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66話 洞窟の中で

 そして、各自着替えることとなった。

 といっても下に水着を着てきているので、それ以外を脱ぐだけだけど。


「おいしょっと……」


 そんな声を出しながらマニュが服を脱いでいく。

 マニュだけじゃなくて、ミラッサさんとシファーさんもだ。

 耳を澄ませば衣擦れの音が聞こえてくるし……なんか、見ちゃいけないものを見てるような気になってきた。


「あー、レウスくんが変な目でこっち見てるぅ」

「み、見てない見てないっ!」


 慌てて必死で否定する。

 くっそー、ここぞとばかりにからかってきて!


 そんなこんなで水着に着替え終わった俺たち。

 三人は三者三様の水着に身を包んでいた。

 それぞれに特徴が出ているような気もする。

 マニュは可愛い系で、ミラッサさんは元気な感じで、シファーさんは大人っぽい。


 でもこうして改めて見てみると、水着って無防備の極みみたいな格好だ。

 肌の露出も多いし……あんまりマジマジ見るのは色々とまずそう。耐えられる自信がありません。


「レウスさんっ」


 目を逸らすと、マニュが声をかけて来る。

 呼ばれてしまった以上見ないわけにはいかない。


 視線を戻すと、マニュはその場でくるりと一回転した。

 そしておずおずと、俺の様子を窺うようにチラチラと俺を見てくる。


「ど、どどどどうですか……?」

「い、いいい良いと思う……」

「に、似合ってたり……?」

「に、似合ってると思う……」


 いや、実際似合ってるよ。

 似合ってるけど、その分ドキドキするっていうか。

 わかるでしょ、わかるよね!?

 なんとか冷静な風を装えたけど、ギリギリだったや。


「ミラッサ、あの話し方は若者の流行りなのか?」

「あはは、違いますって。二人とも緊張してるんですよ。微笑ましいと思いません?」

「なるほど、緊張……。どうりでレウスがカチコチなわけだ」


 え、バレてたのか!?

 平静を装ってたつもりだったのに……!?

 さ、さすがの観察眼だよ二人とも。


「何に緊張しているのかはわからないが……レウス、そういう時は人肌の温もりを感じるといい。人との繋がりを感じれば、自然と緊張も解れるだろうさ」


 ううん、それ絶対逆効果。

 人肌の温もりとかいま一番感じちゃ駄目。


「何も喋れないほどの緊張か……重症なようだな。レウス、もし私で良ければ手を貸すぞ?」


 そう言ってバッと腕を広げるシファーさん。

 ……え、どういうこと?


「私の胸に飛び込んでくると良い」


 どうやら俺を抱きしめて緊張を解きほぐしてくれるつもりのようだ……って、そんなの俺の方が無理だよ!?


「だ、大丈夫ですっ、そのうち慣れますからっ!」

「む、そうか?」


 しゅん、と少し寂しそうにシファーさんは腕を下ろす。

 いつもソロ活動ばかりだから、人の役に立てる機会が無くなって残念なんだろう。

 それはちょっと可哀そうだけど、かといって申し出を受け入れるのも無理だから我慢してもらう他ない。


と、その時。


「シュアアアアアアッ」


 不意に魔物が現れる。

 蛇のような凹凸の無い体と、落ち窪んだ眼。

 全貌は見えず、頭から尾までの全長は計り知れないが、おそらく十メートルほどは優にあるのではないかと思えるほどの巨体だ。


 おいおい、これはマズいんじゃ――


「ウィンドストームッ」


 凛としたシファーさんの声。

 巻き起こる風の渦。

 勢いよく飛んだそれはそのまま魔物を切り刻み、跡形もなく消し去った。


 ……はっや。瞬殺かよ。


「この洞窟は水中でどこか別の水源ともつながっているらしくてね。時折こうしてシーペンサーが姿を現すこともあるんだ。といっても片手間で充分倒せる程度の強さだよ。言っていなかったが、わざわざ言うほどのことでもなかっただろう?」


 片手間で倒せる大きさじゃなかったと思うんですけど……。

 シファーさんクオリティな気がするけど、たしかに楽勝そうではあった。

 そういえばシファーさんの使う魔法って初めて見たなぁ。

 魔法を使ってもカッコよくて強いんだもんな、ズルいよ。いつも颯爽としてるしさ。


「うんうん、そうよね。あたしもそう思う」


 同調するように頷くミラッサさん。


「いや、俺口に出してないんですけど、なんで俺の思ってることがわかるんですか?」

「んー、勘で?」


 ひょっとして<直感LV5>が仕事してるのか……?

 心を読み取るのはせめて胸のことだけに抑えておいてもらえると嬉しいなぁ。

 ……ああいや、胸のことも出来れば勘弁したいけど――


「あっ、今レウスくん胸のこと考えたでしょ!」


 ……これもそうなるのか。なんだか無限の迷路に迷い込んでしまった気がする。

 ミラッサさんはいつもと違う格好だからか、胸を抑えて少し恥ずかしそうにこっちを見てくる。

 そんな風にされるとせっかく収まったドキドキが再発しちゃうからやめてほしい。


「二人とも。俺ちょっと潜ってみるから、もし溺れたら助けてもらっていいかな」


 こうなれば、無理やりにでもこの場を離れるしかない。

 その場にいたミラッサさんとマニュにそう告げ、俺は潜水を始める。


 別に逃げるためってだけじゃないぞ。

 さっきのシファーさんの話だと、水中で別の場所と繋がってるらしいからな。

 完全に興味本位だけど、その繋がってるところとか見てみたいし。


 よし、結構深くまで来たな。

 う~ん、どこだどこだ~?

 かなり透明度は高いから、上からじゃ確認できないってことは多分岩壁が覆いかぶさるような形になってるところだよな。

 そういう形状のところを重点的に探せば……あ、あった。


 壁にぽっかりと大きな穴が開いている。

 直径は六、七メートルくらいはありそうだ。

 あそこから魔物が流れてくるんだな。


 ……うん、満足満足。見たいものは見れた。

 やっぱり自然はスケールが大きい。

 マニュが自然になろうとしたのも頷けるよ。

 大きくなったマニュはちょっと想像できないけど……間違いなく美人になりそう。


 ぽこぽこと口から出た泡が水面に向かって登っていく。

 それを見上げていると、不思議な気持ちになってきた。

 なんとなく水中って神秘的な感じがするよなぁ。

 懐かしい気分というか……言葉ではあんまり言い表せない感じ。


 ただ、怖いところでもあるからあんまり浸ってはいられないけど。

 特に今は水中だから、足攣ったりしちゃ大ごとになっちゃうし。

 さて、それじゃ二人に心配させないうちに、さっさと水面に上がりますかね……って。


 ふと目に留まった金色の光。

 水中では見慣れない色合いに思わず凝視する。

 あれは……宝箱じゃないか?

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