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鉱山の町 バルトウェイ

 気が付くと僕は門の前に立っていた。

そして僕の恰好が前世と全く同じであることに気が付いた。唯一違うのは背に僕の背丈以上の大剣があることだ。

ホントに異世界へ来てしまったらしい。恐らくこの世界は産業革命が起きる前の前世と同じだと分かった。取り敢えず門をくぐり街の中へと入った。


 さてまず第一に資金を稼ぐ方法を考えねばならない。売れるものといえば大剣とこの服しかない。この世界で戦士という職業に就いたからには、その職に合う仕事を見つけなければならない。

そのためにも情報収集は欠かせない。ゲーム等やったことは無いが、こういった場合は酒場へ行くのが正論だ。


 「戦士だって? んなもんこの街にはうじゃうじゃいらあ。さっさと辞めて真っ当な職に就いた方が身のためだな。」

いきなり心が折れそうになった。確かにあの時の彼女も戦士は珍しい職業ではないと言っていた。試しに騎士や聖騎士の事を聞いた。

「騎士はこの街にはいないね。いるとすれば王都だな。聖騎士なんて奴がこの街にいたら、王都のお偉いさんが真っ先に連れて行っちまうよ。」

やはり性別を変えてでも聖騎士になった方が良かったかなと思ったその時だった。

「いや、騎士ならこの街にもいるぞ。ほら、あの連中だよ。」

「そうだった。あいつらの中にいたな騎士が。おい若いの、良かったなぁ。あんたにぴったりの仕事先が見つかったよ。」

客が笑いを交えて僕に就職先を勧めた。

どうやら僕の就職先はあまり評判が悪いらしい。


 酒場であった炭鉱夫の話によると、この街は"バルトウェイ"と言い、自警団があるらしい。

この世界では魔物が現れるらしいがここ数10年は平和が続いており、人々は彼らを無用の長物のように扱っている。

僕は自警団本部の入口前まで来た。するとそこから一人の少女が出てきた。

「どうしたの?私たちに何か御用?」

茶髪のポニーテールをした少女が僕に話しかけてきた。優しくて可憐な人だと思った次の瞬間だった。

「さてはあなた、私たちをバカにしに来たのね!この街には良くいるのよそういう連中が。」

大声で怒りの顔を僕に向けてきた。彼女の勢いに押されて僕は倒れそうになるが、誰かが僕の背中を支えてくれた。

「おいおいケーラ。こいつが俺たちの仲間になりに来たとしたらどうするんだよ。」

振り向くとそこには僕より体格のいい男がいた。オレンジのバンダナに小麦色の肌。僕は直感でこの人は僕と同じ戦士であると感じた。

「えっ?やだあたしったら、とんだ早とちりだったわ。ごめんなさい。」

彼女は深々と僕に謝った。

「お前さんこの街じゃみない格好だな。どこから来たんだ? 王都からきたようには見えねえが。」

「いいじゃないガルド、入団希望者ならどこの誰だって構わないわ。とにかく中で話をしましょう。」

ケーラが僕とガルドの背中を押して中に通した。

ここに騎士がいるのは本当なのだろうか?


約30分後


 「僕は一応この自警団の団長を務めている。フィリンだ。これでも一応騎士なんだ。」

好青年という言葉がピッタリ合う人物だった。フェンシングのような剣と盾を持っている。盾には恐らく王都の紋章らしきものが付いていた。

「フィリンよ。おぬしはわし等の代表なのだぞ。一応という癖は直さぬか」

この中で最年長とも言える老人が彼を注意した。この老人はゴードンという僧侶だと知った。

「おいらはニック、フィリンさんに憧れて入団したんだ。」

彼もフィリンと同じ騎士らしいが、最年少であるせいか頼り無さそうだ。

「僕は...スカイ、スカイ=フィールドです。戦士ですが何卒よろしくお願いします。」

天野という名前をただ英語にしてみただけの簡単な名前にした。

「俺たちはバルトウェイを拠点にこのあたりに出没する魔物を退治する自警団だ。だがここ数年は魔物の出現が無く周りからは物好きの集まりのような扱いを受けてはいるがな。」

「街の皆は分かってないのよ。魔物が2度と現れないって保証はどこにも無いのに、私達がいなくなったら誰がこの街を守るっていうのよ。」

ガルドとケーラの話によると最後に魔物が現れたのは今から10年前らしい。当時はフィリンの前に団長がいたらしいが、病に倒れ後任をゴードンではなくフィリンに任せたそうだ。

「もうすぐ千年祭が始まるってのに魔物が現れたら大変だよなー。沢山ご馳走を食えるっていうのに。」

ニックが涎を拭いて呟く。

「千年!?今は何年何月何日なんですか?」

おもわず声を上げて驚いてしまい、自警団の皆を驚かせてしまった。

「今は999年の31日目だよ。」

僕の問いにフィリンが答えてくれた。

「何月とは聞いたことが無いな。儂が生まれたのは確か955年の77日目じゃな。」

驚いたことにこの世界では1日目から365日目を1年としているそうだ。

そして僕は自分が異世界から来た事を忘れていた。この世界の人達に怪しまれるような発言は今後控えるようにしないと。そう決めた矢先だった。

「大変だ。街の近くに魔物が現れたそうだ。このままじゃ街に攻め込まれちまう。」

街の人が本部に救援を求めに来た。

「分かった、すぐに行こう。ゴードン、ガルド、ケーラ、ニック、僕らが街を守るんだ」

フィリンが皆を鼓舞する。

「フィリン、僕も行くよ。何が出来るか分からないが戦力は1人でも多い方がいい。」

「そうかい、ありがとうスカイ。君は初めてだから、ゴードンにフォローしてもらうんだ。」

魔物の事も戦い方も知らないまま、僕はただ体が動くままに皆と共に走りだした。

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