5話
遅くなりました~前回の投稿から6日、活動報告で週1投稿と言ったので投稿するかどうか悩んだのですが、ただでさえ無名作家で人気も無いだろう小説の大切なブクマ数が減ってた絶望と危機感により投稿しようと決めましたw
荷物が届いた。こんな田舎に商品を注文して1日で家に到着だ。そして問題が起きた。今はまだ昼間、いまから異世界に行ってもやる事が無いのだ。
作戦決行は夜、ロケット花火を打ち上げて敵軍の注意がそれた隙に火炎瓶を投げ込むのだ。
『暇だな...早く冒険してぇ~』
異世界を自由に冒険。近い内に交渉で人間の街に行けるだろうが、全く気は抜けないし、もはや冒険どころか戦闘に近い。早くエルフの平和を確保し、地球の品での貿易で利益を出して技術書や物資を買い込み、エルフや味方に供給して研究させる。俺の冒険はこの後ぐらいだろうが、いったい何年掛かることやら...。
それに俺の今後の立場も気になる。下手に高い地位なんて得たら命を狙われかねないし、低すぎてもやれる事が少ない。ある程度は発言の力があって、自由行動ができ、命を狙われる程でもない地位...。
『...あぁ~わかんねぇ。成り行きに任せよ』
何事も成り行きに任せるのが一番だ。そうすれば大抵は上手く事が運ぶ。それに俺は運が良いのだ。心から望めばそうなるし、危ないときも無傷で助かる。大きな怪我なんて骨折すらしたことない。
『まぁ、なんとかなる』
それよりも今だ。向こうへ行くのは夕方ぐらいで良いだろうし、いまから行ってもやる事が無い。
『あぁ~いや、エルフ語の勉強しないとな...』
エルフは俺を慕ってくれてる。だが、まだお互い距離感を掴めていない状況だ。言葉の壁は大きい。早くエルフ語を覚えて仲良くなりたいものだ。
でも正直、勉強は嫌だ。言葉が話せるようになる魔道具とかなんか都合の良い物は無いだろうか?。
『ないんだろうな...嫌だぁ~』
現実は甘くないのだーーだか逃避する事はでき、俺はパソコンでネトゲを始めた。
*
午後6時。太陽が沈み始める頃、俺は荷物を持って異世界への扉を通る。すると目に映った光景はーー遺跡に敵の侵入を許したエルフが避難を始め、殿のゴーレムが敵を文字通り凪ぎ払ってる光景だった。
『あっ、終わった...どうすんの?これ』
不味い。この状況は不味い。とりあえず地球の方に戻ろうかな?と考えるが...。
「んっ!?レナ?」
敵の兵士に捕まり、連れ去られようとするレナを目撃する。そして周りのエルフは助ける余裕が無さそうに見える...今、俺が助けないといけない。
俺は偶然近くに落ちてた弓と、2本しか矢が入ってない矢筒から矢を抜き取ってレナの後を追う。
幸い敵に見られはするも、俺が普通の人間だと分かると見逃され、レナを担いでる兵士は大暴れするレナのせいであまり速くはなかったので、じりじりと俺は距離を縮めていく。
『矢は2本...いけるか?』
弓を使うのは初めてではないが、やったのはかなり前、旅行先のアーチェリー体験だ。腕前はべつに悪くはなかったが、良くもなく、敵に近付かないと当たらない。そしてそんな事よりも...。
『なんだこれ?玄が重すぎるっ!』
引けばする。が、腕がぷるぷるする。これでは狙いなんてつけられない。無理だ。
だがしかし、やるしかない。俺は急停止すると弓に矢をつがえ、引き絞りーー射つ。
『駄目だ...狙えねぇ...』
放った矢は敵への射線上、近くにあった木に突き刺さって残りの矢は1本となった。
これは無理だな。そう思った俺はバッグの中のナイフを思い出すが、その前にこの邪魔な弓と勿体ない矢を、どうせ捨てるならとダメ元に大雑把な狙いで全力を込めて放つ。
「当たれぇ!!」
全力で放たれた矢はピンッ!と音を鳴らし、変に力が加わったのかくねくねと揺れながら、安定してないので上に飛んでいって見えなくなった...っと、思ったら突然上から強風が下へと吹き、落ちてきた矢が敵のうなじに吸い込まれるように綺麗に突き刺さる。
「...ははっ、運か?いや、精霊かな?」
レナを、友達を助ける為に精霊が力を貸してくれたのかもしれない。ほぼ無風状態で、あんな強風が都合良く吹くなんて考えずらいしな。
「おい?大丈夫か?」
「はい、司波様...おかげさまで...」
「間に合って良かった。それよりその怪我、投げ出された時に擦りむいたのか?歩けるか?」
レナはあちこちから血を流していた。致命傷のような大きな傷はないが、剣で切り合ったりもしたのだろう、擦り傷以外にも、切り傷や痣も見られた。現代人なら間違いなく病院送りだろう。
「はい、今は座ってる暇などありません...」
「おっ、おう。そうか...で、どうする?この後のプランは決めてあるのか?」
「はい、とりあえずですがーー」
レナから話を聞くと、このあと近くの洞窟へ逃げ込む予定で、今は子供を逃がす為の時間稼ぎをしてたらしい。そして体勢を立て直した後、俺が行き来するゲートがある遺跡を奪還する予定だったとか。
これは変なタイミングで来ちゃったらしい。これでは地球の物資を取りに戻れないし、あの時ゲートを引き返すのが戦略的には正しかった。
『あんなの見て見捨てられないしな...』
だがまぁ、結果としてレナを助ける事ができた。これは素直に喜ぶべき事だ。うん、良かった。
「状況は分かった。で~俺達も洞窟行くのか?」
「いえ、我々は別行動で、本来の作戦を進めるべきだと思うのですが、どうでしょう?」
本来の作戦。敵の物資の放火だ。このままでは、エルフが全員捕まるのも時間の問題なので良いとは思うが、下手に敵を刺激して今攻められたら終わりだ。だが、他に今できる事はないし...。
「そうだな...でも先に仲間を増やしたい。正直に言うといま居るエルフを全員救うのは無理がある。だからまだ戦ってるエルフを引き連れて、どこかの国と同盟を組むなりするのが最善だと思う」
「皆を見捨てて逃げろと言うのですか?」
「...最後に放火作戦だけやって敵の動きを見るぐらいは良いけど、向こうが攻めてきたら俺達だけでも逃げるしかない。全員捕まったら終わりだぞ?」
エルフが捕まったらどうなるか。そりゃ、エッチという表現ではもはや間に合わないとても凄いことをされる。それを想像したのかレナが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「はい...すみません。感情的では駄目ですよね」
「そうだな。それより仲間を集めるぞ?俺は言葉を知らないし、レナの力が必要だ」
そう言うと無言で頷き、納得はできないのか不満そうな表情で俺達は戦場へと引き返した。
*
結果として男8人、女3人のエルフを戦場で仲間にする事ができ、俺達は合計13名の集団となった。
これでレジスタンス程度の作戦継続能力は維持された訳だが、状況は当初よりも悪化している。
戦力の2分化。それも大半を占める片方が洞窟へと逃げ込み時期に包囲されようとしている。既に遺跡は敵に占領され、遅くとも明日には洞窟は包囲される。一応時間はある。だが、拠点を失った今、洞窟からどこへエルフを逃がす?安全な場所などない。とはいえ洞窟に居ては包囲され、食糧もないエルフ達は投降するか、死しか選択肢がない。
「レナ。エルフは追い詰められたら大人しく投降するか?それとも徹底抗戦か、または死。どれを選ぶと思う?」
「徹底抗戦...だと思います...」
徹底抗戦。というより特攻に近いだろう。正直、エルフを救うのは良いが、それが自殺志願者と化してては救いようが無い。まだ言葉も交わした事すらないレナ以外のエルフがいくら死のうが興味は無いが、数字としてこれ以上の戦力低下は避けたい。
だが、考えてみれば100人程度の中途半端な人数より、今の13人という少数の方が動きやすくて良いのではないか?という邪な考えが浮かぶ。
『いや、でもな...』
エルフは強い。つい先ほど敵を魔法で焼き殺したり、斬撃のような技を飛ばして敵を纏めて切り裂く場面を目撃したのだが、エルフはかなり強かった。いや、エルフというより魔法が強い。敵の人間にも魔法使いが居たのだが、エルフと似たような魔法を使っていた。
そして敵の魔法使いの人数だが少なかった。今回は攻勢に来てるのに“少なかった„。これは人間側の魔法使いの数が相当少ない事を意味し、同時に殆どの者が魔法を使えるエルフの価値を上げる事実だった。そう簡単にエルフは捨てられない...。
『少数精鋭か、子連れで食糧難の精鋭達か...』
食糧問題。これは遺跡を奪還して俺がなんとかするか、敵の物資を略奪すれば解決する。だが、リスクが大きい。エルフは魔法が使える?そんなの人間の数の暴力の前には無力だ。魔力が切れたら魔法は使えないみたいだしな。
エルフが強い事は知ったが、どっちにしろ敵と正面から戦って勝てる見込みは無く、森から逃げれば直ぐに捕まり、籠城は不利になるだけ。
『やっぱ少数精鋭か...いやっ』
この局面を乗りきればいける。敵を1度森から追い出し、防衛の準備を整え、地球で物資を買い込み、エルフ達と地球の技術の再現を進める。ここまで出来れば後はどうにでもなるが、こうするには何より放火作戦を成功させ、敵が退くまでの間を耐えきらないといけない。
つまり今居るエルフは全員生かす!
敵の物資の放火作戦を成功させる!
敵の攻勢を耐えきるだ!
*
エルフ達に遺跡の奪還、または置いてきた空き瓶とガソリンの回収作戦をレナを通して伝える。
すると仲間を救う為にはやるしかないエルフ達はこれを了承し、俺達は準備を始めた。
やることは単純。死体から持ってる物資を回収したり、落ちてる武器を広い集めるのだ。
『...少ない』
1時間ほど手分けして集めた結果ーー
弓 8張
矢 33本
剣 13本
ナイフ 13本
剣とナイフは全員分集めたが、弓が8人分。それも矢が使うやつ1人に4、5本だけだ。少ない。
「遺跡に敵は何人ぐらい居るんだ?」
「はい...今は100人ほどが居ますが、時期に物資を持って続々と増えていくでしょう」
遺跡に今はとりあえずの見張り役としてだろう100人ほどを残して敵の大半は本陣に戻っているらしい。だが、敵の本陣より遺跡の方が洞窟に近いので敵は移動してくると予想される。
やるなら早い方が良いな...。
「よしっ、行こう。なにも敵を全滅させる必要も無いし、荷物を取りに行くだけだ」
「はい、頑張りましょう」
レナ以外の言葉の通じないエルフとも頷きあって決意を共有し、俺達は遺跡へと向かった。
遺跡に到着する。言ってた通り敵の数は少ない。そして遺跡中央にあるゲートの前には敵が集まっており、開いたままの先に手を伸ばしたり、ちょっと入って驚いて戻ってきたりを繰り返していた。
『なにやってんだ?あいつら...てか入れるんだ』
現地人がゲートを通れる事が発覚した。エルフ達は全く入ろうとしないので放置してたが、普通に通れるらしい。地球でも魔法は使えるのだろうか?。
いや、今はそれよりもーー。
「おいっ、今がチャンスだぞ。攻撃開始だ」
「はい!#$%@§¥」
レナが他のエルフに攻撃を指示すると、ゲートに夢中になってなんの防御もしてない兵士達に矢が次々と突き刺さる。20人ぐらいは倒したか?。
「行くぞ!荷物を確保する!」
「#$%@§¥」
全員が剣を抜き、ゲートの前に放置してある荷物を確保しに走る。だが、敵もやられっぱなしではない。向こうも剣や槍を持って走ってくる...がっ。
「#$%@§¥」×12
衝突前にエルフ達の魔法が放たれ敵は多数の死者を出す。そして追い討ちをかけるように体の一部が無かったり、ほぼ瀕死の敵へ剣を突き刺す。
そしてその中には俺の姿もある。
『うわぁ...スルッと刺さるんだ...』
敵に突き刺した剣は思ったよりも簡単に衣服を切り裂き、皮膚を貫いて体内へ侵入する。
『こんなんで人は死ぬんだな?』
剣を引き抜くと血が吹き出し、剣を滴る血を見て初めて人を殺した実感が沸くが、別に罪悪感などは感じなかった。ゲームのやり過ぎだろうか?。
まぁ“そんなことより„も俺は荷物へ急ぐ。
『よしっ、確保。1番足手まといは俺だし、とっとと運んでーー』
段ボールに入った荷物を両手で抱えて逃げようとすると、近くにいた死に損ないの兵士が剣を抜いて俺に斬りかかろうとするがーー目の前で魔法の炎に直撃し、火だるまになって転がる。
「ありがとう!レナ!荷物は確保した!どうする?逃げるか?このまま制圧するか?」
「この調子だと制圧できそうです。このまま制圧しましょう!」
レナがそう言う頃、誰かが魔力を補給したのか、殺人ゴーレムが歩いてきて残敵掃討を手伝ってくれる。間近で見ると凄い。殴られた兵士は壁まで飛んでいき、なかには内蔵や脳ミソを撒き散らす奴も居た。あんな風にはなりたくないな...。
次の投稿は8月5日の月曜日(予定)です
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