休日 その2
街に戻った俺は、さっそく冒険者ギルドに向かう。
「全部で157本ですね。確認しました。それでは、報酬をお受け取りください」
俺は、報酬・・・から税金や授業料が差し引きされたものを受け取り、小銭袋に入れる。これが・・・自分で稼いだお金か・・・。なんか感動する。
ちなみに、受付は女の人だった。美人さん。名前はエリーナというらしい。しかし、流石異世界!
・・・さて、報酬も受け取ったし、ギルドから出て・・・
なんて、考えて歩いてると、ドンッと、人とぶつかる。
「おい、兄ちゃん!どこ見て歩いてんだ!」
「す、すみません!」
「ん?ハハハハハ!おい、こいつ、あのひ弱な人族じゃねえか!お前みたいなのがこんな所でどうしたんだ?」
うわぁ・・・。めんどくさ・・・。相手は柄の悪い、なんというか、チンピラって感じのやつだ。ていうか、チンピラ。後ろには、同じようなチンピラがもう二人。
「ああ、さては、依頼でも頼みに来たか?草原を歩いてたら、イモムシに襲われたので、退治してくださいってか?ウハハハハハ!」
ああー、イモムシの体液付いてるしなぁ・・・
「いえ、一応冒険者なんですけど・・・」
「ああん?お前みたいなのが冒険者だぁ?ふざけんじゃねぇ!」
いきなり顔を殴ってきた。どういうつもりだろうか?こちとら、まだ十四歳の子供だというのに、いいオッサンが。
「お前みたいな碌に魔物と戦えないようなのが冒険者やってっから、俺達まで評価が落とされるんだろうが!この、冒険者の面汚しが!」
そう言って、更に殴りかかってくる。ちょっと待て、俺だって今日魔物と戦ったばっか・・・うぐっ!?
殴りつけてきた後は、思いっきり首を絞めてくる。誰か助けてくれないか、と周りを見るが、そんな気配は無さそうだ。我関せず、といった感じだ。
それどころか、中にはへらへらとしているやつもいる。人族がそんなに駄目なのか。
受付の人は・・・オロオロしてる。
「いいか?次にその顔を俺に見せてみろ。そん時は、こんなもんじゃ済ませねえからな!この玉無しヤロウがっ!」
その後、オマケといわんばかりに、もう一発俺の顔を殴ってきた。そして、俺の持ってる小銭袋に目をつけ・・・
「お?金か?そいつは、ぶつかった侘びとして貰っとくぜ?クハハハハハ!よし!行くか!」
そう言って、三人は去っていった。「オイオイ、こんだけしかねえのかよ!流石、玉無しの人族冒険者だな!」とか聞こえてきた。
まったく・・・もう少し、人に優しくしましょうぜ?そして、俺の稼いだ金が・・・。
あ、受付さん・・・エリーナさんがこっち来る。
「すみません・・・。冒険者同士の喧嘩では、ギルドは干渉しないのです。それに、彼らも、一応はCランク冒険者なので・・・。もし、これからも酷くなるようでしたら、ギルドとしても、警告はさせていただきますが・・・」
だ、そうだ。まあ、それやられても、逆切れして報復してくるかもな。
「それと、お金は・・・申し訳ありませんが、ギルドでは用意できません・・・。もし、よろしければ、私が」
「い、いえいえ!そこまでは別に!一応、生活費はそれなりにありますし」
「そ、そうですか・・・」
流石に、それをされると、冒険者の大半を敵に回しそうな気がするぞ。という訳で、口から出任せを。本当は、もう無一文だ。
食料はちゃんとあるけどな。魚とか野菜とかスタミナポーションとか。
「そ、それでは俺は用事があるので」
「は、はい。しっかりと休んでください」
とりあえず、ギルドから出る・・・前に伝言をお願いしよう。
「あ、銀の集いっていうパーティーに良い武器屋はないかって伝えてくれませんか?」
「あ、はい。銀の集いですね・・・って、銀の集いですか!?」
「は、はい。お願いします。それでは」
俺はギルドから出る。
武器屋を聞いた理由は・・・まあ、近接武器が欲しいからだな。格闘なり、剣なり。
まずは、格闘からのつもりだけど、それだってナックルとかが無いと、ちょっと拳が死にそうだ。
まあ、武器を買うんなら、金が無いと駄目なんだが・・・。
道端でとやかく考えるのも疲れるし、寮に戻ろう。
という訳で、自分の部屋についた。魔力が、回復魔法が使えるまで回復したので、傷は治しておいた。
「あー、疲れたなぁ・・・」
本当に疲れた。九時間も働いた後に、殴られるわ、今日の給料全部ぶんどられるわ、疲れない訳が無い。
今は、まだ六時・・・か。
あ、魔力量どのくらいだろ?ちょっと、確認してみよっと。
確認した結果。めっちゃたまげた。今日は、狩りをする前は、550だったはずなんだ。
それがだよ?900まで上がってたの。驚かない訳が無いよね?一日でこれだもの。
という事は、これが続けば・・・グフグフグフ
「おい、どうしたんだ?変な笑みを浮かべて」
あ、いつの間にか、グスタフさんがいた。
「い、いえ別に。そういえば、この学校って、食堂のキッチン借りれるんですか?」
「さあ・・・借りようとしたことがあるやつなんかいないだろ」
あ、それもそうか。まあ、行ってみよう。
キッチン、借りれたよ。
「ウナギは蒸してー・・・それから、ご飯を・・・」
今日はうなぎの蒲焼にしようかなって。スタミナ料理だ。ちなみに、ご飯は以前買い込んで、魔法の袋にしまいこんでる。
「蒸した後は、タレを塗って焼くんだったな・・・」
と、まあ料理が完成した。野菜が無いのは、スタミナポーションで補っとく。
久々に食べたうなぎの蒲焼は美味かった。まさか、異世界で食べる事になるとは。
食った食った・・・。さて、まだ七時か・・・。
ちょっと、訓練所でどのくらい投擲が上達したか見てみよっと。
結果。的の真ん中にばっか当った。やばい。この上達ぶりは。たった一日でこれって。本当に、俺の訓練はなんだったのかと。
この後、気の扱いやら、魔法の練習やらをして、気付いたら八時半に。
「あー、もう一度ギルド行こうかな。もしかしたら、明日、料理を教える事になるかどうか分かるかもしれないし」
うん、そうしよう。ギルドに行こう。
ギルドに着いた。受付は、エリーナさんのとこに行く。いや、だって知り合いだし?
「あ、ツルギさん。伝言がありますよ」
お、どうやらあの人達もギルドに来てたようだ。
「えっと、何て言ってました?」
「はい。『明日は予定が無いので、料理を教わります。七時にギルドに来て下さい。それと、武器屋の場所はオススメがあるので明日教えます』だそうです」
「分かりました」
「それで、今日はどういう用件でしょうか?」
「ああ、暇だったので、伝言がないか、聞きに来ただけです。それじゃあ、おやすみなさい」
「はい。お疲れ様でした」
そうか・・・明日は教える事になるのか・・・。そうか・・・。
寮に着いたら、九時だった。明日は七時までにギルドに行かなきゃならんので、もう寝る。
今日も、すぐに眠る事ができた。




