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45話 四人パーティー

 数日後。

 俺はCランク用の狩場へとやってきていた。

 この前異常種の魔物が出たところだ。

 ファイアーボールを撃ちこんだ丘はまだ窪んだままだけど、辺りにはチラホラ冒険者も戻ってきている。


 今回の異常種討伐の一件で、俺はCランクに上がることが出来た。

 Bに上げてもいいんじゃないかって声もあったみたいだけど、一気に二段階の昇格は前例がないってことで却下されたみたいだ。

 俺としてもまだBランクになる心構えはできてないし、そんなに残念じゃないかな。

 だってBランクって言ったらミラッサさんと同じランクでしょ?

 まだ同じ土俵に立てている気はしないもんな。


 中には一気にAランクまで上げた方が、なんて言ってくれる人もいたらしい。

 ありがたいけど、恐れ多すぎて体が縮こまるよ……。


 あ、あとマニュもDランクに昇格した。

 役割分担的にこれからは直接戦闘に参加することは少なくなりそうだから、これ以上ランクを上げるのは難しそうだけど、ランク以上に貢献してくれているのは間違いないから気にしない。

 でもDランクに上がれたのを……より正確に言えばEランクを抜けられたのを本人はすごく喜んでいた。

 ずっとEランクだった俺としても、その気持ちには大いに共感できる。

 Eランクって冒険者になった瞬間に皆なれるから「どうせ新米だろ?」って舐められることも多いし、そういう意味じゃDに上がれたのはマニュにとっても良かったよね。


 で、今日のCランクの狩場だけど。

 実は、なにも俺とマニュの二人でやってきたわけじゃないんだ。


 俺の後ろでは、パーティーメンバーであるマニュが小さな体でゴロゴロとリヤカーを引いている。

 これはいつも通り。

 だけどいつもと違って、俺の前にはミラッサさんとリキュウがいるのだ。


「やれやれ、わざわざこんな風に集まんなくてもいいってのによ」


 照れ隠しのように頭を掻きながら言うリキュウ。

 そう、今日俺たちが集まったのはリキュウの新しい門出を祝うためだ。

 リキュウは近々冒険者を半ば引退するらしいので、どうせなら最後に記念で四人でパーティーを組もうってことになったんだよな。


「この四人で狩りって、なんか初めてな気がしないわねー」

「マニュの特訓の時に頻繁に集まってたしな。まあ新鮮味はねえだろ」


 斥候役のリキュウと前衛のミラッサさんがそんな会話をする。

 すると、そこに背後から鈴の音のような声がかかる。


「お二人とも、その節はどうもお世話になりました。おかげで今はレウスさんとパーティーを組めて、わたし幸せです」

「良かったじゃないレウスくん、マニュちゃん今幸せだって」

「いやぁ、なんか普通にかなり嬉しいです」


 あんまり直接聞くのもおかしいし、俺とパーティーを組んでどう思ってるかは中々聞けなかったもんな。

 そんな風に思っててくれたのは嬉しいよ。

 ありがとね、マニュ……マニュ? なんでそんな照れてるの?


「ふ、ふぇぇ、レウスさん聞いてたんですか! よ、予想外ですっ」

「俺を前後で挟んで会話してたら聞こえない方が不自然じゃない?」

「た、たしかに……! う、うっかりしてました」


 うっかりかぁ。それなら仕方ないなぁ。

 俺、マニュの目の前にいるんだけどなぁ。


「仕方ねえさ、レウスは戦闘以外じゃ影薄いからな」


 だ~れが影薄いだって!?

 常識人なだけ! 俺は常識人なだけだから!


「大体よぉ、俺が用があんのはマニュだけなんだから、マニュさえいれば良かったのに。まあおまけでマニュのパーティーメンバーのレウスがいるのはいいとして、ミラッサはなんでいんだよ」

「わかんないの? 簡単よ、あんたら三人で仲良くしてると嫉妬するからでしょ」

「子供か」

「あたしの方が年上ですぅー」


 俺は常識人なだけ、俺は常識人なだけ……ハッ!

 自分に言い聞かせている間に、頼りになる二人が軽く言い合いを始めてしまった。

 ここは、俺が収めなきゃだよな。

 影なんて薄くないってところ、見せてやる!


「まあまあ二人とも。ミラッサさんもリキュウもどっちもどっち、どんぐりの背比べってことで」

「……レウスが一番毒舌じゃねえかよ」

「結構今のグサッときたわね……」


 あれ?

 おかしいな、争いを収めようとしただけなのに。


「リキュウさんはレウスさんとミラッサさんがいるの、いやなんですか?」


 そんな風に聞いたのはマニュだ。

 リヤカーを押しながら、純朴な眼差しをリキュウへと向けている。

 この目に見つめられてるだけで、なんか嘘ついちゃいけない気分になるんだよなぁ。


「んー……いや、まあ嫌じゃねえな。正直言うと、こんな風に集まってわざわざ俺のために催しをしてもらえるとは思ってなかったから、悪くはねえ気分だ」

「つまりツンデレか、需要なさそうだな」

「お前ほんとボコす」


 ボコすのは勘弁してくれ。

 痛いのは苦手だし。


 ……ん、なんかマニュがチョイチョイって服を引っ張ってるな。

 どうしたんだろ、二人には聞かれたくない話かな?

 じゃあちょっと下がって、マニュの隣に移動して……どうしたの?


「なんだか四人でいると楽しいですねっ」

「そうだね、俺もそう思う。絆を感じるっていうかさ」

「絆……おいしそう」


 うん?


「レウスさん、絆って食べれますかね?」

「まず質問の意味が汲み取れないよね」

「じゃ、じゃあ食べれない……!?」


 なんで驚いてるの……?

 マニュは概念を食べようとしてるの? 化け物なの?


「あら、いつの間にか二人で楽しそうにしちゃって。何話してたの?」

「お腹減ったなーって話です」


 え、今のってそんな話だったっけ!?

 第一、朝ごはんもしっかり食べてきたのに……すごい食欲だ。


「あいかわらずマニュちゃんは食いしん坊ねー。こんなに細いのに」

「ひゃん!? きゅ、急に触られるとビックリします……っ」

「ふふ、マニュちゃんったら反応がかわいいんだもん」

「あ、うぅ……っ」


 なんか隣でとても刺激的な光景が繰り広げられ始めました。

 落ち着け俺、気持ちを静めるんだ。

 すぅー、はぁー。すぅー、はぁー。

 ……よし、もう大丈夫。


「やめとけよお前ら、そんなことしてるとレウスが興奮しちゃうだろうが」

「俺じゃなくてリキュウだろ」


 お前<聞き耳>スキル活用してたりしてそうだもん。

 ね、ミラッサさん?


「え、なに? リキュウがレウスくんに興奮してるって?」

「奇跡的な聞き間違いをすんな。俺にそんな趣味はねえ」

「リキュウ、お前、俺のことをそういう目で……?」

「おい違うぞ、違うだろ。なんでお前が勘違いしてんだ。さっきは普通に言い返してきてただろうが」

「き、気持ちは嬉しいけどさ……その、ごめん」

「なんで俺振られてんだよ! ふっざけんな!」

「え、じゃあ受け入れた方が良かったのか?」

「そういうことじゃねえだろ!」


 ?

 どういうことだよ、よくわかんないなリキュウも。


「ど、どんまいです、リキュウさん。きっといい人見つかりますよ。ね……?」

「マニュ、気持ちはありがたいんだが、慰められるとガチで振られたみたいだからやめてくれ……」


 ポンポンと空いた方の手で肩を叩かれ、ガックリするリキュウ。

 マニュはああ見えて善意百パーセントだもんな。そしてそれが逆に辛いという。

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