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62話 やっぱり異常

 ゴザさんの店へ入ると、ゴザさんは前と変わらず俺たちを出迎えた。


「おう、帰ってきたか」

「ああ。三人と一緒に行ったおかげでポルンの新たな群生地を見つけた。おかげで時間が短縮できたよ」

「へぇ、そりゃすげえや。あとで教えてくれ」

「もちろん」


 そんな会話をしている横で、マニュがカウンターにポルンを並べる。

 ゴザさんはその一連の様子をマジマジと眺めた。


「……おう、このポルンたちは嬢ちゃんが採取したのか?」

「そうですね、わたしが一応このパーティーの採取担当なので」

「いい腕してんじゃねえか、うちの専属で雇いたいくらいだ」

「そうだな、私も見習いたい」

「あ、え……えへへ」


 ゴザさんとシファーさんに褒められ、マニュは照れくさげに笑みをこぼす。かわいい。


「……ああ、ゴザ爺。知っているか? 今さっきそこで魔物化騒ぎがあったぞ」


 打って変わってシファーさんが真面目な話を口にした。


「声は聞こえてきちゃいたが……お前らも巻き込まれたのか? なら災難だったな。また何人か犠牲者も出たんだろうしよ」


 ゴザさんは髭に触れながら魔物化騒動の深刻さを解説する。


「元がこんなところまで来るような人間だからな。どいつもこいつも強者なんだよ。そんなただでさえ強い人間が、魔物の力を手に入れるせいでさらに強くなるんだ。この辺の魔物よりも大分強くなるし、大抵の冒険者じゃ歯が立たねえ」


 たしかにそうだ。

 シファーさんとミラッサさんがいたからよかったけど、あの魔物は普通に強かった。

 異常種までとは言わなくても、今日素材を取りにいった山で遭遇した魔物たちよりも強かったと思う。

 人間の知能を持った魔物だからだと思ってばかりいたけど、そうか。

 元になった人間が強者だったってことも関係あるのかもしれない。


 だとすると、元の人間が持つスキルによっては、魔法を使って来たり剣術を使ってきたりする魔物もいる可能性もあるか?

 ……考えただけで手ごわそうだなぁ。


「しかもおまけに治し方もねえんじゃ、困ったもんだぜ。いくら厄介ごとが日常茶飯事って言っても、ここまでのはあんまりねえなぁ」

「あ、一応俺が治しましたけど……」

「ん? ……んん!?」


 ゴザさんの目が見開かれる。

 見開くと結構瞳が大きいなぁ。いや、そんな場合じゃないんだけど。

 ゴザさんは身を乗り出して、半分掴みかかるような勢いで俺に詰め寄ってくる。

 つ、詰め寄られると余計に威圧感あるな……!


「小僧、今お前治したって言ったのか!? ど、どうやって!」

「<ヒール>をかけて治しました」

「馬鹿言え、この街一番の回復魔法使いの<エキストラヒールLV5>でも<ハイヒールLV8>でも治せなかったんだぞ……?」


 それは初耳だ。

 ソディアの街ともなると、エキストラヒールなんてのを使える人まで出てくるのか。

 エキストラヒールはたしか回復系最高スキルだったはずだよな。

 ほとんど覚えられる人もいないらしいし……ひぇー、すっご。


「それで治せないのに、なんでヒールごときで治せるんだよ。例えレベル9だとしたって無理だろ」

「いや、レベル10です」

「……んんん!?」


 あ、言ってなかったっけ?

 そういえば言ってなかったかもしれない。

 まあ、あんまりわざわざ自分から言うことでもないしな。

 でもこういう状況な以上、説明しとくべきか。


「俺の<ヒール>はLV10ですよ。あとついでに<ファイアーボール>と<鑑定>もですけど」

「……!?」


 絶句するゴザさん。

 LV10のスキル持ちは俺たちの街じゃ前代未聞だったけど、もしかしてエルラドだったらありふれてるんじゃないか……そんな風に思ったりしてたけど、その反応を見るにそういうわけでもなさそうだ。


「お、おいシファー嬢、こいつは一体どういうことだ……!?」

「そういうことらしいんだ」

「いや、どういうことだ……。LV10なんざエルラドでも聞いたことねえぞ」

「レウス、よければ貴殿のステータスカードをゴザ爺に見せてやってはくれないか? 無論、無理にとは言わないが」

「ああ、はい。全然いいですよ」


 信じてもらうには実際に目で見てもらうのが一番だろうしな。

 それに、ゴザさんなら信用できるし。

 俺は自分のステータスを表示する。




 ◇――――――――――――――――――――――◇

 レウス・アルガルフォン

【性別】男

【年齢】15歳

【ランク】C

【潜在魔力】0000

【スキル】<剣術LV2><解体LV2><運搬LV2><ファイアーボールLV10><ヒールLV10><鑑定LV10>

 ◇――――――――――――――――――――――◇




 どうかな。

 ゴザさんに納得してもらえたかな。

 ぽっかり口を開けて俺のステータスを食い入るように見つめている。

 驚きで口が塞がらないってこういうときに使うんだろうな。


「【潜在魔力】0に、スキルLV10のスキルが三つ……!? わ、訳が分からん、俺はボケちまったのか……!?」

「いや、ゴザさんは正常ですよ。あと俺の【潜在魔力】は10000です」

「なんだお前は、どこの星から来た」

「この星生まれこの星育ちです」


 まさか異星人扱いされるとは思わなかった。


「ゴザ爺、彼のステータスは本物だぞ。少なくとも、彼が<ヒール>で魔物化した人間を元の状態に戻したのは私もこの目で確認したからな。それに、ファイアーボールの威力はゴザ爺本人も確認しただろう?」

「む、それはそうだが……」

「察するにLV10のスキルというものは、どう考えてもLV9までとは威力が一線を画しているように思う。上位互換である<ハイヒール>や、さらにその上位互換の<エキストラヒール>を超える威力となるとな」


 そこまで言うと、シファーさんは目線をこちらに向ける。

 何でも見通せそうな蒼い双眸に見つめられ、思わずたじろぐ。


「レウスという存在は、基礎も極めれば一線級で戦えるということの何よりの証左だよ。今まではより強いスキルのレベルを上げていくのが常識であり常套手段だったが……LV10の恩恵がここまで大きいとなると、もしかしたら今度はスキルを習熟させる優先順位が変わるかもしれないな」

「ほう……そうなったら面白えな。価値観がひっくり返るってやつだ」

「まあ実際、LV10へ到達する難易度との兼ね合いになってくるとは思うが……ちなみに差し支えなければ、レウスはどのくらいでLV10に至ったのか教えてもらえないか?」

「あー……それはまあ、いいですけど」


 これは自分でも異常だってわかってるからあんまり言いたくないんだけどなぁ。

 でもここで言わないのもおかしいし……。ええい、言っちゃえ!


「い、一回使ったら、なんかLV10になっちゃった……みたいな?」


 そういうこと!

 わかりましたか二人とも!


「『い、一回使ったら、なんかLV10になっちゃった……みたいな?』……?」

「『い、一回使ったら、なんかLV10になっちゃった……みたいな?』……?」


 やめて、二人して俺の言葉をそっくりそのまま復唱するのはやめて!


「……あれだな、小僧に関しては考えるだけ無駄だな」

「私もそう思う」


 なんか変なところで一致団結してるしぃ……!

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