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潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
3章 マニュ・ルナチャルスキー編
27/81

27話 マニュの特訓

 翌日。


「準備は出来た?」

「はいっ」


 俺とマニュは、二人きりでEランクの狩場へとやってきていた。

 理由はもちろん、マニュを鍛えるためだ。

 マニュがケビンに舐められているのは、戦闘が出来ないからに尽きる。

 ならばそれを改善してやろうじゃないかということで、俺たちは今日ここにやってきていた。


 Eランクの狩場は場所ごとに出てくる魔物こそ違えど、特に相手に合わせる必要はない。

 こっちが自分の実力を出せれば問題なく狩れる相手だ。

 ただ、マニュは面持ちを固くしてるけど。


「大丈夫?」

「……ちょっと怖いです。魔物と戦うのが怖くて、今まではなるべく逃げてきたので。……でも、このままじゃ駄目だって気づいたから、頑張ります」

「よし、その意気だ。俺もフォローにつくから、一緒に頑張ろう」


 偉そうな口を叩けるほど強くはないけど、それでも一応DランクにはなったわけだしEランクの魔物相手なら充分マニュをフォローできるはず。

 そう考えた俺は今日、マニュの補助役として戦闘に参加することにしていた。


 ……あ、でも危ない時以外は手を出さないけどね。

 マニュが恐怖心を克服するのが目的なのに、俺が出しゃばっちゃったら意味ないし。


 早速、マニュが先頭で狩場を歩き始め、俺がリヤカーを引いてその後をついて行く。


「あっ、いました」


 見晴らしのいい平原なので、魔物はすぐに見つかった。

 慎重に近づいていくマニュの後ろから、魔物の種類を確認する。


 んー、あれは……スライムだな、うん。普通のスライムだ。

 特に何の特徴もない、スライム系の魔物の一番基本となる魔物だな。

 ピョンピョン身体を揺らす事前動作からの体当たりくらいしか攻撃方法はないので、よほどのことがない限りは問題なく倒せるだろう。


 抜き足差し足忍び足でスライムへと近づいていくマニュ。

 二年もEランクをやっていただけあって、その足遣いは慣れたものだ。

 俺と同じくらいか、もしくは俺より上手いかも? 身体が軽い分、音もしにくいみたいだ。

 てなことを思っているうちに、マニュがスライムの背後をとった。


「キュキュ?」


 スライムはまだマニュに気が付いていない。

 今だ! 今なら一撃入れられるぞ!

 俺はマニュの小さな背中に視線を送る。


「……えいっ!」


 そんな思いが通じたのか、マニュは引き抜いた短刀をスライムの脳天に突き刺した。

 不意を突かれたスライムは一撃でくたばり、力なくその場に溶けていく。

 マニュはしばらく無言でそれを見つめると、その場に残ったスライムの素材をひょいと掴んだ。


「倒せました!」


 緊張感から解き放たれたような朗らかな笑顔で、俺にスライムの素材を渡してくる。

 俺はそれを受け取り、リヤカーに投げ入れた。


 スライムは脳天を突くとドロドロになっても素材を解体するまでもなく素材だけが残るんだっけか。さすが<解体LV8>と<観察LV7>、俺はそんな倒し方試したこともなかった。

 今度スライムを倒す時はやってみようかな。

 あ、でもなぁ……マニュは平気そうだったけど、ドロドロに溶けていくとき意外とグロかったしなぁ。

 やっぱりやるのは抵抗があるかも……。


 ……というかマニュ、普通に戦うの上手いね!?

 ラージゴブリンに襲われた時に何もできていなかったから、てっきりもっと戦えないもんだと思ってたけど……この分だとファイアーボールなしの俺よりも強いよ!?

 そりゃもちろんミラッサさんとかとは比べものにならないけど、いっそのことDランクでもおかしくないくらい。

 なんでこんなに強いのに二年間もEランクのままだったんだろう……?


 そんなことを思っていると、マニュが新たな魔物を見つけたようだ。

 まあ、これだけ視界が開けていれば魔物を探す手間なんてあってないようなもんだしね。

 で、次はどんな魔物を見つけたのかなっと。


「おー、ゴブリンか」


 俺の腰ほどの大きさのゴブリンだ。マニュから見ると胸ほどまでの大きさだろうか?

 緑色の肌をした小人が、木で作った棍棒を持って辺りをウロウロと徘徊している。

 スライム、ゴブリンとEランクの代表のようなモンスターが続くな。まあ、無理もないか。

 スライムとゴブリンとコボルト、この三種類は『ザ・Eランク』みたいな感じで、知名度も高くて生息範囲も広い魔物だ。だから自然と遭遇率も高くなるもんな。


「っ……!」


 ……あれ?

 なんかまた、マニュの身の固さが一層増したような……?

 スライムを討伐できたことで良い感じに解れたはずのマニュの表情が最初以上に固い。

 これ、声をかけてあげるべきなんだろうか。

 うーん、でもマニュが戦えるようになるための訓練なんだし、声はかけない方がいいのかなぁ。

 教わる立場なら何回もなったことあるけど、人を教える立場なんて初めてだからよくわからないや。


「マニュ、大丈夫?」


 とりあえず、ひと声かけておこうっと。

 今はあくまで本番じゃなくて訓練なんだし。

 別に間違いじゃないよね?


「だ、大丈夫です。が、がががんばります……!」


 ……あんまり大丈夫そうに思えないけど……。

 まるでドラゴンと向かい合った時みたいな深刻な表情してるし。

 マニュの実力があれば、そんなに顔をこわばらせる必要もないと思うよ……?


 でもまあ本人が大丈夫って言ってるんだし、やらせてみよう。

 ゴブリンは冒険者をやるなら避けては通れない相手だもんな。

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