能力測定
「ここは第二訓練場になります。皆さんの能力の測定はここで行います。また、皆さんの訓練をするのもこの場所になりますので、他の訓練場と間違えない様にして下さい。しばらくは案内を付けさせていただくので大丈夫だとは思いますが念のために」
訓練場と呼ばれたこの場所、闘技場をそのまま大きくした感じだ。闘技場というには広すぎる。中に五百人は入れるだろう。
第二訓練場とさっき言っていたが、第五訓練場まであるそうだ。
「皆さんが訓練を行わない時間は一般の人達に訓練場を開放しています。誰でも利用できますので、護身の訓練とは別に訓練したい方は是非利用して下さい」
だそうだ。こういう世界ならできるだけ強くなっておいた方が良いだろうし、気が向いたら利用しようかな。
「それでは、皆さんの能力の測定を行いたいと思います。まずは、魔力の測定から始めます」
おお、魔力の測定!今更だが、俺でも魔法が使えるのだろうか?わくわくしてくる。
「この魔道具で魔力の測定をします。皆さんは一列に並んでください。自分の番になったらこの魔道具に触れてください」
そういって出てきたのは、水晶玉みたいなものだ。あれに触れて、光る強さで魔力の量を見るとかか?
んでだ、魔力の測定に入る訳なんだが、気付いたら俺は列の一番後ろにいた。
一番最初にやるのは、前に少しだけ話に出てきたあのイケメン君の竜崎だ。彼はあの水晶玉に触れたんだが・・・光らない。魔力が少ないとかそんな訳ないはずだ。物語ではこういう人物は必然的に能力は高くなるのだ。
そのお約束は、王女様のこの言葉により守られた。
「す、凄いです!初めからこれだけの魔力を持っているなんて流石は異世界人です!昔なら勇者と呼ばれていたかもしれません!」
流石イケメンである。きっと、武器の適正も剣か刀が物凄く高いのだろう。刀があるかは知らないが。
ちなみに王女様がどうやって魔力の量を見たのかは恐らく手に持っている機材だろう。あれにどのくらいの魔力量か文字なり数字なりが見えるのだと思う。
続いて、葵姉さん、その次は日向の番である。王女様は彼女達の魔力を測って、竜崎の時と同じような事を言っていた。浩人は魔力量は普通よりは上らしい。
そして、約三十人程が測り終わってようやく俺の番だ。俺は水晶玉に触れる。
「!!」
おお!王女様が驚いてる。もしかして、俺、物凄い魔力高いとか?
「・・・ありえません。なんていうか、その・・・言いにくいんですが、あなたは物凄く魔力が低いです」
・・・え?そ、そんな馬鹿な!逆・・・だっただと!あんな驚き方されたら魔力高いかと思うじゃないか!まさか、想像以上に低い方だとは・・・
「あの・・・どのくらい魔力が低いのでしょうか?」
俺に理解できるかは分からんがとりあえず聞く。
「ええと・・・そうですね、呼び出した私が言うのもあれですが、あなたは本当に異世界人ですか、と言われるくらいには。この世界の人族の平均魔力量を遥かに下回ってます」
・・・ま、魔力があるだけマシだ!そう考えておこう。そうだ、魔力0よりはいいさ。
「あ!だ、大丈夫ですよ。魔力量を増やす訓練をすれば凄く増えるかもしれませんし」
何!
「ほ、本当ですか!俺みたいに魔力低くても!?」
「え、ええ。魔力の最終的な量は、才能と努力次第と言われることもあります」
まだ俺に希望はあるということか。才能という単語は聞こえなかったことにする。
「そ、それでは武器の適正の測定に入りましょう」
武器の適正の測定は長いので割愛する。
結論から言えば、竜崎は刀で適正めっちゃ高い。流石勇者だってさ。というか、この世界に刀あるのな。
葵姉さんはナイフで、日向は弓矢。浩人はナックル・・・所謂格闘だ。皆、適正が高いらしい。
そして、俺だが・・・どれも、ほとんど同じぐらいの適正。しかも低い。かろうじて、剣と投擲と格闘が他より少し高かった。
またも、王女様に才能と努力次第という言葉を頂いた。
俺は泣かない。
身体能力の測定も長かったので、結論だけ言う。
竜崎は非常に高い。このメンバーの中で全ての能力が一番高い。さすゆう。葵姉さんも日向も結構高い。浩人は高い。
俺は普通。元の世界の運動能力がそれなりに水増しされた程度だった。あ、でも視力は凄く良くなってるよ。視力5.0以上は確実にあった。でも、一番じゃなかった。竜崎に上回られた。
今回は、王女様に、他の能力は、この世界の人族の平均よりも低いですが、視力『だけ』は平均よりも物凄く上ですよ!と慰められた。フォローになってるのかなってないのかは分からん。分かりたくもない。
ま、まだ才能がある。それ次第では巻き返せる・・・はずだ。
まずは竜崎。
「リュウザキさんは・・・竜人に変化して戦っているのが視えます」
竜人に・・・ねぇ。極めたらドラゴンになるんかな?めっさ強そう。
「アオイさんは・・・天使のような姿で戦っています。日向さんは妖精のようです」
才能って変化しかないのか?と思ったがそんなことはないようだ。
「ヒロトさんは体の周りを結界のようなもので覆っていますね」
うわー、結構便利だなぁ。っと、俺の番だ。
「レイヤさんは・・・えーっと・・・」
・・・え?な、何?何この反応。嫌な予感しかしないんだけど?
「レイヤさんは・・・その、普通に戦っている場面が視えます」
・・・普通に?戦っている?才能ナシってこと?んな馬鹿な。神様が何かの才能に目覚めるって言ってたじゃん。嘘ですか?神様は嘘吐きですか?
「えーと、レイヤさん。この世界の人は特殊な能力は持っていないので大丈夫ですよ」
もうフォローする気ないんじゃないかな?俺の能力は全て低いから全然大丈夫じゃない。
「これで、皆さんの能力の測定は終わりました。この後は、自分の部屋へ向かってもらいます。部屋の割り当ては、皆さんで行って下さい。案内をしますので、自分の部屋を確認したら、しばらく自由に過ごして下さい」
そういったので、俺は王女様の案内に従い、自分達の部屋の前へと向かった。