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潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
2章 <ヒール>と<鑑定>編
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12話 契約成立!

 笑いが収まったミラッサさんの呼吸が整うのを待って、声をかけてみる。


「落ち着きました?」

「うん、もう大丈夫。ごめんねレウスくん、迷惑かけちゃった」


 いや、たしかに街中だったから軽く注目を浴びたけど、でもそんなに迷惑はかかってない。

 むしろ笑顔で涙を拭うミラッサさんにドキッとしてしまって、申し訳ないくらいだ。


「えーと。話が脱線しちゃったから、話を戻すね? 君は今日Dランク魔物を狩った。でも、魔法の威力が強すぎて、素材が残らなかった。そんなこと他では聞いたことないけど、でもそうよね?」

「はい、あってます」


 考えてみればなかなか聞かない悩みだよな。強すぎて困ってるって。

 でも、実際に俺にとってはとてつもない悩みだ。

 まったく、まるで聖剣を持たされた見習い剣士の気分だよ。

 昔そんなおとぎ話を読んだ時は情けない剣士だとしか思わなかったけど、今なら違う感想を抱きそうだなぁ。

 これが年を取るってことだろうか。まだ十五歳だけど。


「で、ここであたしとパーティーを組む利点の話になって来るんだけどさ。あたしと臨時パーティーをくめばその辺りはとりあえず問題なくなるわ。もしパーティーを組んでくれるなら、Bランク用の狩場に行こうと思ってるの。あたしの地元にはCランク用までしかなかったけど、ニアンにはあるのよ」

「び、Bランク用の狩場に、ですか……?」


 無意識のうちに、手が唇に触れていた。

 恐怖を前に、身体が勝手に防衛反応をとっていたのだ。


 正直、狩りに行くにしてもDランクかCランクの狩場かと思っていた。

 それがまさか、Bランク用の狩場なんて。

 Eランクの俺が、そんな場所から生きて帰って来れるのだろうか。

 その不安を読み取ったかのように、ミラッサさんは頷いてくれる。


「もちろん、レウスくんの身のこなしじゃBランクの狩場じゃ即死だわ」


 あ、やっぱりそうですよね。即死ですよね。

 じゃあ、なんでそんなところに俺を連れていこうとするのだろう。


「だから、魔物がレウスくんに襲い掛かってきても、あたしが近づけさせない。君の身はあたしが守る。その代わりに、レウスくんはそのファイアーボールで敵を倒すことだけ考えればいいってわけ。Bランクともなれば、さすがに君の魔法でも素材は残ると思わない?」

「た、たしかに……」


 Bランクの魔物相手なら、むしろ最小限の威力では倒しきれないくらいだろう。

 ミラッサさんの言っていることにも筋が通っている。

 というかむしろ、筋が通り過ぎなくらいだ。


 ……あれ、ちょっと待てよ?

 この人、俺にお願いをされてから答えるまでのほんのわずかな時間にこれだけのことを考えてたってことか? だとしたら、頭の出来が俺と違い過ぎない……?

 腕も立って頭もいいって、向かうところ敵なしじゃないか。


「でも、守りをあたしに一任してもらう訳だから、信用しきれないと思ったら断ってもらっていいわ。一応言っておくけど、冒険者同士が互いを信じきるって難しいわよ? あたしはレウスくんの素性を知らない、レウスくんはあたしの素性を知らない」


 こういうことに慣れていない俺のために、こうして注意喚起までしてくれる。優しくて涙が出そうだ。

 ミラッサさんは今二十歳だって言ってたっけ。

 あと五年後、俺はこうなれているのだろうか。

 ……ビジョンが見えねえぇぇぇっ。


「そんな状態でもパーティーを組んでいいって君が言ってくれるなら、あたしは喜んでパーティーを組みたい。……あ、安心してね? パーティーを組むのが無理な場合でもお金は貸してあげるから」


 ミラッサさんの口がキュッと結ばれ、小さく閉じた。

 話は終わったということだろう。


 俺の答えを待つように、ミラッサさんはジッと見つめてくる。

 でも、まだ答えは出せない。

 答えを出す前に、どうしても聞いておきたいことがあった。


「なんでそこまでよくしてくれるんですか……? パーティーの話だって、ミラッサさんにメリットが見当たらないですし」


 そう、ここまでしてもらう理由がない。

 俺からすれば本当にありがたい。願ってもない話だ。

 だけど、ミラッサさんからすればどうだ? 今すぐにでも野たれ死にそうなEランクに、ここまでしてやる義理はないはず。

 パーティーを組まなかったとしてもお金を貸してくれるだって? そんなの、夢みたいに一方的にこちらに都合のいい話だ。


 どうして、ミラッサさんはここまでしてくれるのだろうか。

 それだけが純粋に疑問だった。


 ミラッサさんの口が開く。


「言ったでしょ? あたし、あなたが凄い冒険者になるって確信してるのよ。だから、つまらないことでその道が閉ざされちゃうようなことになるのは嫌なの」


 帰ってきたのはシンプルな答えだった。

 嘘をついているようには見えない。本心……なのだろうか。

 そうだとしたら、どうやらミラッサさんは俺にかなりの期待を寄せてくれているようだ。


 なんだか、肩が重くなった気がするな。

 気のせいかな。

 どうだろう、わからない。


「それに、あたしにもメリットはあるわ。高ランクになって来ると、護衛の依頼も増えてくるからね。そういう時の予行練習よ。おねーさんが実験台として使ってあげる」


 最後におどけたように付け足し、ウィンクをするミラッサさん。

 それが最後の決め手となって、俺の心の中は決まった。


「ミラッサさん」

「なにかな、レウスくん」

「よろしくお願いします!」


 勢いよく頭を下げる。

 Bランク冒険者と……というかミラッサさんとパーティーを組める千載一遇のチャンス。

 こんなの逃せるか!

 むしろ、心変わりしないでって頼みたいくらいだ。


「あら、いいの?」


 下げた頭を持ち上げると、ミラッサさんの声がかかった。

 いいの? いいのってどういう意味だろう?


「あたしが何か企んでるかもしれないわよ? たとえば狩場に一人だけ置いてきちゃうとか」


 たしかに、それをされたら困るなぁ。

 Bランクの狩場に取り残されたら多分無事じゃ済まないだろうし。

 でも、この申し出は断らない。


「ミラッサさんがそんなことをするとはとても思えないですし、万が一されても恨まないので大丈夫です」


 その時は俺の見る目がなかっただけだ。

 ……というかさ、わざわざそんな注意をしてくれてる人が本当に置いていくわけないんだよね。

 多分ミラッサさんは俺の今後のために「あんまり簡単に他人を信用しちゃいけないよ」ってことを教えてくれてるんだと思うけど、ミラッサさんへの信用度が高すぎてあんまり効果が無いというかなんというか。


「されても恨まないって……。お人好しねぇ。守ってあげたくなっちゃう」

「はい、是非お願いします!」

「……え?」

「え?」


 あれ、なんでそんなに目を真ん丸に?

 俺、別におかしなこと言ってないよね?


「パーティーの役割の話ですよね? 守ってもらう代わりに、俺はファイアーボール頑張りますから! よろしくお願いします! ……ってことだったんですけど、俺、なんか変なこと言いましたか?」

「あ、ああ、そうよね。ううん、なんでもないの」


 本当に何でもなかったのかなぁ。

 まあ、わざわざ探りを入れるようなことでもないか。

 これから臨時とはいえパーティーを組むわけだしね。


「おねーさん、頑張ってレウスくんを守っちゃうんだから」


 俺、ウィンクするのって苦手なんだよね。どうやっても変な顔になっちゃうんだ。

 それに引き替えミラッサさんは、毎回パチリと見事なウィンクを決める。

 すごいな、練習とかしてるのかな。って、そんなこと考えてる場合じゃないか。


「俺も一匹でも多く倒して、ミラッサさんの負担を減らせるように努力します!」


 せっかくBランクのミラッサさんが俺と組んでくれるんだ。

 頑張らなきゃ!


「庇護欲そそっちゃってまあ……はぁぁ、抱きしめたいわぁ……」

「え?」


 今何か言ったよね? 風の音で良く聞こえなかったけど……。

 首をかしげると、ミラッサさんはブンブンと手を振る。


「あ、なんでもないっ! なんでもないからっ! じゃあ、今日はありがと。また明日」

「はい、お疲れ様でした」


 よくわからなかったけど……まあ、パーティーは組んでくれたんだし、いっか。

 ミラッサさんには感謝しなきゃな。

 これでお金を稼げるぞぉ!

 浮足立つ足が勝手にスキップを始めようとするので、それを抑えながら宿のある方へと向かうのだった。

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