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大木の中

『ほら、こっから入れるぞ大地』

そう言って父が手をかざすと大木にドアの形が浮かぶ上がる。

『スゲぇだろ?なんと中に入れます!!そして中はなんとこんな感じになってます!!!』

木の引っ掛かりを引いてその扉を開けるとそこは住居スペースになっていた。入ってすぐに広いリビングスペースが広がっており奥にはキッチンのようなものもある。対面式のようなカウンターに阻まれて奥が見えないがきっとキッチンだろう。手前のリビングには明らかに高級そうなソファ、それもL字型のものが2つも備え付けられており、テーブルを囲むような作りとなっている。ソファの中のテーブルもつなぎ合わせ無しの一枚板で作られた高級そうなテーブルだ。それもかなり大きい。この部屋の外の大木の枝だろうか?軽く10人以上用に見える。ソファのすぐ傍には暖炉まで作られており、ログハウスというよりはおしゃれなヨーロピアンテイストという感じだろうか。予想以上のクオリティに思わず声が漏れた。

『すっげ~、これ、父さんが作ったの?』

満面の笑みで誇らしげにそうだと答える父は素直にカッコよかった。

『ほんとにすげーよ、父さん!ここが異世界での家ってことになんの?ちょっと、まじでかっこいいな!』

キッチンの横に扉があり、その奥にも様々な部屋があるはずだ。そうなればかなりの大豪邸だろう。期待した目を向けながら自室についても聞いてみる。

『今日ここに泊まるって言ってたよな!もしかして、俺の部屋もあったりすんの?いやぁ~、楽しみだな~。』

そこまで一気に捲し立てると父の案内を待つ。

『・・・。いや、あとは寝室が一つとトイレが一つだけだな。というかな、作ったのは俺なんだがな、なんつーかだな、これ、俺の家じゃねーんだよな。』

『此処は我の住処であるからの。』

開けっ放しの窓から聞こえてきた声に振り向けばそこには先ほどまでいなかった女性がいた。それもかなり妖艶な美女が。すらりとした黒いシルクのようなドレスを着ているがボディラインが主張しすぎており目のやり場に困る。

『こっちの姿は初めて見るかの。タロウじゃ。』

『ヤメテくれ!!!』

思わず突っ込む。いや、確かにこのタイミングだし、話し方が特徴的だし、異世界だしでと何となくそうかなぁとは思いましたよ、ハイ。でもさ、さすがにタロウはないでしょ、タロウは。そもそも男じゃねえじゃん!

『まぁおぬしの言いたいこともわかるがの。初代と契約した時はまだ人に姿を変えられんでの。そもそもドラゴンには性別という概念がない故、楽な姿に変わるようになったのじゃ。この姿であれば街の人間が優しいでの。』

確かにその姿だったら優しくされるだろうよ。でもなぁ、名前とのギャップがな~。

『なんだ、もうバラしちまったのか。もったいねーなー。お前使って大地誘惑してやろうと思ってたのによぉ。バラしたなら仕方ねぇけどな。まぁ、大地もそのうち慣れるだろ。ちなみに父さんは名前で呼ぶことは諦めた!』

清々しい笑顔を向けてサムズアップする父。くっ、ドラゴンと分かっていてもお近づきになりたいと思ってしまう自分が恨めしいぜ。

『はぁ、わかった。でもドラゴンの姿より人間の姿の方がまだ親近感は沸くからいいんだけどさ。呼び方は保留にしとくわ。』

『ふむ、タロウと言うておるに。まぁお主の好きにするが良いわ。ところでじゃ、そろそろではないのか悟よ。』

『ああ、そのつもりだぜ。とっておきを出してやるからソファに座って待っとけよ。大地、ちょい手伝え。』

そう言うと父は奥のキッチンへと向かっていった。

『手伝うのはいいけど何すんのさ?』

父に尋ねると悪い顔で振り返りながら一言。

『今からヤツのメシを作るんだよ。最近うまいと言わせてねぇからな。今回うまいと言わせられなかったら半年間拘束されてやるって約束しちまってんだよ。大地とともにな。心配すんな。メシ作るだけだからよ。』

ふざけんじゃねぇよ、くそ親父!


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