表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
3章 マニュ・ルナチャルスキー編
33/81

33話 お祝い

 ケビンたちとの戦闘から数時間後。


「マニュちゃんのパーティー脱退記念に、かんぱーいっ!」

「かんぱーい!」

「乾杯」


 グラスをカンカンと小気味良く鳴らす。

 いやー、やっぱりこういうときは酒場でお祝いだよね!

 めでたい時は祝わなきゃ!


「皆さん、わたしの為にどうもありがとうございます」

「いいのいいの、それよりパァーッと騒ぎましょ!」


 そうそう、ミラッサさんの言う通りだよ。

 だからマニュもそんなにかしこまらないでどんどん飲み食いしちゃいなって。

 十二歳超えてれば飲酒も問題ないんだからさ。

 ……おっ、ジョッキ行くの?


「いただきます……ごく、ごく、ぷはぁっ」


 ……マジか。

 ジョッキを一気にとか……マニュ、可愛らしい顔して意外とやるなぁ。

 そんな小さな口でどうしてあんな勢いよく酒が減っていくんだ? 軽いミステリーだよ。


「マニュ、気持ち良い飲みっぷりだね」

「お酒は強い方なので。……あ、店員さん。おかわりお願いします」


 こりゃあまだまだ呑みそうだぞ……。


「意外な伏兵だわ……これは酒豪のあたしも負けてられないわね」


 ミラッサさんはそう言いながら酒をチビチビ口に入れる。

 もうこの時点でミラッサさん負けそう。

 だって勢いが違い過ぎるよ。もうマニュは二杯目に口を付けてるし……あ、今飲み干した。


「ぷはぁ」

「も、もう二杯目呑んじゃったの!? は、速すぎない……?」

「お酒は水と一緒ですから。……むしろ水より飲みやすいかも?」

「……!?!?」


 ミラッサさんが絶句してる。

 駄目だよミラッサさん、撤退した方がいい。

 勝ち目のない戦いに挑むのは勇気じゃなくて蛮勇だよ。

 一流の剣士なんだから、引き時は心得なきゃ。


 ミラッサさんがフリーズしている間に、マニュはひょいひょいと料理を口に運んでいく。

 その手が休まることはない。もぐもぐと小さな口が動くたび、テーブルから料理が一つ消えていった。

 お酒だけじゃなくて料理もそんなに食べれるのか、本当に凄いな。

 マニュの胃袋はきっと異次元に繋がってるんだ。そうに違いない。

 というかマニュ、君すでに自分の身体の大きさ分くらいの量の料理食べてない……?

 本当にどうなってるんだ?


「美味しいですね。わたしお食事大好きですっ」


 小さな口でニコリと笑う小さなマニュは、さながら天使のようだった。

 その前に積み上がった山のような空皿がなければ、の話だけど。


「す、すごいね……」


 呆気にとられた俺は思わず周りの反応を確認してしまう。

 ミラッサさんは俺と同じように目を丸くしている。

 そしてリキュウは……あれ、意外と普通そうだ。


「リキュウは驚かないの? マニュの食べっぷり」

「ああ、俺は元から情報として知ってたからな。実際目にしたらそりゃすげえと思うけど、お前みたいに口をあんぐり開けるほどの衝撃はねえよ」


 さすが情報通、マニュが大食いなことも知ってたのか。

 そういやステータス見たとき<聞き耳LV6>とかあったもんな。

 意外と戦闘よりも斥候役とかそういうのの方がリキュウには向いてるんじゃないか?

 そんなことを思っていると、リキュウがボフッと背もたれに体重を預けた。


「まったく、まさかこんなことに付き合わされるとはな。俺はさっさと帰って寝たかったのによ」


 憎まれ口を叩くリキュウ。

 俺はそんなリキュウににんまりと笑みを浮かべてしまう。


「リキュウ……お前、素直じゃないなぁ」

「は、はぁ!?」

「さっさと寝たいと思ってるヤツがなんで誰よりも率先して店選びなんかするんだ? 本当は自分もマニュを祝ってやりたかったくせに」


 正直になれない辺り、本当に素直じゃないヤツだなぁ。


「う、うるせえ! レウス、余計なお世話だよ!」


 途端に慌てだすともっと信憑性が増すってことに気づいてないのかな。

 それとも突発的に反応しちゃってるんだろうか。きっとそうだろうな。

 で、こういうところが憎めないんだよなぁ。


「おい、聞いてんのかレウス!? おいっ!」

「聞いてるよ。そんなに興奮するなって」

「仕方ないわよ、リキュウはクールぶってるのがカッコいいと思ってるお年頃なんだから」

「ミラッサぁ……! お前といいレウスといい、俺をからかうんじゃねえよ。なあ、マニュもそう思うだろ?」


 二対一では分が悪いと思ったのか、リキュウはマニュに助けを求めた。

 マニュはあははと笑って答える。


「お二人もあなたがいい人だって思ってるから、からかいたくなっちゃうんじゃないですかね?」

「ふーん、そんなもんかぁ? コイツラが俺を、ねぇ……」

「良い人だと思ってるよ」

「良い人だと思ってるわよ」

「本当かよ、まったく……」


 そんな呆れたような顔をされても、本心だって。

 俺もミラッサさんも嘘はついてないよ。


「本当ですよ。照れちゃうから真面目に言えないだけですって。わたしには分かります」


 って、マニュにはお見通しだったか。参ったなぁ。

 図星を突かれて二人揃って頬を掻く俺とミラッサさんを見て、ようやくリキュウも納得したようだ。


「……まあ、そう思ってやるとするか」

「それがいいですよ。どんどん呑みましょう。ね、キュウリキュウさん」

「俺はそんな名前じゃねえ。……ていうかマニュまで俺を弄ってんじゃねえか! いつから俺は弄られキャラになったんだよ!?」


 いつから……? 最初からじゃなかったっけ?


「まあまあリキュウリ。呑もうよ、な?」

「だ~か~ら~っ、俺はリキュウっ! いい加減覚えろよな!」


 リキュウは怒りながらも笑みを浮かべ、「こんな失礼なヤツラは初めてだぜ」と言いながら渡された酒をグイッと飲み干す。


「言っとくけどな、俺の名前をちゃんと呼ばねえヤツはエルラドには行けねえからな。そういう呪いを今かけた」

「酔ってんのか? 大丈夫かリキュウ?」

「大丈夫ですかリキュウさんっ」

「リキュウ、大丈夫?」

「そういうときだけちゃんと名前で呼びやがってこの野郎……」

「あははっ。……あ、店員さん、ビールおかわりお願いします」

「ま、まだ呑むの……!? これ、もしかしてあたし勝てない……?」

「そんなもん最初っからわかってるだろ。お前じゃマニュに勝てねえよ」

「な、なによ! やってみなきゃわかんないじゃない!」

「ふふふ。ミラッサさんの挑戦、受けて立ちますよ」

「あ、あら、随分余裕じゃないマニュちゃん。その余裕がどこまで通じるか見物ね……?」

「ミラッサさん、撤退も立派な戦略ですよ。恥じることじゃないです」

「ちょっ、レウスくんまで!?」


 ああ、なんというか……本当に楽しいなぁ。

 あの日同じ地竜車に乗ったのがこの四人で本当に良かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ