、お早いご到着で。お疲れ様です...」
「ああ、疲れた...もう後は任せても良いか?」
「はい、後は我々にお任せください」
冗談で言ったつもりが後はやってくれるという。
『え~どうしよ...今回は任せるか?』
実際凄く疲れた。それに別に俺は戦闘狂ではないし、自殺志願者でもない。今回の洞窟からのエルフ救出作戦はレナ達に任せる事にする。
だが、ただ待ってるのも悪いし、俺はエルフ達が戦ってる間に飯を用意しようと考える。
「おう、任せた。火炎瓶とかロケット花火は全部使って良いから、頑張れよ。俺はその間に向こうで食料とか調達してくるよ」
「はい、ありがとうございます。皆お腹を空かせてると思うので助かります」
「じゃあ、後でな。2時間ぐらいで戻る」
そう言うと俺は再びゲートを潜り地球へ戻った。
*
家に戻るとシャワーだけささっと浴び、電子レンジに冷凍スパゲッティーをぶちこんで服を着替え、その間にできたスパゲッティーを食べながらエルフ達に用意する食料の件を考える。
まず最初に思い付くのがカップラーメン。だが100人分...多少は減ってしまうだろうが、その人数分のカップラーメンを独占して買っては周りの迷惑になるだろう。そんなこと言ってられない状況ではあるが...。
『やっぱり米か...いや、炊くのが大変だな』
米は無理だ。普通の家庭用炊飯器しか置いていない家では、とても100人前は時間が掛かりすぎて、全員に食べさせられるのがいつになるか分からない。
『やっぱカップラーメンか?』
これはホームセンターの店員さんに在庫を確認してもらって箱買いするしかなさそうだ。
そう思い、とりあえず俺はリュックを背負って自転車でホームセンターへ向かうとーー。
「ーーはい、倉庫になら沢山ありますよ。幾つ用意すれば良いでしょうか?」
あるらしい。そして店員さんに100個と言うと、直ぐに段ボール2つに入れられて運ばれてくる。自転車の後ろに1つ乗せられるかどうか...。
「あ~これは自転車じゃ2往復は必要だな...」
「自転車でお越しでしたか...でしたら店長に車で運んでもらえるように頼んできましょうか?これだけ買ってもらえたなら喜んで運んでくれると思いますよ?」
「マジすか?なら、お願いできますか?」
そう店員さんが言ってくれたのでお願いすると、店員さんはトランシーバーで店長を呼び出す。
「あっ、来ましたよ。あの方が店長です」
そう言われ見てみると背の低いオジサンが手を振りながら走ってくる。あの人が店員か。
「待たせたね。ありがとぅね、こんな田舎じゃ自給自足できちゃう人が多いから、こんなに沢山買ってくれるなんて滅多にないんだよね~」
「ははっ、そうですか。よければもっと買いますよ?車って大型ですか?それとも軽?」
「あぁ~軽っちゃ軽だけど軽トラだから、けっこうな量運べるよ?その段ボールのサイズなら10...いや、12はいけるかね?で、買ってくれるのかね?」
おお!段ボール1つに50個ぐらいカップ麺入ってるから、12箱なら600個も運べる。1日3食、100人のエルフ達でも2日は食わす事ができる。
「はい、運んでもらえるなら喜んで買いますよ!在庫ってまだまだあります?追加で500個ほど買いたいんですけど」
「えっ、えぇ...ありますけど、冗談のつもりだったのに本当に買ってくれるとはね...」
なんだろうが俺は真面目だ。そして俺は追加で500個のカップ麺をいろいろ味を別けて買うと、店員さんと一緒に外の軽トラまで段ボールを運び込み、それが終わると次いでに自転車も荷台に乗せ、店長さんと軽トラに乗り込む。
「それで?どこへ向かえば良いのかね?」
「あぁ~あの山の山道を登った先に家があるんで、そこまでお願いします」
「あ~あそこね。もしかして君、司波さん家のお孫さん?」
「えっ?はい、そうですけど?爺ちゃんの知り合いだったんですか?」
「ん~知り合い...っちゃ知り合いかね?こんな田舎じゃ皆が家族みたいなもんだからね。たぶん全員と話した事があるしね。それはそうと司波さん亡くなられたんだってね。元気そうだったし寿命かねぇ?」
「はい、寿命って聞いてますよ。そんで爺ちゃん死んだから家を引き継いだんです」
「へぇ~偉いね。若い人が田舎じゃ大変でしょ」
「ええ、まぁ...」
家の押入れが異世界に繋がってて、エルフと一緒に戦争やってんだ。めちゃくちゃ大変だわ。
そして暫く話してると家に到着し、荷物を降ろして店長さんにお礼を言うと俺は家に入った。
*
さて、どうするか。カップ麺を食べる為に必要不可欠なお湯の作り方を考える。それも100人前分の量のお湯だ。今度ドラム缶でも買うべきだろうか?後でGanzisにあれば注文しておこう。
それはそうと今日明日のお湯の沸かし方だ。
『普通に鍋でこつこつやるか?』
それだと全員に食べさせるのが遅くなる。その間に戦闘でも始まれば食えずに戦う奴も出るだろう。普通、子供に優先的に食べさせるだろうし、1番に戦う大人達が食べられないのは不味い。
『ドラム缶なら一気に...そこまでいかなくても時短する方法は...』
家に保温ポットとかそういう物は無い。あれがあったら事前に沸かしてお湯を貯めておけるのだが、今回は無理だ。
『仕方ない...ガス代もったいないけど...』
いつ戻るかも分からないエルフ達の為に順番で大量の鍋を温め回す。人生で1度もやった事のない無駄の多いこの方法を使うしかなさそうだ。
「よしっ、やるか」
そうして俺は鍋に水を入れて温め回し、時々ゲートから顔を出して遺跡にエルフが居ないか繰り返してると、暫くしてエルフ達が戻ってきた。
次の投稿は8月10日の土曜日(予定)です
よければブクマ、評価よろしくお願いします