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68話 一日たって

 ソディアの街を歩く俺。そしてマニュとミラッサさん。

 俺たちの表情は明るく、そして足取りは軽やかだ。


 昨日、湖でリフレッシュしたことで体にも気持ちにも余裕が出来たからな。

 俺に至っては、おまけに新しいスキルまで習得しちゃったし。

 太陽が笑いかけてくれているように見えちゃうくらいに好調子だ。


 大きな太陽、青い空、白い雲、涼し気な風。

 うーんっ、何もかも気持ちいいね!


「レウスくん、ストップストップ。もう着いてるわよ?」

「うぇ? あっ、本当だ」


 自然を全身で感じている間に目的地のギルドに着いちゃってたや。

 ミラッサさんとマニュはギルドの入り口の方にいるのに、俺だけ通り過ぎちゃってる。


「ごめんごめん、つい気持ち良くなっちゃって」

「レウスさん、上の空で直進し続けてて面白かったです」


 マニュがくすりと笑って、口元に袖余りな手をあてる。

 うぅ、恥ずかしいとこ見られちゃったなぁ……。


「レウスくんの真似したげよっか。……ぽかーん」

「そ、そんな間抜けな顔してませんから!」


 それじゃ金魚じゃないですか!

 え、そんな顔してないよな……!?


「幸せそうで何よりです。ささっ、行きましょう行きましょう」

「おっ、今日のマニュちゃんは張り切ってるわねー?」

「ふふふ、シファーさんとの湖で英気を養いましたからね。今日のわたしは頑張りマニュです」


 そんな会話をしつつギルドへ入っていく二人に、楽しそうだなぁという感想を抱きつつ、俺も後を追った。


 今日ギルドに来た用事は、ここソディア近くの狩場の情報を得るためだ。

 今まではゴザさんからの頼まれごとだったから半ば必然的にシファーさんが見てくれている環境だったけど、これからはそうじゃない。

 正真正銘俺たち三人だけでどこまでやれるか。

 それを確認するためにはやっぱり狩場に出るのが一番だ。


 ただ、狩場に出るにはそれなりに準備もしなきゃならない。

 シファーさんから聞いて情報が分かっていた時と違って、今の俺たちにソディアの魔物についての情報はほとんどないからな。

 だからこうして前もってギルドを訪れて、狩場の情報を得ておこうっていう算段をつけたわけだ。


 付近の狩場の情報っていうのはギルドで整理して纏めてある。

 ギルド内でそういう制度が制定されているらしい。

 個々の冒険者レベルでしか知られていないような細かいところは載っていないこともあるが、大まかな情報はギルドで調べることが出来る。

 ニアンでもありがたく使わせてもらっていたし、ここでも利用しない手はない。


 ギルドに入ると、そこは和やかながらもどこか剣呑とした雰囲気も持ち合わせていて、ピリピリとした刺すような威圧感が体に纏わりついてくる。

 シファーさんには及ばないまでも、彼らもまたこの地まで辿り着いた強者なわけだからな。


 ただ、シファーさんと一緒にいた俺たちはこのくらいじゃビビらない体になったぞ……!

 俺とミラッサさんは勿論、マニュも平気な調子でギルド内を歩いている。

 単なる戦闘だけじゃなくて、こういうところでも成長を実感できるよ。

 ファイアーボールを覚える前の俺とか出会ったばかりの頃のマニュなら、こんな空気の中でこう平然とはいられなかっただろうし。

 というか下手したらこの空気に晒されただけで涙目になってた可能性すらあるよね。いや、真面目に。


「もし手ごろな依頼があったら受けちゃいましょうか」


 軽く中を見回してミラッサさんが言う。

 ミラッサさんの言う『依頼』とは、「どうしてもこの素材が欲しい」みたいな人が出すもので、依頼通りの品を持って来れば普段よりも高く買い取ってもらえたり貴重な物と物々交換してもらえたりするのだ。

 とはいえ普通に市場に出回っているものが依頼として出ることはまずないから、一般的な冒険者にとっては縁遠いものなんだけど……ソディアくらいに危険な街だとほとんどすべての素材が珍しいものだから、たしかに俺たちにも受けられる依頼があるかもしれない。


「その辺は狩場の情報と見比べてみて、って感じですかね」

「そうね、まずはそっちをちゃんと読み込まなきゃ」

「魔物の前情報があるのとないのじゃ全然違いますからね。解体でもそれは同じです。戦闘中に一番余裕があるのはわたしですから、ちゃんとフォローできるように読み込みますよぉ……!」

「おお、やる気満々だなぁ。さすが頑張りマニュなだけはある」

「お任せあれ、ですっ」


 ふんす、と意気込むマニュ。

 微笑ましいけど、頑張りマニュっていうのが一体何なのかだけちょっと気になる。


「じゃあマニュちゃんに負けないように、あたしも頑張りミラッサね!」


 ミラッサさんも頑張りシリーズの仲間入りするのか。

 ……女の人の間で流行ってるのかなぁ?


 とまあ、そんな話をしつつ俺たちの足はギルドカウンターの方へと向く。

 狩場の情報はカウンターで言って渡してもらわないと見れないからな。


「……ん? なに?」


 俺は足を止めた。

 なんだろう、いま不意にギルド内全体にざわめきが走ったような……。


 いや、これは勘違いじゃないぞ。

 明らかに皆さっきまでとは雰囲気が違う。

 ゴクリと唾を呑み込む人がいたり、かと思えば目を輝かせている人がいたり。

 共通点は、皆ギルドの入り口の方を見てるってことだけだ。


 ……誰か入って来たのかな?

 ギルド中の視線に誘導されるようにして、俺たちも入り口を振り返る。


「やぁ貴殿たち、偶然だね」


 そこにいたのはシファーさんだった。

 ああなるほどね、道理でざわつくわけだよ。

 一緒に行動してるとついつい親近感が湧いちゃうけど、エルラドでスリートップに入るくらいの冒険者だもんな。

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