お仕事
翌日。自分の部屋に着くまで、惚気話を聞かされた俺は、テンションが駄々下がりだった。
「・・・まあ、今日も一日頑張るか」
今日は依頼を頑張ろう。あの三人を鍛えるのは・・・まあ、体力作りだけだし、監視さえ付けとけば大丈夫か。
とりあえず、朝食を四人分作っとこう。目玉焼き・・・は、卵が大きすぎるよなぁ・・・。普通サイズの卵が欲しい。今まで、目玉焼き作る事が無かったから、思いつかなかった。どっかで売ってたよな?
・・・まあ、パンケーキでいいかな。楽だし。あの、牛乳ドリンク(牛乳とスタミナポーション混ぜた奴)を渡せばよかろう。
後は、三人のお昼も作っとかないと。
で、三人のとこ行く前に、ミュウさんとこ行く。
「おはようございます」
「あ、レイヤ君。おはよう。どうしたの?」
「えっとですね。あの三人・・・近藤君と、内藤君と、村上君の訓練の監視役をして欲しいんですが。お金が無いので、依頼受けないといけないんです」
「うん、大丈夫だよ。で、具体的に何をやればいいの?」
「ああ、疲れた時に治癒魔法を掛けてあげてください。後は、お腹が空いた時に、何か食べさせてあげてください。一応、ご飯は作っておきましたが、足りなかったら、食堂で何か作ってもらって下さい。材料は、三人に渡しておきますから」
「それだけでいいの?」
「ええ。よろしくお願いします」
「分かった。それじゃあ、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」
・・・まだ、行かないけどさ。
じゃあ、あの三人のとこ行こう。
「あ、剣、おはよう」
「おはよー。朝食いる?パンケーキだけど・・・」
「ああ、ありがとう」
「あ、あとコレもね」
俺は、牛乳ドリンクを取り出す。
「・・・ああ」
とりあえず、朝食を平らげる。
「・・・で、今日の鍛錬なんだけど」
「今日は何をやるんだ?」
「今日は持久力を鍛えるから、一日中走ってもらう事になるかな。あ、連続で、じゃないから心配しないで」
「・・・そうか」
「ただ、俺は依頼受けるから、監視役の人に代わってもらうけど、いいかな?」
「ああ。気にせずに行ってこい」
「うん、ありがとう。で、監視役の人は、ミュウさんだから。疲れたら、治癒魔法掛けてもらってね。後、倉庫からたくさんスタミナポーションも貰っておく事。百本単位でだよ?・・・後は、お腹が空いたらこれ食べて。足りなかったら、この材料でミュウさんに何か作ってもらうように頼んで」
「あ、ああ。でも、こんなにいるのか?」
「そりゃあね。治癒魔法で鍛えながらだし。栄養も沢山使うから、すぐにお腹が減ると思うよ」
・・・ちなみに、回復魔法には、治癒魔法と治療魔法がある。
治癒魔法は、自然治癒力を高める魔法。大怪我などの治療にはあんまり向かない。どちらかというと、体力の消耗を治す為に使われる事が多い魔法。
今回は、これを使って一気に鍛えようという魂胆。
で、治療魔法は、体を傷つく前の状態に戻す魔法。怪我の治療に向いている。病気にも有効。血も元の量に戻る。
ただし、前の状態に戻すなので、体は鍛えられない。
・・・と、まあこんな感じだ。俺の腹の傷が残ってるのは、治癒魔法を使ったんだろうな。そういや、そんな事言ってたわ。理由は分からんが。
あ、でも、ポーションを使ってたし、治療魔法使ってもどのみち跡が残るか。別にいいけど。
・・・閑話休題。
「それじゃあ、行ってくるよ。サボっちゃ駄目だよ?」
「分かってるよ。じゃあ、気をつけて行ってこい」
「うん、行ってきます」
・・・よし、行ってくるか。
まずは、ギルドに行くとしようか。
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「Dランクの依頼は・・・っと。なるべく、食材になるのがいいよなあ。・・・お!」
見つけたのは、デカイトサカンムリの討伐。おい、名前。適当すぎんぞ。
・・・報酬は一体に付き、500ゼン。
「これでいいな。じゃあ、早速行くか!」
行き先は・・・シリス草原だってさ。
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・・・例の如く、奥には森があるみたいだ。
今回は、そっちに用事は無い。
「さってと、今日は投擲で行こうかな!数を採りたいし」
一杯稼がないとな。
あ、魔物は繁殖力がえらく高いので、たくさん狩っても全く問題無い。ていうか、狩らないと、村が襲われる。
「お、いたいた!・・・元の個体がでかいのに、更にでかくしてどうすんのさ」
デカイトサカンムリ(Dランク)
でかいトサカンムリ。トサカンムリより大きいので、その分強くなっている。味は、トサカンムリと同じ。
その巨体での体当たりは脅威。ぶつかったら、一溜まりも無いだろう。空は飛べないので安心しよう。
弱点は、火属性。
剥ぎ取れる素材は、肉、骨。
じゃあ、狩りますか!投擲で一撃である。
討伐証明は・・・トサカ。違う袋に纏めとこう。
で、デカイトサカンムリを狩っていると、何か、更にでかい、そしてトサカが王冠状のトサカンムリが出てきた。
キングトサカンムリ(Bランク)
トサカンムリの王・・・とは言うものの、別に個体を纏め上げている訳でもなく、そういう種族。命名は、そのトサカの形から。
戦闘力は、他のトサカンムリ達とは比べ物にならない。そして、味も飛び抜けている。
弱点は非属性。こんがり焼くとおいしい。
剥ぎ取れる素材は、肉、骨、トサカ。
・・・Bランクかぁ。勝てるかねぇ?まあ、やってみようか。
こっちに気づいてないみたいだし、先手必勝で火属性で作り出したナイフを、最大限身体能力強化を施した体で、頭目掛けて投げつける。・・・と、頭にナイフが刺さって死んだ。
・・・え?もう終わり?んな馬鹿な・・・。
何か、拍子抜け。ま、闇ゴブGの時よりは遥かにマシだし、別にいいか。
報酬は幾らぐらいだろう?後、説明だと、ものっそい美味いとか。楽しみだねぇ。
あ、ギルドカードで、二人に聞いてみるか。それに、朝の挨拶さえもしてなかったし。
・・・あった、パーティー通信って書いてあるな。そこを押す。
『おはよう』
『うおっ!レイヤか・・・。おはよう。もう、依頼に行ってんのか?』
『うん』
・・・これ、完全に念話ですわ。ちなみに、脳内で考えるだけでもやりとりできるし、口に出してもやりとりできる。
口に出しても、周りには聞こえないって便利だよな。
『レイヤさん、おはようございます』
『ティアラさん、おはよう。それだけど、二人に聞きたい事がある』
『どうしたんだ?』
『いや・・・キングトサカンムリっていう魔物を倒したんだけど、報酬はどのくらいなのかなって』
『あー、あれな。レイヤなら楽勝だろうなぁ・・・。で、報酬かあ・・・エルフィンさん、知ってる?』
『えーっと・・・確か・・・四万ゼンくらいだったかな?』
『え!?一体で!?・・・あ、でもダークゴブリンジェネラルより安いや。二人ともありがと。それじゃ』
『はい、お仕事頑張ってくださいね』
『俺達は、気の練習をしてるぜ』
・・・あれが四万ゼン・・・かあ。一撃だったのにな。
ま、依頼を続けましょうか。
・・・お昼が過ぎて、夕方・・・五時半になる。特に厄介事も起きなかったし、よかったよかった。
で、今日狩ったのは、
デカイトサカンムリ、215体。グレートピグピグ、四体。後は、ビッグカウっていうでかい牛が六体。と、キングトサカンムリが三体(あの後、二体出てきた)。
で、ビッグカウが一体六百ゼンの報酬で、全部合わせると・・・えーっと・・・全部で24万ゼンくらい!
これは・・・凄いな。デカイトサカンムリが割と集団でいたから、一杯狩れた。そのお陰か。後は、キングトサカンムリ。こいつが半分くらい占めてる。
一日で24万ゼン・・・武器購入も遠くないか?
じゃ、デロスに帰りましょう!




