休日 その3
「ん・・・あ、もう朝か」
ただいまの時刻は五時半。起きるの早すぎるかな?
とりあえず・・・準備だけはしとこうかなぁ・・・。って言っても、準備するもん無いわ・・・
うーむ・・・。あ!釣りをしよう!一時間程度だけど・・・まあ、朝早いし、何か釣れるかな?
よし!善は急げだ!堤防に行こう!ギルドから釣り場まで、往復で数分だから、問題も無いな。
という訳で、堤防に着いた。周りには、年配の魔族さんが割といる。いつもなら、釣れますか?などと聞くのだが、今はそんな暇は無い。
なにせ、ナブラがたっているからな。
竿とリールと、ルアーを取り出す。ルアーは・・・とりあえず、ミノーでいいかな?
さっそく、ナブラの奥に投げる。そのまま巻いてみるが、ヒットはしなかった。
その後も何回か投げていると、
「きたっ!」
HIT!あれ?あんまし、引かないなぁ・・・。
取り込むまで、大体五分。釣れたのは、スズキ・・・だけど、フッコサイズだった。50cm程度だね。
むう・・・スズキと呼ばれるサイズが欲しい。フライとか、刺身とか、色々できるし・・・。
とりあえず、フッコを適当な入れものに入れて、魔法の袋に入れる。
あ、生きた物は入れられないって書いてあったが、種類によっては、容器に入れとけば生きたままでも入れれる。制限が謎である。
まあ、それはいい。もう何回か投げる・・・と、先程とは段違いの引きが。
「お!今度こそ、スズキがきたか?」
今回は、慎重に巻いたりする。切れる心配はそこまで無いが、それでも力任せにやれば逃げられるかもしれないからな。
魚と格闘する事、十五分程度。ようやく釣り上げる。結構時間掛かったな・・・。
釣れたのは、紛う事なきスズキだ。1mオーバーキタコレッ!
その後も、フッコサイズが三匹、スズキサイズ(80cm)が一匹釣れた。
後は、メタルジグに変えて、底の方を探ってたら、マゴチ(1mオーバー)とヒラメ(80cm)が一匹ずつ釣れた。
大漁ですなぁ!
何か、釣りに関しては、非常に運が良い気がする。ま、料理のバリエーションも増えるし、かまへん、かまへん。
とりあえず、魔法の袋に入れてたやつを、一匹ずつ取り出して、〆て血抜きする。あと、下処理もね。調理する時にいちいち行うのは面倒だし。
はらわたとか、内臓とかは、違う容器に入れてとっておく。撒き餌にもなるし、餌にもなるし。(アナゴとかタコとかのね)
あ、洗浄の魔法(以前使った体綺麗にする水魔法)を使っとかないとな。魚臭いし。
しっかし、時間が止まってるって、便利だよね。腐らないし。
・・・で、ただいまの時刻は、六時五十五分。急いで、ギルドに向かわねば。
まあ、転移ゲートで一発ですがね。
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ギルドに着いた。六時五十九分、ギリギリである。
クリフさんは・・・いた。受付の近くに立っている。
「レイヤさん、やっと来ましたか」
「時間までには来ましたよ。・・・一応は」
最後の部分で、さっと目を逸らす。
「そ、それよりも、何処で料理をするんですか?」
「ああ、そうですね。私達のパーティーで使ってる家があるので、そこで教えてもらいます」
つまり、この人含め、四人で住んでるのか。
「じゃあ、早速行きましょう」
俺は、クリフさん達が住んでいるという家に向かった。
―――――――――――――――――
「お邪魔しまーす」
そう言って、俺は家に入る。結構広い。
「ふう・・・しかし、朝はまだ食べてないから、お腹空いたなぁ。早速ですが、何か作りますか?」
「ええ、そうしましょう」
「あ、そういえば、アルフさん達は?」
「昨日、酒を飲んで・・・まだ寝ていますよ」
ああ、察した。何も言うまい。
「じゃ、じゃあ、早速朝食を作りましょう」
んー。何にするか。魚は・・・お昼とかでいいかな?あ、お吸い物とかいいかもな。スズキのアラを使ってな。
となると・・・白ご飯炊いて、後は・・・そうだ!う巻き卵を作ろう。ちょっと、手間が掛かるが・・・まあいいか。
「献立が決まりました。お吸い物と、う巻き卵と、白米です」
「?う巻き卵、ですか?」
「はい。美味しいですよ」
んー。こっちじゃ、開発されてない料理なのかなぁ?ま、いいや。
キッチンに行こうか。
―――――――――――――――――
料理開始。まずは、ご飯を炊く。これは、誰でもできるからいいや。そういう魔道具(炊飯ジャー的な物)もあるし。
で、お吸い物のしたごしらえ。まあ、クリフさんにやってもらうが。
魚の捌き方の指導をする。日頃から、魔物の解体をしているからか、簡単にやってのけた。
そのまま、アラを使ってのお吸い物の作り方を教える。料理経験があるようなので、特に問題は無かった。
次に、う巻き卵。これは、うなぎを捌くが、できるかなぁ?そう思っていると、驚きの発言が。
「これは・・・確か、ウナギ・・・でしたか?食べられるのですか?」
ええええええ!?
「えと、この魚、食べないんですか?」
「はい、人族はこの魚?を食べるのですか?」
・・・あれ?どうだろ・・・。地球人は食べるけど・・・そうだ!
「すみません、すぐに戻ります」
「え?」
俺は食べすぎちゃっ亭まで全力ダッシュ。そして、うなぎについて聞く。
結果。どうやら食べないらしい。信じられない!
「ゼェ、ゼェ・・・一般的には、食べないそうです」
「そ、そうですか」
これは、俺が食べ方というものを教えてあげないとな!
「まあ、それはいいです。とりあえず捌いてもらいますよ」
「は、はぁ・・・」
教える。それはもう、教えまくる。
さて、う巻き卵を作るという事は、蒲焼も作らなければいけない。
たれの作り方とか、蒸し方とか、焼き方とかも教えまくる。
クリフさん、料理上手。教えたらすぐできる。まあ、俺もだけど?
「あの魚が、こんなに美味しそうに・・・」
もの欲しそうに見てる。まあ・・・
「一口くらいなら、食べてもいいですよ?」
「そうですか?それじゃあ・・・」
と、クリフさんが口に入れる。この後の事は割愛する。簡単に言うなら、美味しいという事を必死に教えようとしていた。その姿は非常に可愛かった。とても、口には出せないが。
・・・それはいい。後は、これを卵で巻くだけだ。
お手本を見せたんだけど、クリフさんは、やっぱり料理が上手だ。一回見ただけで、同じ事ができた。まあ、俺もだけど?
・・・まあ、とりあえず、料理ができた。
「それじゃあ、料理もできましたし、あの三人を起こしてきて下さい」
「え?僕がですか?」
「ええ」
「・・・何か起こす時に注意点は?」
何か、色々と嫌な予感がするし(主にアルフさん関係)、聞いとかないとな。
「そうですね。言うとすれば、アルフさんは寝起きが悪い、ぐらいでしょうか」
ぐらい・・・ね。一番問題だろ。ていうか、やっぱあの人か。寝起きが悪いとか・・・
「ま、まあ、とりあえず行ってきます」
「はい、気をつけて下さいね?」
なぁに、心配するな、すぐ戻る。クリフ(さん)は美味いお茶でもいれて待っててくれ・・・
「あ、部屋は二階にありますから」
・・・あ、部屋は二階にあるのか。うっかり、聞き忘れる所だったな。
それじゃあ、行くぞ・・・。俺、この用事が終わったら、朝食を腹一杯食べるんだ。それでな、飲み物は苦いお茶を飲むんだ。
・・・まあ、程々にして、だ。さっさと起こしに行こう。
―――――――――――――――――
二階に上がって、一番に目が入ったのは、
[リックの部屋]
と、雑に書かれたプレートがぶら下げてある扉だった。
「リックさーん。ご飯ですよー!」
俺は部屋の前で、大声を出す。
中で、もぞもぞと動く音が聞こえる。と、リックさんが部屋から出てきた。
「んー?ああ、レイヤか・・・。もう来てたのか」
「おはようございます。ご飯、できてますよ」
「おお、そうか」
「あ、今からアルフさんを起こしに行くんですが―――」
「じゃあ、俺は先に下に行っとくぜ!」
「あ!ちょ、ちょっと!」
某金属のスライムも驚きの速さで逃げていく。何てことだ・・・。
まあ、いい。まだガイさんが・・・あれ?ガイさんの部屋の扉が開いてる?
・・・何時の間に逃げたというのか。結局、俺一人なのか・・・。
まあ、いい。
へっ、いつも皆が起こしてるんだろ?俺でも行けるはずさ。
とりあえず、[アルフの部屋]と書かれた扉(何故か修理痕が)をノックする。
「アルフさーんご飯でs―――」
バァン!
と、いきなり、扉が壊れて(破れて?)拳が出てきた。
「うわっ!危ない!」
俺は、何とかその拳を回避する。俺、反射神経が良くなったなぁ・・・と、感心するのも一瞬、部屋からアルフさんが出てくる。
そして、怒ってますよオーラを全身から醸し出して、
「何で、あんたがここにいるの?」
と、聞いてくる。俺、何かした?
「い、いえ。呼ばれただけですけど」
「あんたみたいな、嫌味ったらしいギルマスを呼ぶわけないでしょうがっ!」
そういって、襲い掛かってくる。ああ、寝起きが悪いって、こういう事なんだなぁ・・・。
俺は、もう諦めた。好きにさせてあげたらいいのではないだろうか?まあ、何しても意味無い気がするし?
悲鳴はあげるつもりは無かった・・・のだが。
「ギャアアアアー!?ちょっとっ!腕が!腕が!折れちゃいますよ!?」
「うるさいわねぇ・・・。腕じゃ無かったらいいの?」
「い、いや、そういう問題じゃ・・・あだだだだ!?頭が、頭が割れる!」
こんな感じに、腕がへし折られそうになったり、頭を握りつぶされそうになったりと、色々あった。
その頃・・・
『ギャアアアアー!?』
「ああ、やっぱりああなりましたか」
「まあ・・・予想はしていたんでしょうけど」
「あいつは、予想以上に寝起きが悪いからなぁ・・・」
などなど。下で三人が話していた。
・・・十分後。
「あれ?レイヤ、何でこんな所にいるの?」
「・・・・・・アルフさんを、起こしにきました・・・」
「ふーん・・・。で、何でそこに倒れてるの?」
「・・・アルフさんに襲われたので」
「あー、ごめんごめん。あたし、少し寝起きが悪いからねぇ」
少し・・・ね。あれで少しっていうんなら・・・なあ?
「まあ・・・いいです。朝ご飯はできていますから、下に行きましょう」
まったく・・・酷い目にあった。まあ、とりあえずは下に行くか。美味しいご飯が俺を待っている!
作者も釣りに行きたいです。
 




