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異世界への準備

 どこからか声が聞こえる。声色から女性のものと分かった。

「見つけなくては。あれが来る前に見つけ出さねば。けれども今は駄目だ。今のままではあれを止められない。」

彼女は何を探しているのだろうか?

そして彼女が止めようとしているあれとは一体何だろうか?

そして彼女は僕になのか、或いは他の誰かになのか話しかけてきた。

「集めなさい。力をつけて勇者たちを集めなさい。そしていつか・・・」

彼女が最後に何を伝えたかったのかは聞き取れなかった。


約5分くらい真っ暗な沈黙が続いた。

そして次の瞬間、沈黙を破る声が聞こえた。

「おーい!起きてるかーい!」

突然テンションの高い声に僕は驚いた。

「ちょっとちょっと!これから一番大事な事を話すんだからちゃんと起きてなきゃダメでしょー。」

起きてなきゃって言われても、僕は起きているのかどうか分からないっていうのに。

「なんだちゃんと起きているじゃないか。それならそうと早く言ってよね。」

あれ?心で思った事が向こうには聞こえているのか?ならさっき僕に話しかけてきたのも彼女なのだろうか?

「何訳の分からないこと言ってんのよ。ほら、これから大事な事を話すんだから、ちゃんと聞いてよね。これもう2回目だからね。」

どうやら別人のようだ。さっきまでの女性は御淑やかな感じがしたが、今の彼女は僕が知っている女子高生と大して変わらないかもしれない。

「今なんか不愉快な事を言われた気がするけど、まあいいや。それじゃ大事な事だからちゃんと聞いてよね。3回目だからもう言わないよ。」


 これからあなたは異世界である"職種"に就いてもらうわ。騎士、魔女、冒険者などなど、あなたの要望に合った"職種"を1つ選んでください。後でやり直しはできないから慎重に且つそれぞれの職業の長所と短所を考慮してね。


 彼女の話は以前図書館で軽く読んだ「百年戦記」と酷似している。しかし気になったのは魔法使いではなく魔女という"職種"である。

「あっ、ゴメンゴメン。向こうでのあなたの性別は、ここで選ぶ"職種"で決定するわ。」

"職種"で性別が決まる。つまりは今の僕は男性でも女性でもないということか。

「男性になりたいのなら騎士、剣闘士、冒険者など。女性になりたいのなら神官、魔女、聖騎士などがあるわ。」

騎士と聖騎士は同じに思えるが、異世界では別の職種らしい。

あれ?もしこれがあの本と同じならあの職種があっていい筈だ。

「え?戦士? まああることはあるけど、なんで?」

彼女は僕の質問に少し引いているのが分かった。この反応は体力テストの時の周りの人間のと同じだったからだ。

「戦士よりも騎士の方がいいんじゃない?それともいっそ聖騎士になってみたら?」

何故彼女は戦士以外を勧めるのだろうか?異世界では戦士は英雄のような職種ではないのだろうか?

「ぶっちゃけ戦士は使いづらい職業なのよね。体力しか長所が無いし、英雄にはなれないと思う。」

体力が長所!? 現世では絶望的であった体力が戦士になれば得られるというのか。

「あっそうそう。体力と腕力は同じ意味じゃないから気を付けてね。」

僕は迷った。体力を求めるのであれば戦士に拘ることは無い。けれどもあの本を読んで魅かれた職種は戦士だ。勉強以外に自分が自発的に何かをしようとしたことは無かった。これは新たな自分への第一歩だ。


「あなたは"戦士"を希望するのね。もう一度聞くけど、ホントにいいの?ここでの選択を後でやり直すことは出来ないのよ。」

大丈夫。僕は後悔しない。彼女が同じことを3回言わせないようにした。

「分かったわ。あなたがそこまで言うのなら、もう何も言わないわ。」

視界が徐々に明るくなっていった。

「もし向こうで会えたのなら、楽しくやりましょ。」


こうして僕の異世界への準備は整った。

そして誰かがこう語りかけてきた


{これは後に英雄として語り継がれる勇者と、名も無き英雄達の記録である。}

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