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入団希望者現る。

1000年1日目を迎え、団員の歳が増えて成長もした。

・フィリン19歳 ・ガルド23歳 ・ケーラ17歳 ・ニック13歳 ・ゴードン 51歳

ゴードンの衰退期まであと6年

 1000年5日目


 千年祭が終わり街は再びいつもの日常へと戻った。あのドラゴンを退けた事が噂となって入団者が増えた。あの出来事で脱退希望者もいたが、真実を他人に広めないという約束で承認した。

この世界には誕生日が存在しないのか、皆は1日目には1つ歳を取っていた。そしてそれぞれに成績が上昇した者もいれば変わらない者もいた。そして今僕らの問題はというと...

「ニック!また買い食いしたのか。そんなんじゃいざという時に動けないだろう!」

フィリンがニックを叱る。ガルド達に聞くとニックは入団した時から注意を受けているそうだ。

他の団員達もニックには手を焼いているそうだ。彼の力不足を他の誰かが補わなくてはならないので、僕の予測以上に団員達の疲労が溜まっていた。

そんな時、僕らの元に1人の少年がやって来た。

「すみません!この街に自警団があると聞いて遥々フォレスの村から来ましたリーフと申します。入団希望です。」

逆立った髪型に小麦色のヘッドバンドを付けた少年だった。僕は彼を能力を確かめた。


【リーフ 15歳 アーチャー】

・体力 20 ・攻撃力 6 ・間接攻撃力14 ・素早さ6.0 ・衰退期まで 30年


彼の能力と職種に僕は嬉しかった。もしも彼が入団したら主力になることは間違いないであり、この団にはいなかった遠距離攻撃者だったからだ。

「僕は弓使いです。故郷で腕を鍛え、この団の噂を聞いてやってきました。今はこの街の近くにある村の宿にいます。」

「ほほう弓使いか。ところでお主弓はどうしたのかの?まさか故郷に置いて来たのか?」

ゴードンがリーフに尋ねる。

「えっ?ああしまった!宿に置き忘れました。日を改めてまた来ます。」

リーフは顔から火が出るくらい赤面した。

「分かったよ。君の事は団長にも伝えておくよ。僕は副団長のスカイ、よろしくね。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。では失礼します。」

そう言い残すとリーフは急いで宿へと戻って行った。

すると住民の一人が僕らの元へ駆けつけて来た。

「おおい、この近くで魔物が現れた。何とかしてくれえ。」

「何だって、今動けるのは僕らしかいない。スカイ、ゴードン、ニック、僕らで討伐するぞ。」

フィリンの指示に僕はあの女性の言葉を思い出した。

『あの者は切り捨てなさい。あなたがあの団をそして世界の事を思っているのなら。』

僕はフィリンの指示に反論した。

「フィリン、ニックの代わりに動ける団員を連れて行こう。何か嫌な予感がする。」

「何を言っているんだ。皆疲れているんだ。十分に戦えるのはもういないんだ。」

「フィリンの言う通りじゃ。どうしたスカイよ。いつものお主らしくないぞ。」

「大丈夫だよ副団長。オイラだって強くなっているんだし、それに今日はとっておきがあるんだから。」

ニックが皮袋から木の実を取り出す。

「これさえ食べれば腕力十倍、行商人が格安でオイラにくれたんだ。」

ニックは満面の笑みを浮かべて自慢するが、僕は呆れを通り越して怒りが爆発した。

「そんな都合の言い物がある訳ないだろ。この際だから言っておこう、君がいると迷惑だ。そして君はもうこれ以上強くなれないんだ。」

僕は我に返った。誰にも言ってない事を言ってしまった。フィリンとゴードンは驚きの表情で僕を見た。そしてニックは今にも泣き出しそうな顔になっていた。

「と、とにかくニックは本部に返ってこの事を団員に報告。動ける者がいたらこっちに来てもらうように頼んでくれ。魔物は僕ら3人で何とかする。」

フィリンはそうニックに告げると、振り返らずに魔物が現れた場所へと走り出した。

「待ってよ団長、オイラも戦えるよ。今度は足手纏いにはならないようにするからさあ。お願いだよお。」

ニックは涙ながらに叫ぶが、誰も振り返る事はしなかった。


 魔物は何とか討伐出来たが、僕はフィリンと言い争いをしていた。

「スカイ、何であんな事を言ったんだ!ニックが強くなれるかはこれからじゃないか!?」

「でも事実、ニックの力不足で他の皆が疲弊してるんだ。それに僕らには時間が無い事を忘れてはいないだろうね。」

そう、あのドラゴンとゼオンが再びこの街に攻めてくる事だ。新しく入団する者にはこのことを必ず伝えており、それを承知した上で入団している。

「スカイ、ニックはフィリンに憧れて入団したのよ。確かに手のかかる子だけど、まだ分からないじゃない。」

「いざという時に動けない団員が本当に必要かい。」

ケーラはニックを擁護するが、僕は認めない。ニックよりも優秀な人材がいるからだ。

「おいスカイ、いくら副団長だからっていい気になるなよ。俺たちはあの時お前を追い出そうとはしなかったんだぞ。」

「僕がいてもいなくても、奴らがこの街に攻めてきたかもしれないじゃないか。」

ガルドが怒りの表情で僕の胸倉を掴んだ。けど僕は無表情でガルドに反論した。

その時本部に一人の訪問者が来た。

「すみません、入団希望で来ました。今度はちゃんと弓を持って来ました。」

リーフが恐る恐る入ってきた。そういえばまだフィリンに彼の事を紹介していなかった。

「入団希望?ごめん、僕には初耳だったよ。折角来て頂いて悪いんだけど。」

フィリンはすすり泣きしているニックを一目した。するとガルドがフィリンを疑った。

「おいフィリン。まさかお前もスカイと同じなのか?リーフとニックを天秤に架けているのか?」

「フィリンよ。団長はお主じゃ、お主が決断するのじゃ。」

フィリンは目を閉じ腕を組んで考えた。そしてフィリンの決意が固まった。

「ニック、今日限りで荷物を纏めて脱退しろ。お前の代わりにリーフを入団させる。」

「そっ、そんなあ!オイラ何でもするから、ここにいさせてよ。」

ニックが泣きながらフィリンにしがみ付いて懇願する。

「すまないニック。スカイの言う通り、戦力にならない者に寝床を与える余裕は無いんだ。」

「団長ぉー!」

フィリンはニックを振り払い本部の奥へと向かった。誰もニックを慰める事が出来なかった。

「皆、今まで迷惑かけてきてごめんよ。オイラやっぱ、騎士には向いてないみたいだから違う道に進むよ。」

ニックは早々に荷物を纏めた。その時ケーラが何かに気が付く。

「待ってニック、あなたの私物がまだ残っているでしょ。」

「いいんだ。あれは団長が処分したと思うからさ。」

するとフィリンが分厚い紙の束をニックに渡した。

「ニック、これはお前の宝物だろう。これからは好きなだけ買い食いしてもいい。お前はお前の出来る事をやればいいんだ。」

「分かんないよぉ。オイラには、どういう意味か分かんないよぉ!」

ニックは泣きながら本部を後にした。僕は今になって自分の発言を後悔した。もっと違う言い方が出来たのではないだろうか?


 僕らは新たな方針を決めた。優秀な人材を集め、団員の入れ替えを今後も続ける事を。団員の採用担当は僕が選ばれた。ニックとリーフを入れ替えた事が間違いでない事を証明する為だ。

そして僕らはこれからも魔物を討伐し続ける。あの男が再び現れるその時に備えて。


退団者 ・ニック

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