仲直り
今、俺の部屋の前にはあの三人が。
・・・とりあえず、近づいてみるか。報復とかじゃなかったらいいな。
「剣!」
あの三人は、俺の名前を呼ぶと、走ってこちらに来て・・・
「今まですまなかった、剣」
俺に謝った。
「・・・」
・・・・・・
え?・・・え?
「え、えっと?」
「俺達はお前の事虐めてて・・・それで、お前が死んでしまいそうになって・・・」
「それでも、俺達はお前の事を・・・本当にすまない。謝って済むような事じゃないと思うけど・・・」
これは、新手の虐めだったりとか・・・無いか。あの三人、演技でも謝りそうにない。あれ?じゃあ、これは?
「何度も言うが、すまん、剣」
「い、いや、別に大丈夫だよ。もう気にしてないし」
うん、本当に気にしていない。めんどくさかっただけだしさ?
「・・・俺達の事、怒らないのか?」
「え?なんで?」
いや、まあ、相手の言いたい事も分かるけどさ、怒る時間もったいないし。というか、大した理由も無いから怒れないし。
あー、でも、
「そうだねぇ・・・いじめはやめておいた方がいいよ?」
「分かってる。もう二度とするつもりはない」
「そっか。なら、大丈夫だね」
うん。これからもその気持ちを大事にして欲しい・・・とか思ってみる。
「・・・なあ、剣、俺達の事を本当に怒ってないのか?」
「うん。こうして生きてるしね。それに、ドラゴンに襲われたから今の俺がいる。そう考えれば、別になんともないよ」
「・・・そうか」
前も思った事だけど、あの崖から落ちて、本当に良かったよね。あれが無かったら、アルフさん達や、ディンとも出会ってなかったかもしれないしさ。
・・・あ、今思い出した。
「ねえ、三人とも朝ご飯食べてなかったよね?」
「ん?ああ、そうだが・・・それがどうかしたのか?」
「俺が作るから食べてってよ。ね?」
「い、いや、でも、お前の手を煩わせるのは・・・」
「あ、大丈夫大丈夫。料理は生きがいだから」
「そ、そうか。じゃあ、お金を・・・」
「ああ、気にしないでいいよ。ほとんど自分で獲ったのだし」
うん。今回使うのは、卵と牛乳とパンだ。パーティーで使わなかったから、余ってる。卵は、日本のより、めっさでかいし、結構入手してたから・・・。
「い、いや・・・俺達が昔、お前から盗ったお金は」
「そうだねえ・・・。別にいいよ。あんまり、お金は使わないし。ま、とりあえず部屋に入ってよ」
「あ、ああ。分かった」
俺は、自分の部屋に入る。その後ろで、三人も縮こまりつつ、部屋に入る。
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今、料理中。
作ってるのは、フレンチトースト・・・と、付け合せのサラダ。後は、牛乳も注いであげるとして。
しかし、フレンチトーストを作った人は崇拝したい。
あ、キッチンは以前、ディールさんに買ってもらったのを、魔法の袋から取り出して使ってる。
発生したゴミは、一箇所に纏めた後、俺の魔力に変換してる。
などと、考えている内に完成。早速出す。
「はい、できたよー」
「お、おう。いただきます」
一口食べた後、一気にがっつき始めた。よっぽどお腹空いてたんだなぁ・・・。
「う、美味い!こんなに美味しいものは、食った事が無い!」
「ああ、俺もだ!」
「俺も俺も!」
そんな、大袈裟な・・・。でも、美味しく食べてくれてるようで、良かった。
凄い勢いで無くなっていく、フレンチトースト。
・・・ん?
「野菜もちゃんと食べるんだよ?」
視線、逸らされた。その後、サラダにも手をつけ始める三人。
・・・食べてるので、よしとしましょうか。
三人とも食べ終わったみたい。
「ごちそうさま。凄く美味かったぜ」
「ああ。何か結構意外・・・でもないな」
「そうだな。なんていうか、外見にピッタリと当てはまるよな」
「・・・それってどういう意味?」
「い、いや、まあ気にするな。それよりも、俺達は、部屋に戻る。ありがとう、剣」
「うん。気にしないで」
「じゃ、じゃあな」
「うん、またね」
お別れを言ったら、三人は部屋を出て行った。今の時刻は・・・八時二十分か。今から準備しても、ギルドまでは余裕だな。
・・・準備完了。ギルドに行くか。
これからは、きっと仲良くやってくれるでしょう。
料理のおかげ・・・だけではないでしょう。多分。




