プロローグ とある少年の決意
「さすがに火野くんと付き合うのはあり得ないよ~。だって火野くん……頭悪いじゃん」
「あははは! あんなバカと付き合ったら、将来絶対苦労するよね。てかアイツまともな会社に就職できんのかなぁ? 高校にすら合格できなさそう」
「うん……友達としてならまだいいけど、彼氏にするなら頭が良くて頼りがいのある人がいいなぁ。うちのクラスだったら浅野目くんとか!」
「わかるー! それだとさ、2組の木村とかもマジ良くない? イケメンで運動神経抜群。おまけに、この前の中間試験学年6位だったらしくて──」
中学三年生のとき、僕は密かに想いを寄せていた女の子にフラれた。
というか、告白する前に失恋した。放課後、教室に残っていた彼女と、クラスメイトの別の女子との会話を偶然耳にしたときに。それはもうこっぴどく。
失恋の理由は単純。僕がどうしようもなく「バカ」だったから。
当時の僕は授業中に睡眠。帰ってきてからが一日のスタートで、夜遅くまでゲーム三昧みたいな生活を送ってたから、授業に付いていけなくなるまでにそう時間はかからなかった。定期テストの学年順位は常に最下位から数えて2~3番目。平均点に達してた教科なんてあったっけ?
「バカだからフラれる」という大変ショックな出来事を経験した僕は、やがてある一つの目標を設定したのだった。
「大学受験のときは猛勉強して絶対東京大学に合格する! そして、モテモテになって、僕のことをバカだと言った中学校時代の女子たちを見返す!」
うん。アホだ。アホすぎるぞ自分。学年で(ほぼ)最下位の僕が逆立ちしても東大に入れないことなんて、太陽が地球の周りを回っているのと同じくらい当たり前なのに。……うん? 逆か? まあいいや。
そんなこんなで、僕はその日から心を入れ替えて勉強に打ち込んだ。三度の飯よりも大事にしていたゲームたちは、親戚の男の子にタダでくれてやった。すべてはモテモテな大学生活のために!
いきなり勉強を始めた息子を「奏真、なにか辛いことでもあったのか……?」と心配していた父親に土下座で頼み込み「進〇ゼミ」を始めた。もしかしたら部活で気になるあの子と急接近できるかも、と信じて!(※できませんでした)
高校に入ると同時に東〇ハイスクールに入塾し、部活にも所属しないで毎日のように勉強しに行った。失恋の屈辱をエネルギーにして、それもう頑張ったのだ。
そして、時計の針は進み──