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46話 時間と共に仲良くなる

 それにしても、狩場でこんなにリラックスしてるのなんて初めてかもな。

 ミラッサさんに加えてリキュウまでいると、安心感が段違いだ。

 こんなふうに軽口を叩き合いながら狩りをするのなんて、相当実力がなきゃ無理だもんね。


 その点このパーティーは斥候のリキュウ、前衛のミラッサさん、後衛の俺、運搬役のマニュと役割分担もしっかりできている。

 しかも個々の実力があるから、こうしてのんびりした雰囲気でも問題なく狩りが出来ているわけだ。

 まあ、さすがにふざけすぎたからもうちょっと気は引き締めなきゃだけど。


「そういや、四人で狩りに行こうって誘ったのは俺たちだけど、狩場を決めたのはリキュウだよな。なんで丘にしたんだ?」

「見晴らしの良い丘じゃ、俺の<聞き耳>を披露するチャンスがねえのはちと残念だが、まあその分不意を突かれる危険もないしな。これだけ実力者が揃ってるパーティーなら、少々気を抜いたところで痛い目を見ることもない。即興パーティーの俺たちにはおあつらえ向きの狩場だろ」

「おお、なんかそれっぽい」

「それっぽいってなんだよ、ったく」


 やっぱリキュウって頭働くタイプなんだな。

 俺はあんまりそっち方面は自信がないから羨ましい。

 こんな悪そうな見た目でインテリって、ギャップすごいよな。

 女の子はきゅんと来たりするんじゃないか?


「リキュウってモテそう」

「なんだその率直な感想は。まあぼちぼちだ、ぼちぼち」


 なんでもなさそうな顔のリキュウ。

 ……急にリキュウが年上に見えてきたぞ。

 いや、実際年上なんだけどさ。


 いつの間にか同い年みたいな感じで接してたから、なんか改めて年上なんだなって。

 俺が十五歳でリキュウが十七歳かぁ。二歳差って思ってたよりおっきいなぁ。


「おい、話はそこまでにしとけ。いたぜ、魔物」


<聞き耳>のおかげかどうかはともかく、リキュウがいち早く魔物を発見した。


 あれは……ムーンコボルトか。

 背中に三日月の模様が入っているのが特徴的で、月が出ている日の夜は魔力が増大する特殊能力を持つ魔物だ。

 ただ、昼間ならそれほど怖い敵じゃない。

 今日は四人だからなおさらだ。

 三匹いるけど、問題なく相手に出来そうだな。


「各々一匹ずつで行こうぜ。マニュは待機で」

「おっけーよ」

「わかった」


 そして俺はムーンコボルトの一匹と向き合う。

 二人が<剣術>スキルで鮮やかに敵を倒しているのが視界の端に見えた。

 よーし、俺も負けてらんないぞ!


「ファイアーボールっ」


 威力の調整は慎重に……この前全力火力でバカスカ撃っちゃったからな、調整する感覚を思い出さなきゃ。

 そーっと、そーっと……うん、いい感じだ。

 掌には推定LV5くらいの威力のファイアーボールが出来上がった。


 それをムーンコボルトに撃ちこむ。

 ……あっ、避けられた。


 ヤバいヤバい、威力に注意しすぎて大きさのコントロールを忘れてたや。

 そこそこ動きが素早いし、手のひら大くらいだと避けてくるか。


「キキィッ!」

「おっと」


 接近戦を仕掛けてきたコボルトの爪を<剣術LV2>でいなして、再び距離を取る。

 やっぱ剣は持っておいて損はないな。

 ムーンコボルト一匹の攻撃でよろけちゃう様じゃメインウェポンにはならないけど、サブウェポンとしては頼りになる。


 んで、そんなこと言っているうちに二発目のファイアーボールが完成、っと。

 無詠唱でもそれなりにコントロールがつくようになってきた。

 今度のファイアーボールは直径5メートルくらいだし、躱されることもないだろう。


 二発目のファイアーボールを手元から放つ。


「ギギッ!?」


 よし、当たった。

 耐えたりは……しないよね。よかった。

 ついこの前に異常種に耐えられたから、ちょっと耐えられる可能性が脳裏によぎったよ。


 まあでも、これでムーンコボルト狩りに成功だ。

 他の二人はどうなってるかな?


 ああ、もう二人ともとっくに倒してたみたい。

 マニュが、リキュウが倒したコボルトのところに近寄って、もう解体を始めている。

 もしかしてさっきチラッと見えたあの一撃だけで倒したのかな。

 やっぱ凄いな二人とも。


「お疲れ、レウスくん。見事だったわよ?」

「ありがとうございます」


 戦闘が終わったところで暇なので、俺とミラッサさんはリキュウとマニュの様子を少し離れて見守ることにした。


 マニュの解体を、リキュウはとても興味深そうに見つめている。

 そりゃそうか、これからリキュウは解体と運搬のマニュアルを作り出す気なんだもんな。

 その手さばきをじっくり見て、盗めるものはなんでも盗むって気持ちなんだろう。


「マニュ、お前の解体の手さばきすげえな。勉強になるぜ」

「えへへ、そうですかね?」

「ああ。それに運搬の技術もだ。狩場に入る前から思っちゃいたが、リヤカーを引いてるのに、まるで手ぶらみたいに移動がスムーズだもんな。リヤカーが幻覚みたいに半透明に見えてくる。普通じゃちょっと考えられねえ」

「そんなに褒められると、どうしたらいいか……」

「いや、誇っていいと思うぜ」

「あ、ありがとうございます。リキュウさんのこれからのお仕事のための勉強のお役に立つためにも、精一杯頑張りますっ」


 鮮やかな手並みでムーンコボルトの身体を解体し、素材を剥ぎ取っていくマニュ。

 リキュウはそれを何やらメモを取りながら熱心に見つめ、たまに質問したりしている。

 マニュは人に教えるって経験自体が初めてだからか、少し口ごもるところもあるけど、そこはリキュウが質問を変えたりしてうまく聞きたいことを引き出してあげてる感じだ。


 良い雰囲気だなぁ。

 なんか仲間同士がああやって仲良くしてるの見ると、気持ちがほのぼのしてくるよ。

 マニュなんて、最初はリキュウにビビりっぱなしだったもんな。

 リキュウもそんなマニュにイライラしてたし。

 そんな二人が、今やあんなに楽しそうに話すようになって……。


 おっと、思わず頬が緩んでしまった。

 ……って、なんだ?

 つんつん、ってミラッサさんが指でわき腹をついてきてるけど。


 隣に立つミラッサさんを見てみる。

 ミラッサさんはいたずらっ子みたいな顔で、にへーと笑っていた。


「レウスくん、いいの? 大事なマニュちゃんがリキュウにとられちゃうわよー?」

「からかわないでくださいよミラッサさん。それに、俺とマニュの絆はあんなチンピラに負けるほどヤワじゃありませんから」

「おい、誰がチンピラだ!」

「あ、聞こえてたか。悪い悪い」

「ったく、お前絶対聞こえるように言ってるだろ……」


 ぶつぶつ文句を言うリキュウ。

 まあたしかに<聞き耳LV6>持ってたら聞こえるかなと思ってたけど、本当に聞こえるんだな。

 この音量の会話が盗み聞きできるのは情報収集に役立ちそうだ。

 そりゃギルドとかに通い詰めてたら、あっと言う間に情報通にもなるよな。


 で、ミラッサさんの方はと言えば。


「ふーん、言うじゃない。あーあー、レウスくんはあたしのものだったのになぁー」


 さてはミラッサさん、また俺をからかおうとしてるな?

 さすがにこれだけ一緒にいればわかってきますよ。

 そんな風に、ぶーって口をとがらせながら足元の石を蹴ったって、俺は騙されませんからね。


「あの臨時パーティーを解消したのはミラッサさんじゃないですか。俺あの日、冒険者人生で一番ショックだったんですからね?」

「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。おねーさんを弄ぼうとして、レウスくんったら悪い子」


 く、くぅ、手ごわい……!

 どんどんかわいく見えてくるぅ……!


 いや、そもそも元々かわいいけど……って今はそんな話じゃなくて!

 だ、駄目だ、このままじゃいつまで経ってもミラッサさんの土俵だ。

 なんとかこっちの土俵に持ちこまなきゃ。


 頭をブルブルと振って気持ちを入れ替える。

 深呼吸して、慌てていたのがまるわかりだったはずの表情を元に戻す。


 よしっ。

 ここからは、ちょっと大事な話をさせてもらおう。


「……ミラッサさん。この前、マニュとも話し合ったんですけど」

「うん、なに?」


 かねてから考えていたことを、ミラッサさんに告げる。


「ミラッサさん、俺たちとパーティー組みませんか? 今度は臨時パーティーじゃなくて、正式に」

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