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64話 三日連続はさすがにキツい

 無事に素材を採取してきた俺たちは、ゴザさんの武器屋へと帰って来た。

 昨日と同じように、マジカルスライムの素材をマニュがカウンターへと並べる。


 ゴザさんはそれを眺め、「……昨日と同じで良い質だな」と唸った。


「で、どうだった小僧と嬢ちゃん二人。シファー嬢と一緒の狩りは勉強になったか?」

「それは勿論ですよ。学ぶべきことは山ほどありました」


 なにせ冒険者のトップだからな。

 何気なくただ突っ立っているだけのように見えても、実はすぐに動けるように準備を怠ってなかったりとか、そういう振る舞いの面でも勉強になったし。

 それ以外にも、エルラドにいる魔物について前もって色々教えてくれたりもした。

 俺たちに助言も沢山くれたし、これ以上ないほど濃密な経験だったと思う。


「この二日間で確信したよ、彼らは将来有望だ。私の目に狂いはなかったようでなによりだよ」

「ふぅん? シファー嬢がこういうってことは、そうなんだろうな」

「それで、肝心の武器を作るにはどのくらいの時間がかかりそうだ?」

「そうだなぁ。……一週間ってとこかね。そんくらいありゃあ、全員分の武器が出来ると思うぜ」

「え、一週間!?」


 二人の会話に思わず口をはさんでしまう。


「ん? なんだ小僧、不満か?」

「いや、不満とかそんなんじゃなくて……めちゃくちゃ早くないですか!?」


 だって四人分だろ?

 しかも、シファーさんは剣と盾両方なんだぞ?

 どんだけ作業速いんだよ……!?


「知らん、他人と比べてどうたらってのは好きじゃねえからな。少なくとも俺ぁまだまだ半人前だと思ってるがね」

「ゴザ爺は自分の評価を断固として変えようとしないんだ。全く、頭が固くて困ってしまう」


 シファーさんが苦笑する。

 ……あ、ここに来る前にゴザさんの説明してくれた時に言ってた『頭が固い』って、そういう意味なの?

 なんだ、じゃあそんなに緊張する必要もなかったなぁ。


「まあ、出来上がるまでの一週間は適当に街でもうろついといてくれや。魔物にされるかもしれねえけどな」

「こ、怖いこと言わないでくださいよ……」


 ゴザさんは冗談で言ってるんだろうけど、マジで可能性はゼロじゃない。

 よく怖がらずに冗談にできるよなぁ。

 ……いや、笑って冗談にできるくらいの胆力がないとここではやっていけないのか。

 まったく、凄い街だよ本当。


 一人でここまで来てたら、俺も心細くなってたかもしれないなぁと思う。

 まあでも、俺にはマニュとミラッサさんの二人がいるからね。


「そういえば、レウスさんが魔物になっちゃったら治せる人いませんよね」

「そうね。じゃああたしとマニュちゃんでレウスくんを守ってあげましょ?」

「お、おぉぉ……そ、そうしましょう! それがいいと思いますっ」


 二人はそんな話をしていた。

 たしかに理屈的には間違ってない気もするけど、女の子二人に守られるって情けないような気もする。

 ……そんなことにならないように、警戒は怠らないようにしようっと!


「あれ? なんだかレウスさんがやる気を出してます」

「レウスくんも男の子だなぁ」


 二人に身を張らせずにすむように、気合入れるぞぉ!






 シファーさんも含めた俺たち四人は店を出る。

 ゴザさんが武器を作り上げてくれるまでの一週間。

 ぽっかりと時間が空いてしまった。


「それにしても、二日連続で狩場に出たのはさすがに疲れたなぁ」

「あー、わかる。あたしも今は大丈夫だけど、明日あたり体結構きつくなる予感がするもん」

「わたしもさすがに明日は休養日にしたいですねー」


 おっ、三人とも意見が一致したな。


「じゃあ明日は休養日で決定! いいよね?」


 問いかけると、間を置くこともなく二人が肯定の返事をしてくれる。

 休みたいのは皆同じだもんね。


「そうか、私基準でスケジュールを立てすぎたかもしれないな。三人ともすまない。長年ソロでやってきたから、そのあたりの気配りは不得手でな」

「ああいや、シファーさんが謝ることじゃないですよ」

「そうですそうです、あたしたちが体力無いのがいけないんですから」


 実際、技術以外に体力にも差があるんだよな。

 一日目二日目ではそんなに目立って差は出てなかったけど、もしこのまま一週間連続くらいで狩場に出ることになっていたら、俺たちとシファーさんのパフォーマンスじゃ雲泥の差だっただろう。

 まあ全部が全部体力の差ってわけじゃなくて、レベルの高い狩場での勝手がわからなかったっていう要因も大きいから、ここでの戦い方に慣れて行けば徐々に連戦も出来るようになるとは思うけどさ。


「そう言ってくれると助かるよ。お詫びと言っては何だが、三日後辺りにリフレッシュも兼ねて、湖に行かないか? 透き通るほど綺麗な水で、広くて、その上誰にも知られていない私だけのスポットがあるんだ。……どうかな?」


 おお、まさかシファーさんから遊びのお誘いが受けられるなんて。

 光栄なことこの上ないな。


 シファーさんは俺たちが誘いに乗ってくれるか少し不安げな様子だけど、こんな誘い断る方がどうかしてるよ。

 だって、まずそもそもさ――


「行きましょ二人とも……! 絶対、絶対行きましょ!」


 ――ミラッサさんがこの調子だからね。


「シファーさん、俺たちで良ければお願いします」

「良かった。人を誘うなんて久しぶりだからな。柄にもなく緊張してしまった」

「シファーさんでも緊張とかするんですか。ちょっと意外だなぁ」


 ホッと胸を撫でおろしたシファーさんはどこにでもいる普通の女性みたいで、とてもSランク冒険者とは思えない。

 ……あ、といってもこんな綺麗な人は滅多にいないけどさ。


「私だって普通の人間だからね。緊張もするし、恐怖もするし、歓喜もするさ」


 そう言うと、シファーさんは俺たちをジーッと見てくる。

 悪い雰囲気じゃないけど……なんだろう?


「最近で一番歓喜したのは、貴殿たちに会えたことなのだけどね」

「逝きますっ!」


 ミラッサさんが即答する。

 逝かないでミラッサさん。

 シファーさんに微笑まれながら嬉しい言葉をかけられて嬉しいのはわかるけど、逝くのはやめて。


「じゃあ三日後で大丈夫かい? その時は各自水着を用意しておいてくれ」


 そんな感じで纏まって、俺たちはシファーさんと別れた。

 三日後が今から楽しみだ。

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