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潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
3章 マニュ・ルナチャルスキー編
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26話 待合室にて

 男たち三人を病院へと運んだ俺とマニュは、病院の待合室で二人きりになっていた。


「……」

「……」


 か、軽く気まずい……。

 どうしよう、俺から何か切り出した方がいいのかな。

 そもそも今マニュは会話とかできる精神状態なのかな?

 そっとしておいた方がいいのかも?


「レウスさん」

「あっ、はい、うん」


 そんなことを思っていたら、マニュから話しかけてきた。

 うわ、めちゃくちゃダサい返事しちゃったよ。

 違うんだよ、いきなり話しかけられてちょっとびっくりしちゃったっていうかさ。


「ありがとうございました。助けてくれて」

「……うん」


 って、そんなテンションの話じゃないよね。わかってた。

 目の前のマニュは俺に深く頭を下げていて、いつまで経っても頭を上げる素振りを見せない。

 多分、俺が止めるまでずっとやり続けるつもりなんじゃないだろうか。

 そう思った俺は、マニュの肩を支えて頭を持ちあげさせた。


「ねえマニュ、もう一度提案なんだけどさ。俺とパーティーを組んでくれないかな」

「……えっ?」


 そうだよね、そりゃ目も真ん丸になるよね。

 俺的には別に意外でも何でもなくて、マニュの扱われ方を見た時点でもう一回勧誘するのは決まってたようなもんなんだけどさ。

 マニュからしたら驚きだろうとは思う。


「正直に言うと、今日俺はマニュたちのパーティーの後をつけてたんだ。明らかに普通じゃなかったから」


 元から隠し立てするつもりはなかった。

 もしも彼らがまともにマニュとパーティーを組んでいたならば、後をつけていたことを謝罪してマニュからは手を引くつもりだった。

 俺としてはそうなってくれた方が良かったけど……そうはならなかったしね。


「運搬役と囮役を一人に任せるなんてふざけてるよ。俺ならマニュにあんなことはさせない。約束する。……どうかな、マニュ」

「で、でも、その……」


 もごもごと口ごもるマニュ。

 おそらく言いにくい何かがあるのだろうと察した俺は、その内容に斬り込んでみる。


「もし、彼らとパーティーを組んでいるのに何か理由があるなら教えてほしい。俺に出来ることなら協力したいんだ」


 マニュは躊躇う様に手を遊ばせて、チラチラと俺と男たちの病室の方を交互に見た。

 だけど、やがて意を決したように一度大きく息を吸う。

 ありがとうマニュ、勇気を出してくれるんだね。


「じ、実は……」

「うん」

「ケビンさんたちに脅されていて……」


 脅されてた……か。

 リキュウの読み通りだったってわけだ。

 アイツ、意外と凄いんだな。


 っと、今はリキュウのことよりマニュのことだ。

 話に集中しよう。


「この街に来て数日目に、私が肩がぶつかってコートに染みをつけてしまって『弁償してほしい』って言われたんですけど、お金が無くて。『じゃあ代わりにパーティーに入れ』って言われて、逆らえなくて仕方なく……」

「弁償って、いくら?」

「50万イェンです」


 50万イェンか……。

 明らかにアタリ屋だな。

 Eランクの冒険者にはよっぽどじゃなきゃまず支払えない額だ。


 金儲けついでに気の弱そうなマニュを見つけて、雑用係としてパーティーに入れようと思いついたってところだろう。

 マニュもそんなの断ればいいのに、人がいいから断れなかったんだろうな。

 ――そういう、真面目な冒険者を嘲笑うようなやり方、腹立つなぁ……。


 っと、危ない危ない。

 今怒ってる顔したら、マニュに怒ってるみたいになっちゃうよね。

 平常心平常心。


 とりあえずわかったことは、マニュはお金を払えなくて脅されたから仕方なくケビンたちとパーティーを組んでたってことだ。

 なら、そのお金をどうにかすればいいってことだな。


「話は分かった。なら、それは俺が払っておくよ」

「いえ、そんな!」


 慌てて手を振って否定するマニュ。

 小っちゃい手だ。

 こんな手でもリヤカーを頑張って引いてるんだよな。


 たしかに今のマニュからして見れば大金かもしれない。

 でもDランクに上がった俺なら払えない額じゃない。

 それでも結構ギリギリだけど、マニュを解放するためだと思えば安いものだ。


「気にしないで、話を聞かせてもらったことへのちょっとしたお礼だから。ほら、同じ地竜車に乗ったよしみでさ。ね?」

「……いつか、かならず返します」


 そんなに気負わなくてもいいんだけど……うーん、中々伝わらないなぁ。

 あ、でもどうしても伝えておかなくちゃいけないことはあるんだよね。

 マニュのおでこをコツンと叩いて……っと。


「マニュは可愛いんだから、あんまり流されてばかりじゃ駄目だよ?」

「は、はい」


 これでよしっと。

 あれ? なんか「ふしゅぅぅぅ……」って一層マニュが小さくなっちゃった気がするけど……まあ、見間違いかな?


「じゃあ、俺から金は渡しておくから――」

「待ってください!」


 その場を離れようとした俺を制止させるため、マニュは勢いよく立ち上がる。


「ちゃんと筋は通そうと思います。自分で渡します。……そして、あの人たちのパーティーを抜けます」


 おお、マニュの蒼い目に強い意思の光が見える。

 なんだ、そんな顔も出来るんじゃないか! カッコいいぞマニュ!


「でもその前に、私に稽古をつけてください。あの人たちを見返したいんです!」


 そう言って再び下げられた頭。

 同じように肩を支えて頭を上げさせてから、俺は答えた。


「もちろん! 一緒にアイツラを見返してやろうぜ!」

「ありがとうございます、レウスさん! 私、頑張ります!」


 マニュがやる気を出してくれた!

 胸の前で小さくグッと拳を構えるって、やる気の出し方まで可愛いけど、とにかくやる気を出してくれたのは事実だ。

 マニュがケビンたちを見返せれば気持ち良く俺とパーティーを組んでくれるかもしれないし、こりゃ俺もいっちょ頑張らなきゃな!

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