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潜在魔力0だと思っていたら、実は10000だったみたいです  作者: どらねこ
2章 <ヒール>と<鑑定>編
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11話 対等な関係

「何か、俺がミラッサさんの役に立てることはありませんか? 掃除でも、洗濯でも、素材の解体でも、なんでもします。だから、お願いします!」

「ふぅーん……?」


 俺の話を聞いたミラッサさんはしばらく俺を見つめると、目を三日月型に歪めた。

 そして面白そうに言う。


「レウスくん、カッコいいじゃん」

「へ、何がですか……?」


 カッコいい?

 むしろ最高にカッコ悪いと思うんだけど……。


「うん! なら、あたしと臨時パーティー組もうよ」

「解体役ってことですね、わかりました! ありがとうございます!」

「いやいや、そうじゃなくてさ」


 ミラッサさんは、ふっ、と吹き出して笑う。

 ……え、違うの?

 ミラッサさんの様子を見るに、俺が勘違いしているのは間違いなさそうだ。

 でも、ミラッサさんが俺とパーティー組む理由っていったら、それくらいしか思いつかないんだけど……。

 ……ハッ、もしかして囮役!? い、いや、ミラッサさんがそんなこと俺に頼むはずないし……。

 うーん、わからない。


「あ、あのー、どういうことですか?」


 仕方がないので、直接尋ねることにした。

 ミラッサさんが切れ長な凛々しい目で俺を見る。

 うぉぉ、心の奥まで見透かされたみたいだ。って、ミラッサさんが人差し指を立てたぞ?

 俺を指差して? ……次にミラッサさんを指差して?


「あなたが殲滅役で、あたしがその他全て。分け前は半々。……どうかな?」


 ……え、それってつまり。

 Eランクの俺が、Bランクのミラッサさんと対等な関係の臨時パーティーを組むってことか!?


「俺とミラッサさんが対等なパーティーを組むって……ほ、本当に言ってるんですか?」

「あたし冗談は言うけど、仕事には真面目よ? こんな冗談言わないわ」


 じゃあ、本気で言ってるってこと?

 ミラッサさんが? 俺とパーティーを組む?


 ……いやいやいや! たしかに俺にはファイアーボールがあるけど、それでもBランクのミラッサさんと対等にパーティーを組めるとは思えないぞ……!?

 というか、そもそもミラッサさんにメリットがあるとは思えない。

 それとも、なにかあるのか……?


「レウスくん、あなた多分今日、Dランク相手に狩りをしたでしょ。それで、素材が魔法の威力に耐え切れずに無くなっちゃった。違う?」

「そ、そうです! なんでわかるんですか!? ミラッサさんってもしかして、エスパーなんですか!?」


 目が合った途端に事実を言い当てられたせいで、声が裏返っちゃったよ。

 微笑を浮かべるミラッサさんは、例えエスパーでも何の不思議もないようなくらい神秘的に思える。

 あ、でも首を横に振ったってことは、エスパーではないのか……?


「考えてみれば自然なことよ。あなたのそのファイアーボールはたしかに驚異的な威力だわ。なら、出来る限り強い魔物のいる狩場で狩りをするべき、なら何故それをしないのか? ……できないからよね?」

「……はい」


 ぐうの音も出ない。

 ミラッサさんの言うことは全てその通りだった。

 俺は黙ってミラッサさんの話を聞く。


「ラージゴブリンとの戦闘を見た限り、身のこなしはEランクの平均くらいだったわ。あれじゃ相手取れそうなのはDランクまで。身体もあまり鍛えてなさそうだし、C以上の魔物に一撃を喰らえば即死んじゃうものね。その判断は間違ってないと思うわ」

「鍛え――」


 鍛えてます。そう言いたかったけど、言えなかった。

 俺は鍛えてる。魔物を倒しに行く以外にも、自主練をしたりもしてる。身体も引き締まっていると思う。

 でも、それらの前にはいつも『Eランクにしては』という前置きがつくのだ。


『Eランクにしては』鍛えてる。

『Eランクにしては』魔物を倒しに行く以外にも、自主練をしたりもしてる。

『Eランクにしては』身体も引き締まっている。


 それが今の俺だ。

 Cランクの魔物を相手取るには、まだまだ鍛え方が足りないのは、自分でもすぐにわかった。

 ……目の前のミラッサさんなんて、ほれぼれするような身体してるもんなぁ……。

 俺なんかより普段の訓練も一生懸命やっているんだろう。

 それと比べちゃうと、やっぱり俺の身体はEランクの身体だ。悔しいけど。


 ……って、あれ?

 なんかミラッサさんの顔が赤いぞ?


「……そんなに熱視線で見つめられると、照れちゃうんだけど……」


 視線を逸らしながら言われて、やっと気づいた。

 俺は結構な失礼を働いてしまったらしい。

 女性の身体をじろじろ見るなんて、これじゃ変態じゃないか!

 すぐに謝って、弁明しないと!


「あ、す、すみません! すごく綺麗な身体だったので! ……あっ、い、いや、綺麗っていうのはあの、鍛えてるって意味で! そういう意味で!」


 ああ、変なこと言った!

 テンパりすぎて何言ってんのか自分でもわからなくなってきた、最悪だ……!


「あの、その、本当にそうじゃなくて……あの、えっと……」

「うん、わかってるから。そんなに慌てなくても大丈夫だよ。それに、そんなに慌てられると……ちょっと面白くなってきちゃうじゃない」

「面白くなんかないですよ!?」

「ふふ、ふっ……あははっ。ごめん、ちょっとツボに入った……!」


 えぇ……?

 そんなにお腹を抱えるほど面白かったか、俺?

 でも、すごい勢いでテンパっちゃったのは確かだ。もう少しこういうのにも耐性つけていかなきゃだな。

 ミラッサさんは優しいから笑って許してくれたけど、誰でもそうはならないだろうし。


「~っ! い、息が……っ!」

「……あのー、ミラッサさん? そ、そろそろ収まってほしいかなぁなんて思うんですけど……」

「ご、ごめっ、ごめんレウスくん……っ! 今ちょっと、本当はなしかけにゃいで……あははっ!」


 ……うん。ミラッサさんに笑われないためにも、今度はもっと冷静な対応を心がけよう。

 呂律が回らないくらいにケラケラと笑うミラッサさんを見ながら、俺はそう心に決めた。

同時連載してる『魔法? そんなことより筋肉だ!』のコミカライズ1巻が10月22日に発売されるので、手に取ってもらえたら嬉しいです!

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