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47話 勧誘

「ミラッサさん、俺たちとパーティー組みませんか? 今度は臨時パーティーじゃなくて、正式に」


 ミラッサさんはパチクリと目を何度か瞬きする。

 俺の言葉がそれだけ予想外だったらしい。


「……そう言うってことは」

「はい。もうミラッサさんだけに頼ったりしません。俺には俺の長所があると自覚したので」


 前に臨時パーティーを組んだ時はミラッサさんにおんぶにだっこだったけど、異常種と戦って自分なりに自信も付いた。

 ファイアーボールの攻撃力だけなら、多分どこでも通用するはずだ。

 それにダメージを負ってもヒールで回復出来る。

 もうミラッサさんに頼りっぱなしだったあの時の俺じゃないぞ。


「それどころかむしろ、バンバン注文つけるかもしれませんね」

「そんなレウスくん、想像できないわね。本当にできるの?」

「できます。……多分」

「多分なのかー」

「ぜ、絶対!」


 慌てて言い直す俺を見て、ミラッサさんはクスリと笑う。


「でも……うん。そういうことなら、あたしからもお願いするわ」

「本当ですか!? マニュ、マニュ、やった! ミラッサさんパーティー組んでくれるって!」


 丁度解体も終わったところみたいだし、こういうことはいち早く伝えなきゃだよな。

 ミラッサさんをパーティーに入れることに関しては、マニュも賛成してくれてたし、きっと喜んでくれるはずだ。


「おお! や、やりましたねレウスさん! 快挙ですよ!」


 ほら、口を大きく開けて喜んでくれる。

 リヤカーを置いたまま、跳ねるように俺たちの方に駆けてくるマニュ。

 よっぽど嬉しかったみたいだ。


「マニュちゃん、これからよろしくね?」

「はい、よろしくお願いしますっ」


 これでパーティーは俺とマニュとミラッサさんの三人態勢。

 パーティーに新メンバーを加入させるというのは大きな決断だ。

 今までのパーティーバランスはどうしても崩れるし、場合によってはパーティー内の役割分担の変更やコミュニケーション不足等の原因で、元より成果が上がらなくなることもある。あとは不仲による分裂とかな。


 その点で言うと二人は元から仲もいいし、新しくパーティーに入ったとしてもギスギスするようなことにはならないと思う。

 ……男一人なのはちょっと心細いような気もするけど、まあ二人とも優しいからなんとかなるか。


 本当は……とリキュウに視線を移すと、目が合ったところで俺に肩をぶつけてきた。


「レウス、お前モテモテだな。羨ましいぜ。一人分けてくれよ」

「リキュウは畑に行って相手を捜して来るといいよ。緑色が目印だからすぐに見つかると思う」

「……お前、それキュウリじゃねえか! 俺は人間だっつーの!」


 ……本当は、リキュウもパーティーに誘うつもりだったんだよ。

 お見舞いに行った日にさ。


 戦闘力も一人前だし、なによりリキュウの情報収集能力は、未知の場所であるエルラドでは特に必要な能力だと思ったから。

 でももうお前は別の目標を見つけたみたいだし、無理に誘うのは違うもんな。

 リキュウはリキュウの道で頑張れよ。俺も応援してるからさ。


「……レウス、何マジマジと見つめてくれちゃってんだ。お前、まさか本当に俺のこと好きなんじゃねえだろうな」

「いや、それはない。マジでない」


 それだけはないから。






 帰り道。

 リヤカーいっぱいに乗せた素材をギルドで清算した俺たちは、四人でニアンの街を歩く。


「それでさぁ――」

「ああ、たしかにそれは――」


 特に意識しなくとも話題が途切れることはない。

 いや、途切れても気にならないといった方が正しいかな。

 この三人といると、なんだか昔からの仲みたいに心が安らぐんだよな。

 前にいた街でも何回か臨時パーティーは組ませてもらってたけど、あの時のパーティーとは明らかに違う。


 それは多分、俺が三人に対して遠慮してないからなんだろう。

 今までの俺は劣等感から心に壁を作って、本心から相手と向き合えていなかった。

 だから相手も心を開いてくれなかった。当然の話だ。


 俺はやっと、本当の仲間というものに巡り合えたのかもしれない。


「あ、そうだ」


 ミラッサさんがポンッと手を鳴らす。


「今からまた四人でごはん食べに行きましょうよっ。特にこの後予定ある人もいないでしょ?」

「いいですね、食べましょう! お肉にお酒……じゅるっ」

「レウス、その暴食姫の手綱を握って離すな、じゃねえとエルラドまでの資金が底をつくぞ」

「わかってるよリキュウ。今から始まるのは食事じゃない、戦争だ……っ」

「マニュちゃん、今度こそ飲み比べでは負けないわよ~!」

「望むところです、ミラッサさん!」


 絶対に勝てない勝負に挑むミラッサさん。

 その勇気が良く胸の奥から湧いてくるなぁ。あっぱれだ。


「レウスくん、今胸のこと考えた?」


 違う違う、そういう意味じゃないですから。

 胸関係の時だけ超一級のテレパシー発揮するのやめてください。

 どんな超能力なんですか。


「飲みの席は口が軽くなるからな。普段は聞けないようなお前らの恥ずかしい秘密を聞かせてもらうとするぜ」

「そんなの聞いてどうするんだよ」

「お前らが有名になったら高値でリークするに決まってんだろ」


 うわぁ、コイツマジ最低じゃん……。

 引くわー。


「だからお前ら、俺の為にも有名になれよな?」

「どんな捻くれた後押しの仕方だよそれ……」


 リキュウらしいちゃあリキュウらしいんだろうけどさ。


「皆さん、喋ってないで早くお店を決めましょう。わたしはもうお腹ペコペコです。餓死の一歩手前です」

「よし、早いとこ店決めよう。マニュに餓死されちゃ困る」

「グルルルゥゥゥゥッッ!」

「っ!?」


 突如鳴り響いた魔物の鳴き声に、俺たちは一瞬ギョッとする。

 どこだ、どこから――あ、なに? 今の、マニュのお腹の音なんだ?


「マニュのお腹には何が潜んでるの?」

「愛と勇気です」

「随分獰猛な愛と勇気だね」


 魔物で言うとAランクはあるんじゃない?


「じゃあ今夜はリキュウを送り出す会ってことで、リキュウの新たな門出を皆で祝おう」

「へーへー、どうもどうも」

「なによそれ、もっと喜びなさいよね」

「そうですよ、じゃないとリキュウさんの分の食事全部わたしが食べちゃいますからね」

「お前が言うと冗談に聞こえねえんだよなぁ」

「フレーフレー、リキュウ! 頑張れ頑張れ、リキュウ!」

「おい馬鹿レウス! 道の真ん中でやめろお前!」


 その日の夜から翌日の朝まで、俺たちは夜通し一緒に食事をとった。

 無論、最高に楽しかったことは言うまでもない。

これにて4章完結です!

異常種との戦闘を終えてからのエピローグが予想の二倍近くに膨らみましたが、全部書きたいことだったので個人的には満足です!

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