表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
2章 <ヒール>と<鑑定>編
7/81

7話 自分の力

 ラージゴブリン。

 ゴブリンの巨大種で、通常のゴブリンの倍近い体躯と膂力を誇る魔物。

 たしかに群れを作る習性だとは聞いてたけど……ここまでか!


 目を背けたくなる醜悪な顔、鼻が利かなくなるほどの(おぞ)ましい悪臭。

 緑の肌にぼろ布を纏い、棍棒を持ったラージゴブリンはまるで原始人のようだ。

 そんな魔物に、俺たちは今囲まれている。


 現状を改めて見つめ直して、冷や汗が流れた。

 目算、五十匹。明らかに多すぎる。

 ラージゴブリンを狩るための適正ランクはD。

 なら大したことないだろって思うかもしれないけど、これはラージゴブリン(・・・・・・・)一匹(・・)に対しての適正ランクだ。

 五十匹もの数となると、この中で対応できそうなのはミラッサさんだけである。いや、ミラッサさんでも一人で全部倒すのは無理かもしれない。


「チッ、どうすんだよBランク!」


 あの態度の悪かった男でさえ、この数には普通に戦っても勝てないとわかったようで、ミラッサさんに助言を求めた。


「各個撃破していくしかないわ。もしゴブリンメイジを見つけたら、とにかくソイツを優先して潰すこと! あたしから言えるのはそれだけよ!」


 全員に聞こえるように凛々しい声を張り上げる。

 そして臆した様子もなく、ゴブリンの群れに向かって突っ込んだ。

 ミラッサさんの赤い髪が、すぐにゴブリンたちに隠れて見えなくなる。


「くそっ、やるしかねえか!」


 観念したように、男も寄ってきたラージゴブリンを叩き斬る。


「マニュ、俺たちも戦おう」

「は、はい……っ!」


 ファイアーボールは……駄目だ、使えない。

 この混戦模様であれだけの威力の魔法を使えば、確実に味方にも被害が出てしまう。

 ……それに、あの魔法はまだ少し怖い。まるで、自分の力じゃないみたいなんだ。

 なら……!

 腰から剣を抜き、ラージゴブリンへと向ける。

 俺だって三年間冒険者をやってきたんだ。

<剣術LV2>の力、見せてやるよ……!


「来いっ!」


 飛びかかってきたラージゴブリンを斬りつける。

 ……駄目だ、浅いっ!


「ギャアアアアッ! アアッ!」

「うわぁっ!」


 ゴブリンが腕払いをし、俺の剣を弾き飛ばす。

 あ、あっと言う間に武器が無くなってしまった。

 Eランクの俺じゃ、気負ったところでやっぱり倒せないのか……!?


「うあぁぁ……っ! だ、誰か助けて……っ!」


 声が聞こえた。

 一瞬だけ自分の声かと思ったけど、違う。

 このか細い声は……マニュの声!

 どこだ!? どこに――いたっ!


 マニュはラージゴブリンに細腕を掴まれ、抵抗も出来ずに涙を流していた。

 かぁぁ、と、頭に血が上るのがわかる。

 撃つしかない。ファイアーボールを。

 制御できないかもしれない? 知ったことか。

 今ここで役に立たないで、何のための力だよ!


「ファイアーボール!」


 マニュの腕を握ったラージゴブリン目掛け、呪文を唱える。

 念じた甲斐があったかは定かでないが、標準的な大きさのファイアーボールが飛ぶ。

 たかが下級呪文と油断したのか、ゴブリンは避けることもせずそれを受け。

 次の瞬間、身体の内側が瞬時に沸騰したかのようにボンっと爆発した。


「マニュっ!」


 すかさずマニュの元に詰め寄り、体をチェックする。

 深そうな傷は……よし、ないな!

 何か所か血は出てるけど、全部軽症だ。間に合ってよかった。


「れ、レウスさん、今のは……?」

「説明は後で! ミラッサさん、聞こえますか!」


 ゴブリンの群れの中心にいるミラッサさんに向けて、喉が枯れるくらいに声を出す。

 覚悟は決めた。

 俺の剣術じゃ、コイツラには敵わない。

 だけど、今の俺にはもう一つ武器がある。


「聞こえるわ! どうしたの、レウスくん!」

「ラージゴブリンを一か所に集めてください! そうすればあとは、俺が何とかします!」


 そうだ、例え棚ぼたで手に入れた力だって構わない。

 これは他の誰でもない、俺の力じゃないか。

 恐れる必要なんて最初からなかったんだ。

 受け入れるだけでよかったんだ。


「わかった、了解よ! ……あんたも聞こえたわね!? 死にたくなければ協力して!」

「チッ、わかったよ! 癪だが、死ぬよかマシだ!」


 ミラッサさんと男が協力して、ラージゴブリンたちを一か所へと集めていく。

 とはいえ男のランクだと、思い通りに相手を誘導することも難しい。


「チッ、くそっ!」

「アイスボール!」


 男が逆に襲われそうになるのを、ミラッサさんが瞬時に魔法で助けた。

 自分もゴブリンたちを相手にしながら、味方の動向まで把握してる……視野の広さが俺とは段違いだ。


 そして何とか、二人がゴブリンを一か所へと集めてくれる。


「言われた通り集めたわ!」

「こっからどうすんだよ、下手なことしたら承知しねえぞ!」


 傷を負いながら、こちらを振り返るミラッサさんと男。


「わかってます」


 一番危険な役をこなしてくれた二人に感謝しながら、俺はゴブリンたちに手の平を向ける。

 失敗は許されない。

 潜在魔力10000の力を、ファイアーボールLV10の力をここで見せてやる!


「――ファイアーボールっ!」


 掌で高熱が発生する。

 火球がみるみるうちに膨張し、地竜車の大きさを超え、ゴブリンたちの群れの大きさをも超え。


「な、なにそれ……」


 ミラッサさんが呟く声が聞こえたけれど、今はそれに返すこともできない。

 制御に全神経を注がなければ。

 暴発したら、確実に四人とも死ぬ。

 でも恐れない。これは俺の武器だから。


「いっ……けぇぇぇっっ!」


 ラージゴブリンたちに渾身のファイアーボールを撃ち放つ。

 焼き尽くせ、ファイアーボールっ!


「グギャア!? グガガ――」


 やったか!? ――と、思うまでもなかった。

 ラージゴブリンたちは驚きの声を上げながら、ファイアーボールが直撃した瞬間にその存在を消した。

 後に残ったのは、怪我を負いながらも無事だった俺たち四人。それと、地面に着いた真っ黒な焦げ跡だけだった。




「……はぁ~っ!」


 き、緊張したぁ~!

 失敗しなくて本当によかった。

 ……本当に、俺がラージゴブリンを倒したんだよな。

 なんか実感がわかないというか……今までの俺じゃ絶対に勝てない相手だったしな。

 それが一撃で倒せるって、やっぱりレベル10のスキルってすごいや。しかも五十匹一気にだからね。


「レウスくん。ちょっといい?」

「あ、ミラッサさん、お疲れ様でした。なんですか?」

「……今の一撃、説明してくれるかな?」


 あ、目が本気だ。

 どうやら僕の一撃は、現役Bランク冒険者から見ても規格外のものだったらしい。

 ど、どうしよ……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ