表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/81

70話 やるべきこと

「た、助けてくれ! 魔物が出たッ!」


 ギルドの外から聞こえた切迫した声。


 街中での魔物の出現……前と同じだ!

 ということはつまり、魔物というのは魔物にされてしまった人間たちってことで間違いない。


 俺たち4人は即座に顔を見合わせ、意思を統一する。

 昨日一日の休みで体調も万全、やるしかない。

 戦闘態勢をとった俺たちはギルドを飛び出した。




「グバアアアアアッ!」

「シュルルルルッッ!」

「キィィッッ!」


 外の大通りでは魔物が暴れていた。

 しかも一体じゃない。五体だ。

 本来安全であるはずの街中で魔物が力を振るっているその光景は、嫌でも俺の鼓動を速める。

 絶対にあっちゃいけないことが今まさに目の前で起きてる。

 何としてでも止める……!


「ミラッサさん、マニュ! 二人はあっちの魔物を頼む!」


 二人に指示を出す。

 ここはギルドの真ん前、冒険者は沢山いるんだ。少しでも時間を稼げばギルドの中から冒険者たちが参戦してくれて、状況はこちらに有利になる。

 なら今俺たちがすべきことは、戦えない人が逃げられるように魔物たちを足止めすることだ!


「ファイアーボールッッ!」


 殺してしまわない程度に様子見のファイアーボールを魔物に撃ち、俺は周囲の状況を確認する。

 俺たちが時間を稼いだ間に、五体の魔物にそれぞれ数人の冒険者が各々の武器を持って相手取っている。

 よし……ひとまずは大丈夫そうだな。

 ソディアの街の冒険者は皆腕利きだし、この十数秒で街の人もかなり遠くまで逃げられたはず。

 これ以上街の人に被害はでないだろう。

 あとはこの魔物たちを殺さずに上手く無力化するだけ……って、まずい!

 冒険者の人たちは、俺が魔物にされた人間を治せるって知らないんじゃ……!?

 だとしたら、魔物にされた人たちが殺されちゃう前に早くそれを伝えないと!


「皆さん聞いてください! 俺は魔物化された人たちを治せます! ですから殺さずに無力化して――」

「ウォーターブレイド!」

「俺の斧を喰らえッ! はァァァッ!」


 だ、駄目だ!

 戦闘音と混乱で俺の声が届いてない……っ!


「グバアアアアアアッッ!」

「うおっ!?」


 しかも気を抜くと俺が魔物に殺される……!

 くそっ、早く何とかしないと!


「っ!?」


 その瞬間、俺の横を眩い白銀が過ぎ去る。

 シファーさんだ。


「せあぁッ!」


 シファーさんは俺が向かい合っていた魔物を一撃で斬り伏せる。

 魔物の巨体が地に倒れ、ズシンと響く音がする。

 その地響きに冒険者たちの意識が一瞬シファーさんに集中する。

 それを見逃さず、シファーさんは冒険者たちに指示を出した。


「いいか、魔物は殺すな! 彼らはもともと人間だ! ここにいるレウスが魔物化を解く術を有している! 魔物になってしまった彼らはまだ救えるんだ! 無力化を第一目標にして戦ってくれ!」


 覇気のある、よく通る声。

 それを聞いた冒険者たちの動きが変わる。

 シファーさんはこの街で最も有名かつ最も強い冒険者だ。そのシファーさんが出す指示ならば、と冒険者たちは狙いを殺害から無力化に切り替えてくれた。


 よかった……もし俺の声が届いたところで、それが信用されるかどうかは別問題だったからな。

 その点、カリスマ性溢れるシファーさんの指示を疑問に思う冒険者はいないだろう。


 だが、俺たちに息つく暇はなかった。


「嫌だ、助けて……グラアアアアアアッッ!」


 見えたのは、人が魔物へと変貌を遂げるその瞬間。

 そして、黒いマントをつけた人影が路地裏へと消えていく姿だった。

 その姿を見て、俺はゴザさんが言っていた言葉を思い出す。


『黒マントの男が何か液体をかけてきて、それを浴びると魔物になっちまうらしい。そんなわけで、黒マントの男には気を付けろ』


 ……今の男がこの一連の事件の元凶。そう考えていいだろう。

 何が目的かはわからない。

 だけど……人を魔物に変えて人間を襲わせる?


「……許せない」


 人をなんだと思ってるんだ……ッ!


「シファーさん、あの魔物にされた人は俺に任せてアイツを追ってください!」


 本当は俺が追いかけて、ぶちのめしてやりたい。

 でも悔しいけど、俺の足じゃ確実に足手まといになる。

 シファーさん一人での追跡が一番成功確率が高い。

 怒りを抑えて、最善の行動を選択しろ……!


「わかった!」


 シファーさんは矢のような速さで駆け出していき、すぐに見えなくなった。

 あっちはシファーさんに任せる以外にない。

 俺はこっちをなんとかするんだ。

 向かい合う俺と魔物。

 ふと、俺の傍らに赤い髪が見える。


「あたしも手伝うわ。あたしが相手してた魔物のところには三人組パーティーが来てくれたから、あたしがいると返ってやりづらそうだったし。それに、レウスくんは後のヒールに備えてあんまり魔力を使いすぎるわけにもいかないでしょ?」

「ミラッサさん! 心強いです!」


 そうだ、たしかにバカスカ魔力を使うわけにもいかないんだった。

 魔力に頼らない戦い方だと俺は貧弱な剣術スキルしかない。でもミラッサさんがいれば百人力だ!


 目の前の、魔物に変えられてしまった人をジッと見る。

 少しだけ待っていてください、絶対に助けますから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] 今、更新気づきました。更新ありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ